二本立て公演_チラシ表

Nice to meet you, My old friend 上演台本

◆登場人物

玲奈  タレント

陽子 

坂本  マネージャー

泉   教師

木之内 ディレクター


   中学の美術室。

   玲奈が入ってくる。

   玲奈、懐かしいような、その気持ちを押しとどめるような表情で室内を眺め、壁に貼ってあるマグリットのポストカードに目をとめる。

玲奈 ……

   しばらくして、陽子が入ってくる。

陽子 ……玲奈

玲奈 ……陽子?

陽子 久しぶり

玲奈 え……何、なんで……聴いてないんですけど

陽子 言ってないもん

玲奈 え、どうやって調べたの……超久しぶり

陽子 ね。ご活躍で

玲奈 え、陽子は?今もこっちに住んでるの?

陽子 そうだよ

玲奈 嘘、ヤバい、ちょっと泣きそうかも

陽子 なんか近くで見たら変わらないね

玲奈 嘘、変わったよ。陽子こそ、変わらない

陽子 いえいえ、私なんてもう、主婦ですから

玲奈 え、結婚したの

陽子 うん

玲奈 そっか……え、何年ぶり?

陽子 玲奈が転校して以来?

玲奈 だよね、じゃあもう、15年?

陽子 そんなに……経ったか、経ったね。お帰りなさい

玲奈 ただいま……え、ゲストって陽子のこと?

陽子 そうです

玲奈 嘘……では、今日は、母校を訪れたということで、ゲストの方とお話をすることになっているのですが……

陽子 はい

   陽子、手紙を取り出す。

玲奈 え、何?

陽子 今日は、玲奈が転校する前にくれた手紙を、持ってきました

玲奈 え……?

陽子 (読む)陽子へ

   間。

玲奈 はい、ありがとうございます

   玲奈、止める。

   坂本も入ってくる。

坂本 お疲れ様ですー

陽子 ありがとうございます

坂本 玲奈さん、「嘘嘘」言い過ぎて子供っぽいですよ。あと口、ポカンて開きすぎ

玲奈 うっさい。(陽子に)とりあえず……手紙を取り出す前に、もう少しやりとりしようかなって

陽子 はい、やりとり

   陽子はメモを取り出して確認する。

玲奈 思い出話を。授業はサボってばっかり的な

陽子 なるほど。あの、いくつか確認してもいいですか

玲奈 はい

陽子 どうして美術室なんですか?

玲奈 それは……(坂本に)なんで?

坂本 教室は許可おりなかったって

玲奈 あっそ。たしかに、よく美術室にはいたんだよね

坂本 そうなんですか?

玲奈 授業サボって

陽子 本当にサボってたんですね。じゃあ私も、一緒にサボってたってことですか?

玲奈 そうしましょう

坂本 サボって何してたんですか?お酒と煙草?

玲奈 学校では飲まないし。別に何も

陽子 玲奈さんはヤンキーだったんですか?

玲奈 ヤンキーではないです

坂本 ヤンキーは美術室にはたまらないですもんね

陽子 陽子も、ヤンキーではない?

玲奈 うん

陽子 クラスは同じでいいですか?

玲奈 いや、隣のクラス

陽子 はい。じゃあ、よく授業を抜け出して、一緒に美術室で遊んでた?

玲奈 うん、そうね、それがいいです

坂本 いいですね、漫画みたい

陽子 玲奈さんが転校したのは?

玲奈 二年の終わり

陽子 わかりました

玲奈 で、思い出話……坂本ちゃん、なんか無い?

坂本 え?

玲奈 あんた、中学楽しかった組でしょ?

坂本 はい、中学も高校も超楽しかったです

玲奈 じゃあ、昔の友達と会った時にする、思い出話

坂本 ああ、今でもしょっちゅう会うからな、逆に何だろう

玲奈 学校生活の、楽しい思い出

坂本 とりあえず、一番テンションあがったのは、誕生日ですね

玲奈 は?

坂本 誰かの誕生日は一日の時間割のどこかで、サプライズを仕掛けるんですよ、先生にも協力して貰って。私の時は、音楽の時間に、急に皆がフラッシュモブみたいの始めて。感動しましたね

玲奈 ……ごめん、それキラキラし過ぎてて使えない。何あんたの学校、パラダイス?

坂本 すいません

玲奈 いいや、部活にしよう。一緒の部活だったことにして

陽子 はい

玲奈 私は、授業中は流川ばりに寝てて、放課後に目覚める、みたいな

陽子 部活は何にします?

玲奈 え、何がいいんだろ

坂本 玲奈さん、実際は何部だったんですか?

玲奈 は?帰宅部に決まってるし

坂本 あそっか

陽子 美術部、ではないんですか?

玲奈 美術部は無かった、はず

陽子 そうですか

玲奈 えっと……なんて呼べばいいですかね?

陽子 あもう、陽子、で。その方が入りやすいので

玲奈 わかりました、陽子は?部活やってました?

陽子 私……陽子ではない、私、ですか?

玲奈 はい

陽子 私は、吹奏楽ですね

玲奈 吹奏楽かあ、いいけど、楽器のディティールとか全然わかんないしな。いっか、バスケで

陽子 バスケ部。わかりました。ポジションは?

玲奈 私は、流川

陽子 フォワードですね、じゃあ私は……ガードで

玲奈 リョータ?

陽子 あいえ、できれば、三井が好きなので、シューティングガードでもいいですか?

玲奈 いいよ、スリーポイント打ってたんだ

陽子 そうですね

玲奈 そう言われるとなんか、シュートうまそう

陽子 ありがとうございます

玲奈 じゃあ、授業は寝るかここでサボるかしてて、放課後になると、二人で体育館一番乗り、ってことにして

陽子 なるほど

   坂本が口を挟む。

坂本 部活は、さすがにばれませんか?

玲奈 は?

坂本 バスケ部は、あったんですよね?

玲奈 あったね。それこそ、ヤンキーが集結してた

坂本 でも、玲奈さんは入ってなかったわけですよね?

玲奈 うん

坂本 じゃあテレビ見た元バスケ部の人は、嘘だってわかりますよね?

玲奈 誰も見ないでしょ

坂本 見るかもしれないじゃないですか

玲奈 ……わかったよ、部活はやめるよ

坂本 てか、それを言ったら……玲奈さんと同学年の人が見たら、(陽子を見て)こんな人いた?ってなりますね

玲奈 別に、良くない?

坂本 え?

玲奈 坂本ちゃん、中学、何クラスあった?

坂本 うちは、6クラスですね

玲奈 同学年の顔、全員覚えてる?

坂本 全員……は覚えてないですけど

玲奈 じゃあ突然、見覚えのない子が、「久しぶり、中学一緒だったんだよ」って言ってきたら、どうする?

坂本 それは……「ああ、久しぶりー」ってなりますよ

玲奈 ほら。それと同じことじゃん

坂本 えー……いや!でも、卒アルで確認します!そしたらバレますよ

玲奈 卒アル?って卒業アルバム?

坂本 はい

玲奈 変な略し方しないでよ。てかそれ、今更すぎじゃない?

坂本 はい……(陽子に)すいません

陽子 いえ。どうしましょう?

玲奈 ……陽子も、途中で転校したことにすれば?そしたらアルバムには載らないでしょ?

坂本 ……たしかに!

玲奈 よし、じゃあそれで

   陽子、改めて確認。

陽子 わかりました。私は、いつ転校したことにしますか?

玲奈 うーん、二年の終わり。同じタイミング

陽子 玲奈さんの転校の理由は、芸能界入りですか?

玲奈 ううん。もともと転勤族で、神奈川に行くことになって。その方が仕事の時、東京に通いやすいってのもあったけど

陽子 なるほど。あと……陽子っていう子は、実際にはいたんですか?

玲奈 いえ、いません

陽子 じゃあ、陽子っていう名前は?

玲奈 なんとなく。学年に一人はいそうでしょ。陽子

坂本 適当ー

陽子 じゃあ、陽子のモデルは、いるんですか?

玲奈 いないな

陽子 そうですか……

坂本 一緒にサボってた子、いないんですか?

玲奈 いないよ。たまに、他の子もいたけど、会話は無かったし

坂本 他の子?

玲奈 なんか、美術の先生が、コミュ障の子たちに優しくて。不登校気味の子がたまってたの

陽子 でも、喋ってはない?

玲奈 全然。顔も覚えてない。あーでも、一人、なんか凄いデブの子がいた気はする

陽子 わかりました。サボって、絵を描いてたんですか?

玲奈 ……たまにね

坂本 玲奈さん、イラスト超うまいですもんね

陽子 じゃあ……二人でよく、漫画を描いてた、って言うのはどうですか?

坂本 お、いいですね

陽子 キャラクター的には、私もコミュ障?

玲奈 うーん、いや、普通でいいです。しっかりしてるから、そのままの感じで

陽子 わかりました。クラスが違うなら、最初はどうやって仲良くなったんですかね?

玲奈 最初か……

陽子 体育の授業がクラス合同とか?

坂本 なるほど

陽子 あとは、イベントの時。文化祭とか、体育祭とか

玲奈 それ、いいかも

陽子 じゃあ……体育祭の時に、私がサボってここからグラウンドを見てて

玲奈 私もサボりに来て、話しかける

陽子 はい、わかりました

坂本 物語が積み上げられていく

玲奈 ……てか、本当にそんなことあった気がする。ここから、ボーっと、自分のクラスの試合見てた

坂本 おお、ある意味、本当にあった話じゃないですか

玲奈 誰とも喋ってないけどね

陽子 競技は?サッカーとか?

玲奈 サッカー……サッカーかも。女子が脇ではしゃいでた

陽子 サッカー、了解です

坂本 なんかいい感じですね

   玲奈、最初から確認する。

玲奈 オッケー、じゃあ、入ってくる、私「聴いてないんですけど」、よくここで遊んでた、「え、そもそも最初はなんで話したんだっけ」で一盛り上がり、からの手紙、っていう流れで

陽子 わかりました。ありがとうございます

   陽子、メモを整理をする。

坂本 (時間を確認して)恐らく、そろそろ

玲奈 わかった

坂本 (陽子に)でも、凄いですね

陽子 え?

坂本 さっきの打合せだけで、ちゃんと同級生の雰囲気になってて

陽子 ありがとうございます……仕事ですから

坂本 でも普通は、結婚式とかですよね?

陽子 まあ、そうですね

坂本 こんな一対一って無いですよね?

陽子 ああでも、例えば、離れて暮らしてる家族と会う時の、友達役で付き添ったりはありますよ?

坂本 え、そうなんですか?

陽子 はい。孤独な生活を送ってないよ、っていうアピールの為とか

坂本 なるほど……他のお客さんといる時に、他のお客さんとバッタリ、みたいなことは無いんですか?

陽子 それは、今のところ無いですね

坂本 でも……今回はテレビに出て大丈夫なんですか?

玲奈 だから誰も見ないよ

陽子 大丈夫です。私、これと言って特徴の無い顔ですから

坂本 え、そうですかね……

陽子 それに、髪型とか眼鏡とか化粧で全然印象変わるんです。だから大丈夫ですよ

坂本 そうですか……仕事の後に、本当に友達になることはあるんですか?

陽子 それは無いですね。禁止されてるし

坂本 そうなんだ……

   陽子、改まって、

陽子 あの、一応

玲奈 はい

陽子 私で、大丈夫ですか?

玲奈 え?

陽子 この時間までなら、チェンジは可能ですけど

坂本 チェンジ?

陽子 はい

玲奈 ……え、でも今から誰かに代わっても、ねえ?

坂本 そうですね、もう始まるし

玲奈 それに、大丈夫ですよ……陽子さんで

陽子 ありがとうございます

坂本 是非、よろしくお願いします!

陽子 はい……では会社に連絡、入れておきますね

坂本 はい、よろしくお願いします

   陽子、出て行く。

坂本 ……何とかなりそうですね。頼んでみるもんですねえ

玲奈 こんな仕事までやらされて、大変だね

坂本 いいえ

玲奈 まさか私の担当になるとは思ってなかったでしょ

坂本 いえ、玲奈さんとご一緒できて、嬉しいです

玲奈 知らなかったでしょ?私のこと

坂本 まさか。知ってますよ。「サクラデイズ」見てました、高校の時

玲奈 見てたって、私が出たの、一話だけじゃん

坂本 そうですけど。印象的でしたよー。それに、あの仕事がご縁で、今、「さよなら天国」にも出てるんですよね?

玲奈 あんなの、出てる内に入らないよ

坂本 そんなことないですよ。評判いいですよ

玲奈 嘘。いい評判なんか一つも聞こえてこないんですけど

坂本 でも……本当に(今日)大丈夫かな

玲奈 大丈夫だって

坂本 もし、もしも陽子さんが偽物ってバレて、元同級生の誰かにツイートされて、他の同級生もリプライして、え、何この人、偽物?ってなって、またネイバーまとめで叩かれて

玲奈 またって言わないでよ。じゃあ最初からこんな仕事受けなければ良かったじゃん

坂本 うちの事務所は、所河映像さんにはお世話になってるので、断れないんです

玲奈 じゃあもうディレクターに言う?ごめんなさい、友達一人もいませんでした、中学の思い出も一つもありませーん、て

坂本 それじゃ番組にならないでしょ

玲奈 ……てかさ、いいよ。最悪バレても

坂本 ええ?

玲奈 土地にも学校にも何の愛着も無いし

坂本 でも、今後の活動に影響出ますよ

玲奈 ……いいよ、もう辞めるから

坂本 ……え?

玲奈 担当になったばっかで悪いけどさ。私、そろそろ潮時だと思うんだよね

坂本 そんなこと言わないで下さいよ……

玲奈 ごめんね。いきなり言うのもなんだからさ、先に言っておくね

坂本 ……本気ですか?

玲奈 うん

坂本 でも決めたわけじゃないでしょう?

玲奈 ほとんど決めた

坂本 そんな……それは改めて、社長も交えて……でも!まずは、今日のお仕事、ばれないように、そして良い番組になるように、頑張りましょうね!

玲奈 ……正直、その方が心配。今日もあのディレクターが仕切るんでしょ?なんだっけ、名前

坂本 木之内さん

玲奈 あの人、頼りなさ過ぎでしょ

坂本 そんなことないです

玲奈 あーあ、ちゃちゃっとやって、帰りたい

   玲奈、体を伸ばす。

坂本 本当に、誰とも連絡とってないんですか?

玲奈 うん

坂本 まあ、転校しちゃったんなら、しょうがないですよね

玲奈 関係ないよ。中学も高校も、誰も連絡とってないもん

坂本 でもLINEとかFACEBOOKとか、勝手に繋がりません?

玲奈 うん、ていうか、連絡をとろうにも、当時から友達いなかったからね。じゃなかったら、わざわざこんな手の込んだことしないでしょ

坂本 全然、覚えてないんですか?

玲奈 覚えてないし、忘れようとした

坂本 どうして?

玲奈 私、たまにCMとか出てたからさ、中途半端に芸能人で

坂本 はい

玲奈 そういう子ってだいたい、いじめられるんだよね

坂本 え、うちの学校にも、アイドルいましたけど、クラスの人気者でしたよ?

玲奈 それ今言わなくてよくない?てかあんたの学校、マジでパラダイスだね

坂本 そうなのかなあ

玲奈 でも残念ながら、全国の中学校がパラダイスではないんだわ。ま、いじめって言っても、ただシカトされるくらいだけど

坂本 でも辛いですね

玲奈 だから、こいつらのこと全員忘れて、有名になってから会っても、こっちが完璧にシカトしようって思ってたの

坂本 暗い……でも可哀想

玲奈 でも、高校は芸能コース行ったのに、そこでも友達できなかったってことは、私の人間性の問題なんだろうね

坂本 それは違います

玲奈 え?

坂本 玲奈さんが人間的に問題あっても、だからっていじめた奴は悪いです。自分が悪かったと思う方が楽ですけど、それとこれとは別です。嫌な奴は憎んでいいんです

玲奈 そうかな

坂本 そうです……でもある意味、羨ましいです

玲奈 は?

坂本 今って、昔の友達と疎遠になりようがないじゃないですか、スマホとネットがある限り、死ぬまで繋がり続けるって言うか

玲奈 うん、だから私はその実感、全然ないけどね

坂本 なんか疲れる時はあります。「お友達」をスクロールしながら、本当は、この内の二人くらいで充分かもな、とかね

玲奈 二人?

坂本 本当に大事な友達って、それくらいかなって

玲奈 ……坂本ちゃんは、もっといるでしょ

坂本 え?

玲奈 フラッシュモブやってくれた皆が友達じゃないの?

坂本 ……それはちょっと違うかなあ

玲奈 違うんだ

坂本 はい

玲奈 ……やっぱり私も羨ましいわ

坂本 え?

玲奈 古い友達。人と関係を継続するのが苦手でさ。気づいたら自分から疎遠にしちゃう。持病だね

坂本 ふーむ

玲奈 坂本ちゃんとも、辞めたら一瞬で会わなくなるよ

坂本 えー、辞めないし、辞めたとしても飲みましょうよー

玲奈 だって私とさし飲みとか想像できる?

坂本 もちろん、でき……ますよ?

玲奈 嘘つけ……古くなくても、気軽に飲みとか誘える友達、欲しいわ

坂本 ……思い出したんですけど、うちの学校もパラダイスではないです

玲奈 え?

坂本 教室に来れなくて、ずっと保健室にいた子、いました……クラスに馴染めなかったんだと思います

玲奈 うん

坂本 でも、学年でそういう子が何人かいて、保健室に独自のコミュニティがあったらしいです……美術室でも、誰とも仲良くならなかったんですか?

   玲奈、美術室を見まわして、

玲奈 うん……ここにいた子とは、今逢えたら、話してみたい気もするかな……顔も覚えてないけど

   泉が入ってくる。

泉 失礼します……

坂本 ……はい

泉 あら……一条さん?

玲奈 ……はい

泉 ……久しぶりー!

玲奈 あ、はい……えーと……(思い出せない)

泉 (坂本に)はじめまして、泉です。(玲奈も見て)旧姓・松坂、松坂道子です

玲奈 ああ……(うろ覚え)ご無沙汰しております

坂本 あ、マネージャーの坂本です。本日はよろしくお願いします

泉 こちらこそ。ようこそ。緑ヶ丘中学へ。ごめんなさいね、私で

玲奈 え?

泉 もう15年も前でしょ?先生たちもすっかり入れ替わってしまって。私くらいしかいなかったの

玲奈 ああ、いえ、ありがとうございます

泉 ま、私も出戻りだけどね、あれから開明中学、東紫中学と回って今年また、緑ヶ丘に戻ってきたの。そしたら、一条さんが来てくれるんだもの、運命、感じちゃうわね

玲奈 はい……お手間をおかけして、すみません

泉 お手間だなんてそんな、何でも言ってね

玲奈 ありがとうございます

坂本 えーと……(お二人は?)

泉 ええ、一条さんが一年生の時、授業を受け持っていて

坂本 ああ、授業を

玲奈 うん、英語のね

泉 ううん、国語の

玲奈 そう、国語の

坂本 ああ、国語

泉 そうなんです

玲奈 せまるきししかまる

泉 うん、それは古文ね、高校の。私は、「谷川俊太郎」

玲奈 え?

泉 一年生の教科書の、一番最初に載ってたでしょう?谷川俊太郎作、「二十億光年の孤独」

玲奈 ああ……

泉 もう、一条さんは、授業のフェイドアウトが得意だったもんね

玲奈 え

泉 で、よくここ(美術室)で休憩してたもんねえ

玲奈 ……知ってたんですか?

泉 もちろん。一条さん、有名人だったから

   陽子が戻ってくる。

陽子 あ……

泉 ……?

   玲奈と陽子、どうするか探り合う。

坂本 ……えーと

玲奈 泉……松坂、先生……国語の

陽子 ああ……ご無沙汰しております

泉 ……こんにちは

陽子 でもごめんなさい、私、先生の授業は受けていないので……

玲奈 ……あそっか、そうだね、陽子、クラスは違ったもんね

陽子 うん、二組

泉 102?

陽子 はい

泉 ……私、あの年は101から103まで教えてたはずだけど……

陽子 そうです、四組でした

泉 104

陽子 そうです。どうも、清水陽子です

泉 清水さん……ごめんなさいね。一度でも授業を受け持った生徒の顔は、絶対に忘れないんだけど

陽子 いいえ。私、これと言って特徴の無い顔ですから

泉 ヨウコ、の漢字は?

陽子 太陽の陽で、陽子です

泉 そう。私はROADの道で、道子です。よく、皇后さまの美智子、に間違われるの。恐れ多いわよねえ?でも最近はね、名前に「子」がつく生徒、減ったのよー?私たちの時代は、クラスに半分はいたのにね。(坂本に)あなた、下のお名前は?

坂本 亜梨奈、です

泉 ほらね。かっこいい名前が多いの……ありな?どういう字?

坂本 亜細亜の亜に、梨に奈良の奈、で

泉 (続けて)亜梨奈さん……平成ねえ。どうして昔は「子」が多かったか知ってる?

玲奈 ……さあ?

泉 もう、教えたでしょ?昔はね、「子」がつく名前は、貴族にだけ、許されていたの。それが庶民にも解禁されたものだから、右も左も子、子、子……これね、私が授業で必ず話す、鉄板ネタなの

坂本 ……へえ……先生の授業、面白そう

泉 ありがとう。よく言われる。

   坂本、スマホを確認して、

坂本 あ、下に行って来ますね

玲奈 うん

坂本 失礼します

   坂本、出て行く。

玲奈 ……お休みの日にすみません

泉 いいえ

玲奈 ……もしかして、この為に学校来て頂いたんですか?

泉 ううん、今日は元々、予定があって

玲奈 それなら良かったです

泉 ……清水さんも、一緒に出るの?

陽子 ……そうなんです。お邪魔します

泉 じゃあ二人の昔話も、聴けるのかしら?

陽子 ……そうですね

   泉、玲奈と陽子に、改まって

泉 二人とも、今日は本当にありがとう

玲奈 いえ、こちらこそ……

泉 緑ヶ丘中学は戦前の創立以来、校訓として「友愛」、変わらぬ友情、を掲げてきました。今日また一つ、途切れなく続く美しい友情の形が見られるかと思うと、一教師として、心から嬉しく思います

   間。

玲奈 ……はい

陽子 ……

泉 良かったら……今のうちに……

玲奈 はい?

泉 写真……撮ってもいいかしら?

玲奈 ああ、もちろん……

   坂本、木之内を連れて戻ってくる。

坂本 いらっしゃいました

木之内 ごめんなさい、お待たせしました……(玲奈に)おはようございます

玲奈 おはようございます

木之内 えーと……

玲奈 (紹介)友達の清水さんです

木之内 ああ、お友達……はじめまして、ディレクターの木之内です。本日はよろしくお願いします

陽子 清水です。よろしくお願いします

玲奈 泉先生

木之内 泉先生……はじめまして、ディレクターの木之内です。本日はよろしくお願いします

泉 こちらこそ、よろしくお願いします。ようこそ、緑ヶ丘中学へ。協力できることは、何でも言って下さいね

木之内 ありがとうございます。では、早速ですが、今日の流れを確認したいと思います

   木之内、進行表を配り始める。

玲奈 ……あの

木之内 はい?

玲奈 カメラの方とかは?

木之内 あ、それはもう、私が全部、回しますので

玲奈 木之内さん一人で?

木之内 そうですね

   玲奈、坂本、陽子に進行表を配った木之内、泉を見る。

木之内 ……先生も、一応

泉 (欲しかった)はい、ありがとうございます

木之内 えー、ここに書いてある通りですが、まず番組の趣旨としましては、東京でご活躍中の方が、地元を訪れ、ルーツを再発見する、ということで、今回は一条玲奈さんに、藤崎市を歩いて頂く、主にご出身のこの、緑ヶ丘中学で思い出を語って頂く、ということになっております

   泉、拍手。

木之内 ありがとうございます。つきましてはまず、外で「母校に来ました」の絵を頂いて、そこからこの美術室で一条さんのインタビュー、そこに、えーと……

陽子 あ、清水です

木之内 ごめんなさい、清水さんに入って来て頂いて、そこからはもう、二人で思い出話をして頂いて、という流れになります

陽子 はい、よろしくお願いします

木之内 お話の内容はお任せしますので、自由に、お話して頂いて、後でこちらで、編集させて頂きます。尺はだいたい、15分くらいになるとお考え頂ければ

玲奈 最後は?どう締めるの?

木之内 それは……撮りながら、考えようかと

泉 私は、見学していて、いいのかしら

木之内 見学……そうですね、カメラに入らないようにして頂ければ

泉 わかりました。私も、途中で何か言った方がいいのかしら

木之内 え、そうですね……先生は、一条さんの担任とか……?

泉 いえ、違います

木之内 部活の顧問とかでも……?

玲奈 私、帰宅部だったんで

泉 一年生の時に、国語を、教えていて

木之内 国語……そうですか

泉 もし出るなら、早めに言って下さいね。ほら、二人と違って私は、お化粧も衣装も時間かかるから

木之内 はい、ありがとうございます……では清水さん、簡単に、動線の確認をお願いします

陽子 はい(鞄を持つ)

木之内 ちょっと、失礼します

   木之内、陽子を連れて出て行く。

泉 ……清水さんとは、よく連絡をとっているの?

玲奈 ……実は、陽子と会うのも15年ぶりで

泉 あら、そうなの

玲奈 はい、本当に久しぶりで

泉 でも全然、久しぶりに見えないわね

玲奈 ……たぶん、昔もよく二人でここにいたから

泉 じゃあ、私も見たことあるはずねえ

玲奈 え?

泉 たまにのぞいてたのよ、美術室

玲奈 そうですか……その節はごめんなさい。先生の授業は、あんまりサボらなかったと思いますけど

泉 いいのよ。一条さんは仕事のストレスも、同級生とのストレスもあっただろうから、息抜きが必要だったのよね

玲奈 ……え?

   木之内と陽子、戻ってくる。

木之内 お待たせしました。では一条さん、まずは外へ

玲奈 ……はい

坂本 よろしくお願いします

木之内 (陽子に)すいません、しばらくこちらで、お待ち下さい

陽子 はい、わかりました

   木之内、玲奈、坂本、出て行く。

   泉と陽子、残される。

泉 ……じゃ、よろしくね

陽子 ……はい。よろしくお願いします

   泉も三人を追いかけて、出て行く。

陽子 ……

   陽子、大きく深呼吸をし、携帯で音楽をかけ、玲奈から聴き取ったメモを取り出し、確認する。

   しかしすぐに、メモを破ると、芝居のアップをするようにストレッチを始める。

   音楽を止めて、発声練習をする。

陽子 ……玲奈、玲奈……(感情をこめて)玲奈……

次に、鞄からもう一枚の台本のような物を取り出して読み始める。

陽子 ……

   しばらくして、四人の話し声がして、陽子は台本を隠す。

   四人、戻ってくる。

坂本 お疲れ様です

陽子 お疲れ様です

玲奈 ごめん、お待たせ

陽子 ううん

木之内 ではお二人の再会、撮りたいと思います

陽子 はい

木之内 ではまず、一条さんが入ってくるところから

玲奈 はい

   玲奈と陽子と坂本、廊下に出る。

   泉は邪魔にならないよう、美術室の隅に寄る。

木之内 では、一条さん、お願いします

   玲奈、入ってくる。

玲奈 ……(一人語り)懐かしい……ここがよく、遊んでた、美術室です。正直、教室よりも懐かしい……

木之内 (ナレーション風に)……玲奈にとっては、実に思い出深い場所のようだ……

   玲奈、止まる。

玲奈 ……何それ?

木之内 あ、ナレーションです。気にせず続けて下さい

   玲奈、やりづらさを感じながらも続ける。

玲奈 ……(続ける)あんまり、変わってないな……ここに座ると、学生時代に戻ったみたいです。ここに来ると、だいたい友達にも会えて……

   木之内、廊下に合図。

   陽子が入ってくる。

陽子 ……玲奈

玲奈 ……陽子?

陽子 久しぶり

玲奈 え……何、なんで……聴いてないんですけど

陽子 言ってないもん

玲奈 え、どうやって調べたの……超久しぶり

陽子 ね。ご活躍で

玲奈 え、陽子は?今もこっちに住んでるの?

陽子 そうだよ

玲奈 ヤバい、ちょっと泣きそうかも

陽子 なんか近くで見たら変わらないね

玲奈 変わったよ。陽子こそ、変わらない

陽子 いえいえ、私なんてもう、主婦ですから

玲奈 え、結婚したの

陽子 うん

玲奈 そっか……え、何年ぶり?

陽子 玲奈が転校して以来?

玲奈 だよね、じゃあもう、15年?

陽子 そんなに……経ったか、経ったね。お帰りなさい

玲奈 ただいま……え、ゲストって陽子のこと?

陽子 そうです

玲奈 えー……  

陽子 ここ、懐かしい……

二人とも、打合せ通りに進める。

   先ほどよりも、芝居ものってきている様子。

玲奈 陽子も卒業以来?

陽子 うん、と言うより、転校して以来?

玲奈 あそっか

   泉が口を挟む。

泉 転校?

陽子 え……(答えていいのかわからないが)はい

泉 清水さんも?

玲奈 ……そうです。だから二人とも、卒業はしてなくて

泉 あらそうだったのね

木之内 あの、すいません……先生、声

泉 あ、そうね、ごめんなさい、どうぞ続けて

木之内 はい、すいません……ではどうぞ、お願いします

   陽子、少し戻って続ける。

陽子 ここ、懐かしい……

玲奈 陽子も卒業以来?

陽子 うん、と言うより、転校して以来?

玲奈 あそっか。最初に話した時、覚えてる?

陽子 体育祭

玲奈 そうそう

陽子 私は怪我して参加できなくて、居場所が無いから、一人でここに来て、グラウンドの試合を見てて

玲奈 サッカーね。女子がキャーキャー言ってて

陽子 うん。そしたら急に玲奈が入ってきて、「何してんの」って言われて

玲奈 お前が何してるの、って感じだね

陽子 私、まさか一条さんに話しかけられると思ってなかったから、なんて返していいかわからなくて、ただ、「見てる」って

玲奈 知ってたの、私のこと

陽子 もちろん知ってるよ

玲奈 なんで、初めて喋ったんでしょ?

陽子 だって有名だったよ、一条さんは

   泉が再び口を挟む。

泉 うんうん、そうよねえ

木之内 (小声で)……先生

泉 あら、ごめんなさい

   二人、聞こえなかったことにして続ける。

陽子 でも玲奈は「見ててもつまんなくない?」って言って、出てった

玲奈 え、私、二言しか喋ってないじゃん

陽子 そうだね

玲奈 私、感じ悪!それでよく仲良くなったね、私たち

陽子 うん……

   陽子、鞄を置いて、

陽子 でも……よく喋るようになったのは、あの事件からじゃない?

玲奈 ……事件?

陽子 そう。玲奈の涙事件

玲奈 ……ああ

   玲奈、陽子が何を言いだしたのかわからないが、合わせる。

陽子 体育祭の一か月後くらいかな、私がまた一人でここにいたら、玲奈がふらっと入ってきて

玲奈 ……うん

陽子 私、また何て言ったらいいかわからないから、漫画読んでるふりして……でもよく見たら、玲奈が泣いてて

玲奈 ……え?

陽子 下向いて隠してたけどね。しばらくそのまま……ここと、ここくらいの距離で、私は気づかないふりして漫画、玲奈は泣いてないふりして携帯を見てて。私、さすがに何か言った方がいいんじゃないかと思って、勇気を振り絞って聴いてみたの、「大丈夫?」って

玲奈 うん

陽子 玲奈は、完全スルー

玲奈 えー、嘘でしょ

陽子 もう私、死にたくなって、また漫画に戻って、全く内容入ってこなくて、もう出てこうかと思ったの、そしたら玲奈、二分後くらいにいきなり、「フラれた」って

玲奈 ……(笑って)ちょっとそれ黒歴史じゃん、陽子わかってる?これテレビだよ

陽子 (木之内に)あれ駄目ですか?

木之内 いいですいいです、どうぞどうぞ

玲奈 ちょっとこれ、そういう番組?

陽子 「一条さんが、高校生と付き合ってる」っていう噂は私も知ってて、その人なのかな、と思って、でも触れていいかわからないから私も「そっかあ」って。そしたら少しずつ、詳細を教えてくれたの。出逢いは合コンとか、バイクで送り迎えとか、束縛が激しかったくせに、とか。中一で合コンとか異次元過ぎたし、私はもちろん恋愛経験ゼロだし、恋愛の知識も、キムタクの一連のトレンディードラマか、BLくらいしか無かったから、ただただ聴いてるだけで……でもよく話すようになったのは、それが最初

   間。

玲奈 ……そうだったかもしれない。思い出してきた

   坂本が止める。

坂本 あ、あの、すいません

木之内 ……はい?

坂本 あの、ちょっといいですか?

木之内 ええ、どうぞ

坂本 玲奈さん、ちょっと確認が

玲奈 何?

   坂本、玲奈を廊下に連れ出す。

◆廊下

坂本 ……二人とも、迫真の演技ですね、さすがです、凄い!

玲奈 ……どうしたの?

坂本 中一で合コン、ていうのはまずいかもですね。NGについて打合せしてなかったと思って。ごめんなさい

玲奈 後で編集して貰えばいいよ

坂本 ま、そうですかね……

玲奈 ……てか、本当のことだし

坂本 え?

玲奈 中一で合コン

坂本 マジですか、友達いなかったのに?

玲奈 不思議だよね。でも遊んでる子役のネットワークがあってね、男は高校生で既に、年下が好きだからね

坂本 はあ……

玲奈 で、高校生も、バイクで送り迎えも、フラれたのも……ここで泣いてたのも、本当

坂本 そうなんですか?凄いなあ、陽子さん

玲奈 ……あの人さ、どうやって頼んだの?

坂本 どうって?

玲奈 まずは会社に連絡したんでしょ?

坂本 そうです。ハッピーフレンズ代行のホームページに申込みフォームがあって、年齢の要望とか伝えて、そしたらキャストの中から探してくれて

玲奈 プロフィールとか、あるのかな?

坂本 いえ、キャストの個人情報は、秘密だそうです

玲奈 あそう……

   玲奈、独り言のように、

玲奈 ……まあ、中学生が高校生にフラれるなんて、あるあるか

   玲奈、戻ろうして、

玲奈 ……あのさ、学校って、アルバム保管してるのかな

坂本 卒アル?

玲奈 うん

坂本 さあ。先生に聴いてみます?

玲奈 あとで、内緒で聴いてみて

坂本 わかりました。でも玲奈さん、転校したなら載ってなくないですか?

玲奈 いいから

坂本 はい

   二人、美術室に戻る。

坂本 ごめんなさい

木之内 いえ、大丈夫ですか?

坂本 はい。あの、これって、撮影してから、ここは使わないで下さい、みたいな話は可能ですか?

木之内 ええ、もちろんです

陽子 ごめんなさい、何か問題あった?

玲奈 ううん、そうじゃなくて

坂本 すいません、大丈夫です、失礼しました

木之内 では……先ほどの、失恋のお話?面白いので良かったら、続けてみて下さい

陽子 はい……

木之内 では、お願いします

   玲奈と陽子、空気を作って再開する。

玲奈 誰にも話さなかったけど、陽子にだけは言えたんだね、きっと

陽子 私がたまたまここにいたからだけど

玲奈 どっちにしろ黒歴史だけど

陽子 でもその後も、よく喋るって言うよりは、二人でただ漫画描いたよね

玲奈 そうだね

陽子 玲奈は昔から絵が上手くてビックリした

玲奈 なぜか美術だけは得意だったんだよね

陽子 私、なかなか自分の漫画は見せられなくて

玲奈 そうだっけ?

陽子 そもそもBL描いてるって言えなかったし

玲奈 ああ。最初に見せてくれた時はちょっとビックリした

陽子 でも玲奈は褒めてくれたんだよ、エロいだけじゃなくて、まずストーリーがしっかりしてるって

玲奈 だって実際、そうだったもん。私はイラストは好きだけど、物語を創る能力がゼロだったから

陽子 私、玲奈が言ってくれたから、雑誌に投稿もするようになったんだよ

玲奈 嘘、そうだったの?

陽子 うん……懐かしいね

玲奈 ……本当だね……ヤバい、本当に泣きそうかも

   玲奈と陽子、しみじみとした様子。

陽子 ……今日、原田先生も来てくれたら良かったのにね

玲奈 ……え?

   玲奈、呆然とする。

陽子 美術の原田先生

玲奈 わかるよ、でも……え……?

陽子 (泉に)あの……原田先生も、転任されたんですか?

泉 ……ううん。お亡くなりになったの

   間。

陽子 そうですか

泉 お若かったのにね

木之内 ……原田先生というのは?

陽子 美術の先生です。ここで、私たちがサボってても、何も言わずに受け入れてくれて

泉 そうね……優しい方でした

木之内 ……そうですか……(亡くなったのは)いつ頃ですか?

泉 いつだったかしら。もう何年も前ね

木之内 ……どうして?

泉 ご病気でね

陽子 そうなんだ……お世話になったな

   泉、何かに気づいた様子。

泉 あの……清水さん、あなた……

陽子 ……はい?

泉 あなた、もしかして昔……わりと……太ってた?

玲奈 ……え?

   間。

陽子 ……はい。わりと

泉 思い出した……凄い……綺麗になったわね……ライザップ?

陽子 違います。高校で、陸上を始めたので

泉 陸上……やっぱり運動は大事なのね……なんだか別人みたい……あ、ごめんなさいね

陽子 いえ……ご無沙汰しております

泉 顔を見ても全然わからなかったけど、話を聴いて思い出したの。原田先生とよく話してた子がいたな、って

陽子 はい

泉 でも、あれ……名前が違ったような気もするけど……

陽子 ……はい。結婚したので

泉 あらそう……おめでとう

陽子 ありがとうございます

泉 ああ、すっきりした

   陽子、そのまま続ける。

陽子 原田先生は、私たちがサボって描いてる漫画も、見てくれたんだよね

玲奈 ……うん

陽子 私、最初に褒めてくれたのが玲奈で、次が原田先生だった

玲奈 ……うん

陽子 ……もっと、先生と話したかったな

玲奈 ……

陽子 でも……玲奈

玲奈 何?

陽子 一つだけ、聴きたかったんだけど……あの噂、流したのって玲奈なの?

   間。

玲奈 ……噂って?

陽子 私が……原田先生のこと……

玲奈 ……ごめん、覚えてない

陽子 ……そう

玲奈 ……覚えてないし……もしも、私だったら、どうなの?

   間。

泉 ……ちょっと、どうしちゃったの、急に。二人とも

陽子 ……ごめんなさい

   木之内、止めて、

木之内 ……休憩しましょうか

坂本 はい、すいません……

玲奈 ……ちょっと、出てきてもいい?

木之内 はい……

   玲奈、出て行く。

坂本 (陽子に)あ、あの……(何か言おうとして思いとどまり) ……すいません

   坂本、玲奈を追いかけて出て行く。

泉 (陽子に)……どういうこと?

陽子 ……すいません

泉 今日は、再会を喜ぶんじゃなかったの?

陽子 ……はい

泉 ……噂って何?

陽子 ……私が、原田先生のこと……好きだって

泉 好きだったの?

陽子 え?

泉 好きだったの?

陽子 それは……優しかったし……でも別に、変な意味では……

泉 でも、あなた腐女子だったんでしょう?

陽子 ……はい

泉 じゃあ、好きだったんでしょう

木之内 ……え?それどういう意味ですか?

泉 原田先生はあの頃、三十代後半、痩せ型、丸眼鏡に時おり無精ひげ、素肌にシャツ。腐女子なら誰もが好きになる人でした

木之内 そんな……

陽子 ……たしかに、そうだったのかもしれません

泉 そう言えば、そんな噂もあったかもしれないわね。それで?噂が流れてどうなったの?

陽子 ……先生とは話せなくなりました

泉 どうして?

陽子 迷惑がかかると思って

泉 ……そんなこと

陽子 もちろん、今ではそんなこと、ってわかります。下らないことだってわかります。でも……当時、何も知らない、太ってニキビまみれの13歳には、どれくらい大きなことだったか、先生にもわかりますよね?

泉 わかるけど……でも、それ、どうして一条さんが流したってわかるの?そういうタイプじゃないでしょう?それに……一条さんには噂を流して聴くような友達、いなかったでしょう

陽子 ……別に、口じゃなくても流せるじゃないですか

   泉、ため息。

泉 (木之内に)どうするの?

木之内 えと……そうですね……一条さんが戻ってきてから、考えます

泉 ちょっと様子を見てくるわね

木之内 あ、すみません……

   泉、行こうとして、

泉 (陽子に)あのね。人生が何度もやり直せるように、友情だって、いつでもやり直せるのよ?

陽子 ……

   泉、出て行く。

   陽子、誰も戻ってこないのを確認してから、木之内を睨む。

陽子 ……本当に、これでいいんですか?

木之内 ……はい

陽子 これ、番組なんですよね?

木之内 そうです

陽子 成立してなくないですか?

木之内 ……いいんです

陽子 それに、先生が出てくるなんて聴いてないんですけど

木之内 ……とてもうまく、対応してくれてると思います

陽子 仕事ですから。でもこれ、後で追加料金頂きますよ

木之内 はい……

   木之内も陽子を睨んで、

木之内 でも、何なんですか、なんでやたらBLネタを出してくるんですか?私、そんなこと、一言も書いてないですよね?

陽子 ディティールが大事でしょ?神は細部に宿るんです

木之内 でも、余計なアドリブは慎んで下さい

陽子 これ、なんの目的でやってるんですか?

   玲奈が戻ってくる。

   三人、お互いを探ったまま。

玲奈 ……(木之内に)ごめん、ちょっと外して貰える?

木之内 ……はい

   木之内、出て行く。

   木之内はそのまま、廊下で中の声を聴く。

玲奈 ……(あなたは)誰なの?

陽子 ……清水陽子です……台本通りのつもりでしたけど、やり過ぎでしたか?

玲奈 だから、誰なの、って

陽子 だから清水……

玲奈 (遮って)いいから

陽子 ……ハッピーフレンズ代行から来ました。それ以上は申し上げられません

玲奈 ……

陽子 ……チェンジ、しますか?

玲奈 ……

陽子 私は別に、かまいませんけど

玲奈 久しぶり

陽子 ……はい?

玲奈 って言えばいいの?

陽子 あの……

玲奈 (遮って)何が目的なの?謝ればいいの?

陽子 ……謝る?

玲奈 私は、本当に何も、覚えてない。でも謝って欲しいなら、謝る

◆廊下

   坂本と泉が駆け足で戻ってくる。

   廊下で、中の様子を伺う木之内を見て、

坂本 (中は)どういう状況ですか?

木之内 戻ってきて、二人にしてって

坂本 どうしましょう……

木之内 はい……

泉 続けましょう

木之内 え?

泉 変なわだかまりがあるなら、とことん話し合って解決するの。きっと分かり合えるわよ

坂本 でも……あ、あの、学校って、卒業アルバム、保管してるものですか?

泉 アルバムの保管は、やめたの

坂本 そうですか……

泉 あでも待って、一条さんの学年のアルバムはまだあるかも。後で確認してみるわ

◆美術室内

陽子 ……もうやめましょう

玲奈 何を

陽子 こんなの……

◆廊下

木ノ内 あのそれ、まず私に見せて頂けますか?

坂本 え?

木ノ内 ちょっと、確認してみたくて

泉 ……わかりました

木ノ内 ……では、入りましょう

   木之内、ノック。

   三人、中に入る。

木ノ内 ……いかがでしょう?

玲奈 これ、後で編集して貰えるんだよね?

木ノ内 そうですね

玲奈 じゃあ、いいよ、続けて下さい

陽子 え……

木ノ内 ……わかりました。では、どこから……

   玲奈、遮って再開する。

玲奈 なんで私だと思ったの?

陽子 それは……

玲奈 私さ、ハッキリ言って中学に居場所無かったし、だけど唯一、普通に話聴いてくれたのが原田先生だったの。陽子もそうだと思うけど

陽子 ……うん

玲奈 その原田先生を、貶めるような噂、流さない

陽子 ……でも……

玲奈 もしかして、先生と陽子が仲良いから、嫉妬したって?それこそ、あり得ない

陽子 ……どうして?

玲奈 だって私の方が明らかに可愛かったし。と言うより、あれだけふくよかな陽子と原田先生のラブとか、想像もできなかった

陽子 はあ?

玲奈 二人が話してても、何なら微笑ましく見てたよ

陽子 ちょ、ひどくない?何その上から目線?

玲奈 (泉に)ねえ?

泉 え、さあ……

陽子 (ちょっと泣きそうに泉に)私、そんなに太ってました?

泉 それは、見る人によって違うから……原田先生は、ふくよかとは思ってなかったかもしれないし

玲奈 そういう話じゃないし!客観的な話をしてるんです

陽子 ……ちょっと、失礼します(出て行こうとする)

玲奈 ていうか、感謝しかない

陽子 ……は?

玲奈 だって私、中学時代にまともに喋ったの、原田先生と……陽子だけだもん

陽子 ……

玲奈 だから別に、二人が仲良くしててもかまわない、どころか嬉しいし、陽子に対しても、裏切る理由が無い。本当に

陽子 ……

   陽子、出て行く。

坂本 あ……(追いかけようとする)

木ノ内 (制止して)大丈夫です。私が……

   木ノ内、出て行く。

泉 ……私も、ちょっと用事を思い出したわ……

   泉、出て行く。

10

◆廊下

   涙ぐむ陽子とおろおろする木ノ内。

泉 ……大丈夫?

陽子 私、もう……

木ノ内 ……先生、あの、アルバムをお願いできますか?

泉 え、ああ、はい、私もそう思って。ちょっと待ってね

   泉、去る。

   陽子と木ノ内、中に聞こえないように小声で。

陽子 ……もう耐えられません。何なんですか?デブデブ言われて、無駄に傷つくんですけど。私も昔は肥満だったから、忘れたはずの痛みが掘り返されて

木ノ内 大丈夫、予定通りです

陽子 予定通り?どこが?

   陽子、怒って去る。

   木之内、追いかける。

◆美術室内

坂本 ……どうなっちゃってるんですか?

玲奈 こんなことあり得ないと思ったけど……本物かも

坂本 ……陽子さんが?

玲奈 うん……きっと会話も、したんだと思う。した気がする

坂本 嘘……そんなこと、あります……?

玲奈 そして私……やったかもしれない

坂本 え?

玲奈 噂

坂本 ……は?

玲奈 私なら、やりかねない

坂本 ちょっと……最低じゃないですか!だからすぐ叩かれるんですよ、性格悪そうって

玲奈 うるさい!ネイバーまとめは、あれは完全にデマだもん

坂本 なんかもう、信じられません……でもとにかく……本当に同級生だとしたら……なんか凄くないですか?

   坂本、状況を整理しきれないが、興奮している。

坂本 え、番組的にどうなんだろう、ある意味、超秀逸なドキュメンタリーになりますよね!ん?ならないか?いやでもとにかく、凄い……

玲奈 目的が全くわからない……何がしたいの……?

坂本 ……たしかに

◆廊下

   陽子、戻ってくる。

   木之内も追いついて、

木ノ内 「誤解だった」って、謝って下さい

陽子 (あきれて)まだ続けるんですか?

木ノ内 もうすぐ終わりますから。「誤解して、私も、玲奈のこと無視してごめん」、て

陽子 無視?

木ノ内 はい

陽子 何それ、子供過ぎるでしょ

木ノ内 でも中学生ですよ?どれくらい大きなことだったか、わかりますよね?

陽子 ……(ため息)はい

木ノ内 お願いします

陽子 で、最後に、手紙読みますね

木ノ内 ……手紙?

陽子 はい

木ノ内 なんですか、手紙って?

陽子 玲奈が転校する時に、陽子に渡した手紙だそうです

木ノ内 え、なんですか、いつ貰ったんですか?

陽子 さっき。これ読んで下さい、って

木ノ内 ……いいです、それは

陽子 なんで。美しい終わり方じゃないですか

木ノ内 やめて下さい

陽子 なんで

木ノ内 だって事実じゃないし!

陽子 ……事実?

木ノ内 ……

陽子 ……じゃあ貴女のシナリオは、事実なんですか?

◆美術室内

坂本 とりあえず、木ノ内さんに、こっそり相談します……ごめんなさい!

玲奈 何が?

坂本 木ノ内さんには、言ってあったんです

玲奈 何を?

坂本 ハッピーフレンズ代行のこと……

◆美術室内と廊下で同時進行

玲奈 ……は?

陽子 あなた……誰なの?

坂本 本当にごめんなさい!やっぱり心配で

木ノ内 ……ディレクターです

玲奈 え、ちょっと待って……じゃああの人……知ってたってこと?

坂本 はい

陽子 何がしたいの?

木ノ内 ……

陽子 玲奈さんと話がしたいの?じゃあ自分でやればいいでしょう?私が言ってあげましょうか?

木ノ内 は?

陽子 この人が、本物の……

木ノ内 (遮って)そんなわけないでしょう

陽子 は?

木之内 私……玲奈さんと最初に会ったの、二週間前ですよ。その時、一時間も打合せしたんですよ?同級生だったら……さすがに向こうも、気づくでしょう?

玲奈 それで……あの人、何て言ってたの?

坂本 大丈夫です、何とかしましょう、って

玲奈 ……何とかって……

   泉、アルバムを持って戻ってくる。

泉 ……あったわ

木ノ内 ……ありがとうございます

   木ノ内、アルバムを受け取ると、自分の鞄に入れる。

木ノ内 とにかく、戻りましょう、お願いします

   木之内、ノック。

   三人、中に入る。

11

   玲奈、木之内と陽子を見ている。

玲奈 ……

   陽子、自分から続ける。

陽子 ……ごめん

玲奈 ……は?どこに?

陽子 私の……勘違いだったと思う

玲奈 ……

陽子 ……本当にごめん

玲奈 ……いいよ、別に

陽子 だって私……そのせいで……玲奈と話さなくなったから……

   間。

玲奈 ……悪いけど……そんなの、大したことじゃない

陽子 ……え?

玲奈 最初から一人だったし、ちょっと話すようになった子が、また離れていったとしても、元に戻っただけだから

陽子 ……そうだね。私も同じだった

   間。

   陽子、手紙を取り出す。

陽子 今日は、玲奈が転校する前にくれた、手紙を、持ってきました

坂本 え……ここで……?

玲奈 ……

陽子 (読む)「陽子へ。

こんにちは。玲奈です。こんにちは、って言うのもおかしいね(笑)

こういう時、どういう風に書き出したら良いのか、わかりません。

さよなら、は、もう言い切った気がするので、今日は、なかなか面と向かって言えないことを、書きたいと思います。

この中学で、本当に心を開いて話すことができたのは、陽子一人だったと思います。

陽子がいなかったら、もっとずっと、殺伐とした中学生活だった思う。

本当にありがとう。

いつか陽子が言ってくれた、

『今の私達には、学校っていう空間が人生のほとんどに感じられるけど、本当はとても限られた時間で、卒業すれば、もっと広い世界を知るし、色んな人に会うし、辛いことも、それ以上に楽しいこともたくさんあると思う』

っていう言葉が、凄く支えになったし、東京でも頑張ろう、と思えたの。

陽子は今までも、これからも、私の大切な友達です。

また逢おうね。

最後にもう一度だけ。さようなら。

玲奈」

   間。

玲奈 ……ここで、一区切りでいんじゃない?

木ノ内 ……そうですね

坂本 ……お疲れ様でした

玲奈 で、最後はどう締める?

木之内 はい……

玲奈 ……木之内さんは、これ、どういう番組にしたいの?

木之内 それは……

   間。

玲奈 ……ごめん。ちょっとトイレ行ってくる

木之内 ……はい

   玲奈、行こうとして、

玲奈 ……陽子

陽子 ……何?

玲奈 原田先生の好きな画家……誰か覚えてる?

陽子 え……

   間。

陽子 ……覚えてない

玲奈 ……だよね

   玲奈、出て行く。

12

泉 (ポストカードを見て)……マグリットよ

陽子 え?

泉 マグリット。原田先生と言えば、マグリット

陽子 ……そうでしたね

泉 アルバム、見たんだけど……

木之内 ……

陽子 ……

泉 清水さん、載ってなかったわね

陽子 ……はい、転校したから

泉 そっか……緑ヶ丘中学ではね、一組、二組、じゃなくて、101、102って呼ぶの

陽子 ……そうでしたっけ

泉 ……でも、あなたもここに、いたのよね

陽子 ……はい

泉 じゃあ、そうなんでしょう

陽子 ……

   泉、唐突に木之内に、

泉 あなた、下のお名前は?

木之内 え……葵、です

泉 そう。いい名前ね。じゃ、私はこれで、失礼します

木之内 え?

泉 今から、三者面談なの

木之内 ……夏休みに?

泉 ……学校に来なくなってしまって。入学した時は本当に明るい子だったのにね。二学期からまた元気に来てくれたら良いんだけど……

木之内 ……そうなんですか

泉 ……教室で一人になってしまった生徒に、どういう声をかけたらいいのか、いまだにわからないの……あの子にも、誰か一人でも、友達がいたら良いんだけどね……友達は、一人いれば、充分なのよね

木之内 ……そうですね

陽子 ……一人もいなくても、大丈夫ですよ

泉 ……え?

陽子 寧ろ、友達がいるかいないかなんて、余計なお世話じゃないですか?そういう心配が、かえってストレスになるんですよ。逆に今の時代、「友達いない」って言う方が好感度高いくらいじゃないですか?

泉 ……そういう考え方もあるかしらね

木之内 ……でも「友達いない」って言えるのは、本当は友達いる人じゃないですか?

   間。

坂本 ……今はとにかくやり過ごして貰って

泉 え?

坂本 良い気分の時だけ、覚えといて貰えばいんじゃないですか?家でも、学校でも、一人でも、誰かと一緒でも、関係なく。後で思い出す時に、「あれ、あの時もそんなに悪くなかったのかな」って脳が錯覚してくれるから。昔のことなんて、うまく編集した者勝ちじゃないですか?

陽子 (坂本を指さして)正しい

坂本 記憶って、今に有効活用する為の物ですから

陽子 その通り。後で有効活用できない同級生なんて、全く必要じゃないですよ

泉 ……保護者の前で、そんな話していいのかしら

木之内 ……先生はただ、その子といる時に、そのままでいれば、いいんじゃないですか?

泉 そのまま?

陽子 ……原田先生みたいに?

木之内 ……恐らく

泉 ……ありがとう。じゃ、一条さんによろしくね

   泉、出て行く。

陽子 ……見せて

木之内 え?

陽子 アルバム

木之内 どうして……

陽子 いいから

   陽子、木之内の鞄からアルバムを取り出して、一クラスずつ、眺めていく。

坂本 ……え?

   陽子、あるページで手を止める。

陽子 本当の苗字は?

木之内 ……木之内です

陽子 葵は本名?

   陽子、アルバムを閉じる。

陽子 太ってた子が思い切り痩せて、肌荒れも治ってたら、誰にだって、そう簡単には、気づいて貰えないよ

坂本 ……え?

   陽子、アルバムを置く。

陽子 まだ、撮るんですよね?

木之内 ……はい

陽子 では、延長になるので、会社に電話してきます

   陽子、出て行く。

坂本 え……あの……

   玲奈が戻ってくる。

木之内 ……

   坂本、なんとなく気を使って、

坂本 あの……すいません、私も今のうちに、トイレに……

   坂本、出て行く。

13

   玲奈と木之内、二人きり。

玲奈 ……

   玲奈、置いてあるアルバムに目をやる。

木之内 ……

   木之内、見られないように、アルバムを鞄に入れる。

玲奈 ……あのさ

木之内 はい

玲奈 なんで私にオファーくれたの?

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