014 話す② 確認
前回は、ミスコミュニケーションがどのようにして起こるのかを詳しく見ましたので、今回はその対策「確認」についてご紹介します。
復唱が役立たないとき
新社会人として就職した際、「電話を取ったり、指示を受けたときには必ず復唱しなさい」と教わった方がいらっしゃるかもしれません。勿論それは正しい教えですし、社会人1年生には必要な学びなのですが、ここでは敢えてそれに異を唱えてみたいと思います。というのも、復唱が役立たない場面の方がむしろ多いからです(復唱を頼りにすることはあっても、すがらない方が賢明と言えるでしょう)。
前回の例でいうと「明日の昼一までに頼む」という言葉に対して「明日の昼一ですね」と復唱したところで、確認したことにはなりません(少なくとも “昼一が意味する時刻” を確認できていません)。
ではどのように確認すれば、意味ある確認になるのでしょうか?
「言っていること」より「言わんとしていること」
それにはまず(第8回「聴く② 何を聴くか?」でお伝えした通り)相手の話をしっかりと聴くことが必要です。そして相手の「言っていること」に留まらず「言わんとしていること」まで聴こう、と意識します。そうすれば 相手の “言葉” それ自体よりも相手の “考え” や “気持ち” に注意を向けられるようになり、相手の「考え」、相手の「言わんとしていること」を確認できるようになります。
復唱とは、相手が「言っていること」を繰り返すこと、相手が「その言葉を口にしたか」だけを確認すること。一方、確認とは、相手の “考え” 、つまり相手の「言わんとしていること」を言い当てること を意味します。
ですので「明日の昼一までに頼む」と言われた時には、少なくとも「明日の昼一」という言葉の背景にある相手の “考え” がいったい何なのか(今回の例でいうと時刻)を確認することが必要でしょう。
※ 一言でいうなら「シニフィアンよりシニフィエを確認する」でしょうか?
確認以外にできること
さらに、事前にできることもあります。それは「相手と体験を共にする」こと、つまり多くの時間を共に過ごし、確認せずとも阿吽の呼吸で “わかる” ようにすることです。これは、昔の言葉でいうと “ツーカーの仲” になることを意味します。相手が「ツー」と言ったとき、こちらが「カー」と返すのが正解か、はたまた「スリー」と返すのが正解かは状況によります。それを察するには、少なくとも相手と長い時間を共に過ごす必要があるでしょう。
また、確認が必要になった時点で「相手の真意を考察する」こともできます。これは、論理的にどんな可能性があるかを考え、相手にとっての最適解を “察する” ことを意味します(可能性を広く考え、深く掘り下げ、最適解を探ります)。
ここまでをまとめると、次のようになります。
相手に「昼一というのは具体的には何時ですか?」と尋ねるより、「この人の昼一は12時だ」と察したり「この状況なら12時でよいかを確認した方が安全側だ」と考えた上、「では遅くとも12時までにお送りすれば宜しいですか?」などと確認する。
念のため、これを前回の図で表現すると、次のようになります。
私たちが行う日々のコミュニケーションでは、確認が欠かせません。冒頭でお伝えしたり復唱にすがらず、相手が「言わんとしていること」をしっかり聴き取り、さらに念のため確認をする。これができるようになると、気持ちに余裕が生まれ、円滑にコミュニケーションできるようになることでしょう。
[参考]これまで&これからの記事
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