コーヒーの淹れ方を調べてたらそこに守破離をみた件
普段何気なく淹れているコーヒー。ふと、プロはどんな風に淹れているのか気になってYoutubeで動画を探したところ、コーヒー抽出の三段の変化を目の当たりにしてしまったので記録に残しておく。
■UCC上島珈琲公式チャンネル流
守。初心者向けの基本的な方法。自分もまあこんな感じで淹れている。
1.一人あたりのコーヒー量10-12gを計量スプーンで計りドリッパーへ
2.表面をゆすって平らにする
3.少量のお湯で約20秒蒸らす
4. 一人あたり160ccのお湯を中心から円を描きながら2-3回にわけて入れる
■タリーズ流
守。より詳しく理論を交えて解説している。一般的に知られている淹れ方で一番丁寧なのがこの淹れ方だと思う。
1.まずコーヒーサーバーをお湯で温めておく
2.フィルターは互い違いに折る
(片方が薄くなり抽出にムラが出てしまうため)
3.コーヒー一杯150-200ccに対してコーヒー豆は10g
4.ドリッパーに粉を入れたら揺すって平らに
(均等に蒸らし抽出ムラをなくす。)
5.使うお湯は沸騰した100度に近いお湯ではなく90度が良い。
そのためケトルからポットに移し換える。
(お湯が熱ければ熱いほど豆の味を抽出するが旨味と同時に雑味も抽出してしまうため。90度前後が旨味を程よく抽出できる。)
6.中心から外側にかけて満遍なく少量のお湯で蒸らす。ドリッパーからお湯が少しポタポタ落ちる程度の湯量で。
(蒸らしは乾いた粉をふやかすことで豆の味を抽出しやすくする。)
7.お湯入れ。中心に少量ずつ、お湯が落ちきらないように足していく。
最初はごく少量を点で入れ、徐々に量を増やし500円玉大程度の面積を使って入れていく。
(周りにお湯を注がず土手をつくる。外側に逃げたお湯がフィルターを伝ってドリップされる際、土手がないと水っぽい味になってしまうため。)
8.お湯を入れきる前に切り上げる。ドリップしている際の豆上層の泡は雑味、渋み、エグ味を含んでおり、それが落ちてしまうのを避けるため。
9.最後にサーバーをかき混ぜて味を均等にしてからカップに注ぐ。
■世界一美味しいコーヒーの淹れ方
ワールド・バリスタ・チャンピオン井崎英典流
破。これでもかってくらい壁際の豆落としにかかってるし、お湯も最後まで落としきる。旨味と雑味、淹れる豆の清濁併せ飲むスタイル。
自分はここで衝撃を受けた。これまでタリーズ流がスタンダードだと思っており、それとまるで反対の淹れ方をしていたからだ。
0.まず、世界一美味しいコーヒーを淹れるポイント6つ
1.豆の重さ 2.お湯の重さ 3.抽出時間 4.温度 5.蒸らし 6.注ぎ方
1. お湯100gに対してコーヒー豆は6-8gを使用する。
(6gが標準、8gは濃いめ)
2. 計量スプーンでコーヒー豆の重さを計る。
(計量スプーンは体積を量るため、焙煎度合いで重さの異なるコーヒー豆の重さを計るには適しておらず、ちゃんと計りを使用する)
3. ペーパーフィルターをドリッパーにセットした後、お湯を満遍なくかけて温める。
4. コーヒー粉を入れて、ドリッパーの根元を持ち揺すって平らにならす。
5. 3投に分けてお湯を注ぐ。20%(蒸らし):20%:60%
6. 蒸らしは中心から円を描きながら壁まで注いで1分蒸らす。その時軽く揺すってあげるとお湯と粉が均等に馴染んで良い。
7. 2投目も中心から壁に向けて1分かけてお湯を注ぐ。
(壁際のコーヒーも使用する理由として、湯と豆の比を正確にするため、濃度感のあるコーヒーを淹れるため)
8. 残りのお湯を先ほどの2回より早めに注いで淹れる。この時も壁際の豆を中に流しいれるようにする。さらに抽出している間にドリッパーを湯することで均一になるように。
9. お湯は最後まで落としきる。理由は豆とお湯の比を保つため。
■2015年ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ優勝 高橋バリスタ流
離。蒸らしにルールなど無いと。淹れる温度より飲む温度だと。豆によって落としきりかどうか考えると。
コーヒーの淹れ方に絶対など無いことをこの動画で痛感する。
何より高橋バリスタが強い。前二人のバリスタを気で蹂躙できる覇気の強さを感じる。彼女が優勝した理由はもしかしたらそこなのかもしれない。
理論がどうこうでなく、自分のやり方で試行錯誤を重ね、一番美味しいと思ってもらえる淹れ方だと、自信を持ってコーヒーを提供できるのが真のバリスタなのだろう。
0. 使用する湯の温度はコーヒーを飲む際の温度を想定した温度に。
(何度で落とすかよりも、何度のコーヒーを飲むかの方が味に影響する)
1. 蒸らしにルール無し。均等にお湯を注ぎ、豆の膨らみがしぼみに転換するところで次の抽出を行う。
(蒸らしの目的はコーヒー豆から出る炭酸ガスが抽出の際の味ムラを作ってしまうのを防ぐためなので)
2. お湯は一定の湯量を中心に注ぎ続ける。
(抽出の際の温度を一定に保つため。また、壁までは注がない。)
3. お湯は落としきらずに出来上がり。
(使用する豆の特性を考えて、雑味をなくしたかったからと。)
■おわりに
最後にこの動画を見ていただきたい。
ハンドドリップでは無いのだが、本人の手さばきや表情、語り口調やセリフの全てが、その一杯のコーヒーを口にするまでのスパイスになっている、、と感じた。
ただ漠然と飲むだけでは感じることのできないナッツやフルーツのフレーバーを、事前に言葉にすることで探しやすくする。そうしてコーヒーの旨味や深みを感じ、味わう楽しみを提供することができる。
こうなってくるともはや芸術である。
その人の持つ人間性を抽出して一杯のコーヒーを生み出すという芸術こそ、バリスタという仕事なのかもしれない。