8代目VWゴルフ考察

8代目ゴルフは既に欧州で発売されている。

日本は今年の終わりに導入だろうか。

まだ日本仕様詳細情報はないが、今の情報だけで考察してみた。

1.ボディサイズについて

歴代ゴルフのボディサイズはなかなか興味深い。
それぞれの時代を反映してるとも言えるが、VW自身にも迷いが見えたりする。ここ20年を振り返る。

ゴルフ8 ゴルフ7 ゴルフ6 ゴルフ5 ゴルフ4
・全長:4284mm 4265mm 4210mm 4205mm 4155mm
・全幅:1789mm 1800mm 1790mm 1760mm 1735mm
・全高:1456mm 1460mm 1485mm 1520mm 1455mm
・ホイールベース:2636mm 2635mm 2575mm 2575mm 2515mm
※ゴルフ8の数値は欧州仕様。全高はアンテナを除く。

ゴルフ8日本仕様のサイズはまだ公開されてないが、日本では全て5mm刻みで表示される事を考えると、全長は20mm程度拡大、対して全幅は10mmほど縮小、他は変わらずと言ったところ。

注目したいのは全高。

実は初代から3代目まで、高速性能重視で空気抵抗を減らす為、全高は1.4mあたりで決して高くなかった。

ゴルフは歴代全高を高くし、乗員をアップライトに立てて座らせる優等生パッケージと言われているが、実は初代から少々妥協しているのだ。

そして4代目も少し高くしたが、主にシートを上質にしたりなどで室内を広くはしていない。

ところがゴルフ5で一気に上げて室内高を高く取り、アップライトに座るパッケージに変えた。

ピエヒの為のゴルフと名高い失敗作ゴルフ4で欧州ベストセラーの座を初代フォードフォーカスに持っていかれた事が大きい。なのでここで再構築と言うわけだ。

そして数値上ではゴルフ6で少し下げられたが、ルーフ形状を細かく詰めただけの様でパッケージはゴルフ5とさほど変わらない印象であった。

しかしMQBとなったゴルフ7では明確に全高を下げた。
こちらはパッケージを見直して着座位置を低くしている。昨今の燃費計測では高速燃費が無視できなくなった事もあるだろう。

そしてその全高はゴルフ8でもほぼ同様である。

ゴルフ8はパッと見ゴルフ7とほとんど変わらない外見だが、全幅は初めて縮小した。
ポロが大型化された事もあり、数値の上では全幅はかなり近付いてる。

ゴルフは日本のヒョーロンカの中で完全に踏み絵でまずケナす様な事を言う奴はいない。
しかし、完全無欠なわけはないのだ。


ゴルフ8とゴルフ7を比べると、前輪から後部に掛けてはほとんど同じ形状だ。
前輪と後輪の間隔も同じ。
MQBは前輪とドライバーのペダル位置関係を共通化する思想なので、室内長も変わらないだろう。

延長したのは前輪より前、鼻先のみと思われる。
たかだか20mmなので主に意匠の違いの様に見えるが、高速時の空力特性改善効果があるかも知れない。前輪より前が長いと空力特性は良くなる。

また、全幅を狭めたのも前面投影面積を減らして空気抵抗を減少させたいと言う意図ではないかと思う。(とは言え10mmなので、左右5mmずつ。ドアハンドル形状で変わるレベルの縮小だが)
VW日本は日本からの要望が受け入れられたとか抜かすのだろが、そうではない。

なぜなら、エンジンがショボいのだ。

ゴルフ8普通モデル搭載のエンジンバリエーションは以下。カッコ内はゴルフ7。

ガソリン
ガソリンの通常モデルは新世代EA211エンジン。
ゴルフ7でも最終モデルに1.5L版が先行搭載されているが、以下は登場時のスペックとした。

1L 直3 TSI 90ps (1.2L 直4TSI 低出力版86ps)
1L 直3 eTSI 110ps (1.2L 直4TSI 高出力版105ps)
1.5L 直4 eTSI 低出力版130ps
1.5L 直4 eTSI 高出力版150ps (1.4L 直4TSI 140ps)
※TSI : ターボ搭載
eTSI : ターボ+48Vマイルドハイブリッド

ガソリン直列4気筒プラグインハイブリッド(同)
1.4L 201ps (GTE 203ps)

ディーゼル直列4気筒(同)
2L 低出力版115ps (1.6L 105ps)
2L 高出力版150ps (同)
※8代目GTIおよびGTEを除く普通のモデルの出力

ゴルフとなると途端に「カタログ以上の性能」などとホザくヒョーロンカが多いが、そんな事はない。1Lや1.2Lモデルの高速性能は明確にショボい。
増して、最近は排ガス規制や燃料消費にうるさい。現実的に相当パワーを絞ってる。

1L eTSI 高出力110ps仕様で最高速度は212km/hらしい。ゴルフ7の1.2L TSI 105ps仕様が193km/hという事を考えると、相当頑張ってる。
ターボアリと言っても1Lだ。マイルドハイブリッドは高速じゃぁほとんど寄与しない。軽量化されたとは言えこのボディで最高速度を伸ばすのは大変だ。

駆動系や空気走行抵抗を相当詰めてるのだろう。


2.内装について

インパネは最近の流行で、ゴルフ7後期型から採用された液晶パネルによるメータークラスター。

更にセンターコンソールも液晶が配置され、操作系のほとんどはこの液晶タッチパネルに集約される。エアコン温度調整も。
そして、タッチ時に振動などで指先に伝える様なギミックはない模様。

とうとうゴルフもブラインドタッチ不可、運転中の操作感極悪なタッチパネルになった。音声操作可能なので、運転中はそっちでという事か。

誰が恥ずかしくて「ハローフォルクスワーゲン」なんて言うものか。そもそも呼びかけ文が長い。この辺りのセンスの無さがいかにもドイツだ。

そしてエアコン吹き出し口はコレら表示パネルのおかげで下に追いやられた。この位置ではどうやっても乗員に風直撃だ。

CX-30(マツダ3も同じ)で助手席の吹き出し口が低いと苦言を呈したが、ゴルフ8は運転席までも吹き出し口が低い。最悪だ。

真夏に高温の車内温度を下げる為エアコンをつけ、しかし車内ではなく身体に冷風を浴びせられると不快なだけでなく疲労感が出る。

コレと引き換えの液晶パネルか。
ならば私は液晶パネルなんていらないから吹き出し口を適切な位置にして欲しい。

このレイアウトを考えた人はクルマを運転した事がないのだろうか。
エアコン使った事ないのだろうか。

どうもコクピット操作メソッドを丁寧に詰めた様には見えず、デザイン優先に見える。

そして、恐らく今後登場するMQBプラットフォームのクルマは全車こうなるのだろう。

暗澹たる気持ちになる。

ひとまずインパネ写真からダッシュボード上面にエアコン吹き出し口らしきモノがうっすら見えるので、ソコが室内温度調整用にキチンと機能する事を願ってる。

シフトレバーもポルシェ911でお馴染みの小さい電子レバーとなった。個人的にはこんなもの猛烈にどうでもいいが。

敢えてコメントするなら、電子レバーはそのレバー角度や位置で、現在のポジションを知る事ができない。不出来なマンマシンインターフェースだ。好事家向けポルシェ911ならお好きにどうぞだが、国民車VWには適したものではない。

内装の質感は高いらしい。
この辺りは実物を見てみないとなんともだが、少なくとも外す事はないだろう。

3.サスペンション

前述したようにプラットフォームは先代ゴルフ7と同様のMQB。

当然サスペンションもキャリーオーバーで、フロントストラット式、リアについては高出力車向け(1.5Lガソリン以上、ディーゼル)はダブルウィッシュボーン式、低出力車(1L)向けはトーションビーム式となる。

ゴルフ7のガソリン1.4L以上はダブルウィッシュボーン、ガソリン1.2Lはトーションビームだったので、同様と思って良い。

日本仕様は不明だが、可変ショックアブソーバーのDCCがオプションで選べる。コレは先代ゴルフ7でもオプション設定されていたもの。ただ、従来は車速や横Gなどにより自動でカタクしたり柔らかくしたりだけだった。

ゴルフ8は各車輪毎に制御する模様。つまりコーナリング中は外側をカタクしロール制御するだけてなく、積極的に曲げる、曲げないというところまでやれるようになったようだ。

以前から使われている各輪ブレーキ制御による仮想LSD機能は今回も引き継ぐだろうから、この2つの組合せでダイナミックなヨー制御を実現している模様。

4.変速機

説明が遅れたが変速機もキャリーオーバーだ。

通常モデルの自動変速機DSGは3種類、乾式7速(ガソリン1L、1.5L)、湿式は6速(プラグインハイブリッド)と7速(ディーゼル)。
乾式は許容トルクが250Nmまでなので、高出力モデルは全て湿式なのだろう。

元々DSGは重く、湿式はこのクラス最重量級なのも同様だろう。要はハナが重い。

ゴルフ7でMQBになって全てのエンジンを後傾させて搭載(ゴルフ6はディーゼル後傾、ガソリン前傾だった)し、やや重量配分が適正化されているが、変速機の重さでチャラになっているのも同様。なもんで今回電制サスで曲げる特性にしたいのは理解できる。

5.ゴルフ8とは

ゴルフ8はどんなクルマか。
ゴルフ7のビッグマイナーチェンジ版と言えるだろう。

大きな変更点は、マイルドハイブリッドを搭載した事。
あとはインパネが今時の液晶タッチパネル主体に変わった位だろう。


当方散々ゴルフ贔屓な日本のヒョーロンカをけなしているが、実はゴルフ大好き人間なのである。

実家は初代からゴルフを乗り継ぎ、徳大寺先生の書物による子供時代の刷り込みにより、元来ゴルフ贔屓な私なのである。

そんな私の目にも、ゴルフ8は今のところさして魅力的には映らない。

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