Tomonari Yashiro

サステナビリティとイノベーションのことを考え続けている研究者。バックグラウンドは建築。

Tomonari Yashiro

サステナビリティとイノベーションのことを考え続けている研究者。バックグラウンドは建築。

最近の記事

Wicked problemとしてみた感染防止と経済振興の対立問題

冒頭注:本稿はPolitical Science、医学、経済学の素人が書いた門外漢の備忘録です。 COVID19の蔓延に関する様々な事象や発言の報道に接し、いささか頭が混乱し、当惑しています。それは、様々なことがらが絡んでいて、どのことがらに注目するかで、まるっきり異なる見解が出てくるからです。このような問題は、Wicked Problemの典型ではないかと考えるようになりました。Wicked Problemとは、 - 要求条件が不完全で、しじゅう変動し、矛盾を内包し、し

    • パンデミックと郊外住宅地

      COVID-19の蔓延とその長期化は、人々がどこに住み、どこで働き、どこで集い、どこでそれぞれの人生を謳歌するのかという、人々の活動と場所との関係を大きく変化させていく可能性があります。このことは、人文地理学、経済地理学にとって重要な主題になっていくはずですが、筆者のような建築・まちの専門家にとっても看過できない問いです。 この観点から、これから考察を進めていきたいと思いますが、まず、大都市の郊外住宅地のことを考えたいと思います。 近年、東京の大都市では若年層を中心に、都心

      • 新コロナ・ウイルス禍が問う、建築・都市の新課題

        「With コロナ」の言葉に象徴されるように、私たちは当分の間、新型コロナ・ウィルスとともに生きていくことになります。 私たちの住まい方、働き方の変化は、私たちがこれまで前提にしてきた建築・都市にかかわるパラダイムを変えていくことになります。いま、日本建築学会は、関連学協会と協力して、パラダイム・シフトに向けた新たな取組を開始しています。また、地球各所でも様々な議論が行われており、例えば、Nils Larsson さんは、最近、大変興味深い論文をまとめました。 既に多くの方

        • 建築・都市からみたCyber-Physical Systemのアーキテクチャver.0

          私は、建築・都市という、物理的世界(Physical System)に主軸をおいた世界が専門領域です。 サステナブル建築への取組が契機になって、今世紀初め頃から、いまでいうところのIoTや、BIMなどに手を染め始め、拡がりつつあるサイバー世界が、建築・都市や、そこで生活する人々を幸せにしていく可能性をもっていることを実感しています。 最近になり、digital city、smart cityという言葉が溢れていますが、コテコテの物理的世界出身の私としては、Cyber-Phys

        Wicked problemとしてみた感染防止と経済振興の対立問題

          サステナブル建築とCyber Physical Systemとの関係

          私が、藤本隆宏先生、安藤正雄先生と一緒に書かせていただいた本で、「ものづくり」を次のように定義しました。 「ものづくり」とは、作り手の意図である「設計情報」を「もの(媒体)」に転写し、あるいはつくり込み、顧客に伝達する行為の総体である。設計とは人工物の機能と構造の関係を事前に整合を図る決める行為である。 この定義を建築の新築にあてはめて、図に描くと次のようになります。 図1 設計情報の人工物(建築)への転写 さて、日本の建築界では21世紀に入ってから「フローからストッ

          サステナブル建築とCyber Physical Systemとの関係

          人々に富が行き渡るCyber-physical世界のための四つの原則

          一つの見方ではあると思いますが、確かにサイバー(Cyber)世界のなかで完結している事業は今般の新コロナウィルス禍への耐性が高いと考えられます。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59933220T00C20A6MM8000/) 逆に、観光や飲食のように人と人が接するサービスは勿論のこと、モノを作る仕事や売る仕事、モノ・人を運ぶ仕事、施設・設備を含め人がモノを扱うなどは、人と人とが物理的プロセスに接するプロセスがどこかに絡んでいるため、

          人々に富が行き渡るCyber-physical世界のための四つの原則

          はじめに

          ここでは、建築・都市という、物理世界に主軸をおいた者が、サステナビリティやイノベーションについて考えたことを書き留めていきます。