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『しきぶとんんさん かけぶとんさん まくらさん』

無人島に1冊だけ持って行くマンガを選べと言われたら。
高野文子の『るきさん』(ちくま文庫)を選ぶと思います。

他にも大切に思うマンガはたくさんありますが、1冊でこれだけ完成度が高くて、何度読んでも軽やかなストーリーに、美しいペンの線に、さりげなくも冒険的な表現に、これほど心が沸き立つ作品はなかなか無いと思う。
文庫で薄いから椰子の木陰で風に吹かれて読むのにぴったり・・・って、私はこういう質問によくある「無人島」のことを「のんびりした良いところ」と思っているんだな。食料調達とかどうするつもりなのか。甘いな。

『るきさん』は、魅力的な主人公のるきさんと、親友のエッちゃんの日常的な話が主ですが(バブル期の、雑誌Hanakoの連載だそうです)、高野文子の他の作品は作品ごとに絵柄も表現も全く違い、それぞれがそれぞれにハッとする良さを持っている。
どの作品も考え抜かれた絵の表現や、台詞のリズムにしびれます。

そんな高野文子の絵本がある。
どちらかというと、渋めの絵本なのですが、大人が読んでも面白いし、子供にもたいそうウケる良い絵本でした。

『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』(高野文子)

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眠る前の子供(男の子)が敷き布団、掛け布団、枕にそれぞれお願いをしていきます。

「しきぶとんさん しきぶとんさん
 あさまで ひとつ おたのみします」
「どうぞ わたしの おしっこが
 よなかに でたがりませんように」
「まかせろ まかせろ おれにまかせろ」
「もしも おまえの おしっこが
 よなかに さわぎそうに なったらば」
「まてまてまてよ あさまで まてよと
 おれがなだめて おいてやる」

台詞回しのさすがのリズム、選ばれた単語のこの上ない感じ。
絵の方も愛らしく愛らしすぎず、デフォルメの表現が秀逸で、見惚れつつ唸る。
余計なこと考えず、ただ楽しめる絵本なのですが、余計なことを考えながら見ても、さすがだ!と作者への尊敬がわき上がる感じ。

誰かを膝に乗せて、声を出して読む。
リズミカルな台詞を口にするのが楽しい。
膝の上の人が笑って、その振動が自分にも感じられるのも楽しい一冊です。
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出版社: 福音館書店 (2014/2/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4834080498
ISBN-13: 978-4834080490
発売日: 2014/2/10

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