見出し画像

mixer ユーザー獲得施策と終了に至った要因/マーケティングトレースnote86/100本目

今回は7月でサービスを終了するマイクロソフト社のライブ配信サービスMixerです。Twitchと比較しながら書いています!

■概要

【企業名・サービス名】
Microsoft・Mixer
【リリース】
2016年1月(2017年5月にMicrosoftが買収してBeamという名称からMixerに変更された。
【ユーザー数】
6,500万人(2019年4月)
ユーザー層の大半が20代、30代の男性
【MAU】
Mixer:1,000万人
Twitch:1億人
YouTube Gaming:15億人
【配信者数(2019年)】
Mixer:69,000人
Twitch:1,500,000人
YouTube Gaming:750,000人
【説明】
ゲームのライブ配信プラットフォーム。配信者と視聴者の通信速度が爆発的に早く遅延が1秒未満であるため、視聴者がコメントをしたら即座に配信者の元へ届く。このインタラクティブ性がMixerの強みとしてあげられる。

だがMixerは2020年7月に閉鎖することが決まっている。
ということで今回はMixerがこれまでユーザー獲得のために行ってきた施策とユーザー体験を向上させる施策について記した後に、終了してしまう要因となったことについて考察していきたいと思う。

■Beam(Mixer)がMicrosoftに買収されるまでの流れ

2011年、当時13歳だったMattは自身でホスティングサービスを構築しMinecraftのゲーマー向けにデータサーバーを提供する会社MCProHostingを設立。幼い頃から"パソコンを解体"→"カスタマイズして組み立て直す"ことが趣味であったMattはMinecraftにハマる友達のために善意でパパッと作ったサーバーと会社であったという。

そして約3年でMCProHostingは60万台を超えるサーバーをホストし、会社の評価額が$500万規模の世界最大級のゲームサーバープロバイダーにまで成長した。(当時高校生)

事業が順調にスケールしていく中、YouTubeやTwitchなどのライブストリーミングサービスの配信者の動画を見て、インタラクティブの欠如という観点で配信者と視聴者の間に大きな壁があることに不満を感じそれらを解決したいと思うようになった。
具体的には以下のような不満だ。
①YouTube
当時のYouTubeはコメントすることはできてもライブ配信でないため、配信者とリアルタイムで交流することはできない。
②Twitch
Twitchはリアルタイムで交流できるが、配信者と視聴者との間に遅延がありすぎる。当時は30秒~1分程度の遅延があったそう。

これら2つのプラットフォームに不満を感じて配信者と視聴者の間の遅延がほぼ無いBeamを開発することを決意。

さらにフルリソースをこの事業に捧げるために高校を中退し、プロバイダ事業も終了しBeam事業に転換した。

BeamをWebサービスとして開発し、ベータ版リリースから90日後にTechCrunchに出場。そこで優勝し、マイクロソフト社が非公開で買収するに至った。

買収から翌年にBeamからMixerへ名称が変更した。

■ユーザー体験向上施策

【施策1】1秒未満の遅延

Mixerは他のライブ配信サービスとの差別化ポイントとしてFaster-than-Light」(FTL)というストリーミングプロトコル技術を用いた機能が挙げられる。FTLにより、配信者と視聴者間の通信が1秒未満の超低遅延を実現した。

初期はこの機能が動画配信者の間で大いに称賛され多くのユーザーを獲得することができた。なんとリリース初月のユーザー数は20,000人に至った。

【施策2】簡単な配信

X-BOX ONEを所有しているユーザーならば、配信時にX-BOXを立ち上げて所定のボタンを押せば10秒以内には配信を開始することができる。
X-BOXを持っているユーザーにとっては配信のハードルがかなり低い。

【施策3】パートナープログラムへの入りやすさ

パートナープログラムとは、Mixerが条件をクリアした配信者をパートナーと認めるもの。パートナー認定をもらった配信者は、広告収入など収益源を手にすることができる。

Mixerのパートナープログラムの入りやすさについてをMixerとTwitchを比較しながら説明する。
まずTwitchの場合、配信者の収益源は4つある。

①広告収入
②インセンティブ(視聴者数に応じて)
③有料サブスクリプション(チャンネル支援金的な)
④Twitch Bits(投げ銭)

①~③の収益源を設定するためには、Twitchからのパートナー認定をもらうことが必須条件となっている。
パートナー認定は、配信者が配信時に同時接続者数が75人以上になることでもらえる。

一方でMixerの場合、収益源は2つ。

①広告収入
②有料サブスクリプション(チャンネル支援金的な)

パートナー認定をもらう条件は、

・Mixerアカウント作成から2カ月以上経過していること
・1ヶ月に25時間以上の配信していること
・月に12日以上配信していること
・フォロワー数が2,000人以上いること

一般的にフォロワー数は同時接続者数よりも簡単に増加させることができると言われており「一般人の配信者でパートナープログラムをもらい易いのはTwitchとMixerのどっち?」という問いに対してはMixerが解になる。

■ユーザー獲得施策

【施策1】超人気インフルエンサーの加入

Ninja、Shroudというゲーム配信業界で最強のインフルエンサーの名前を聞いたことはあるだろうか。

Ninjaに至ってはYouTubeのチャンネル登録者数が2,000万人を超える空前絶後の超絶怒涛の配信者である。(サンシャイン池崎最近見ないっすね。僕めっちゃ好きなんですけど。サンシャイン池崎でnote1本書けます。)

そんなNinjaが2019年の夏頃にTwitchとの契約を取りやめ、Mixerに完全移籍した。そしてNinjaの移籍によって結果的に、Mixerのモバイルアプリのインストール数はアプリリリース時の2倍を記録した他、App storeの非ゲームアプリ部門のランキングで750位から1位にランクアップした。

ただ、NinjaがTwitchに在籍していたピーク時の同時接続者数が数万人であったのに対して、Mixerでは同時接続者数が5,000人となった。

■Mixerが終了する要因(Twitchとの比較)

まず各プラットフォームのユーザーの滞在時間に関してのデータを見て欲しい。このデータはCOVID-19によって外出自粛が続いた期間のユーザーの平均滞在時間の数値である。

他のプラットフォームが爆発的に成長したのに対して、Mixerは圧倒的に破れてしまった。

画像1

なぜこの期間に成長しなかったのか、そしてなぜサービスを終了しなくてはならなくなったのか、要因について考察していく。

【要因1】低遅延が当たり前に

現在はMixer以外のサービスも比較的低遅延を実現できているため差別化ポイントではなくなってしまった。

TwitchはMixer登場の当初は配信者と視聴者の間に30秒~1分程度の遅延があったが、現在では2~3秒と低遅延にすることができた。

【要因2】マイクロソフトアカウント必須という障壁(視聴者数をあげられなかった要因)

Twitchと比較してMixerは視聴者が圧倒的に少なかった。
Twitchの平均視聴者数は1チャンネルあたり26人であるのに対してミキサーの平均視聴者数は1チャンネルあたり6人。
これはMixerユーザーはマイクロソフトアカウントの登録が必須であることが挙げられると考えている。
具体的には好きな配信者の動画を見てコメントする際にマイクロソフトアカウントにログインしなければならず、そこのハードルを超えるユーザーが少なかったのでは無いだろうか。

特にモバイルアプリに関しては、マイクロソフトアカウントを持っている人は少ない。
私自身もMixerで配信者にコメントを打とうとした時にマイクロソフトアカウントを開設するように表示され、無意識にアプリを落としてしまった。

【要因3】配信者のモチベーション管理(配信者が増えなかった要因)

Twitchと比較してMixerは配信者を予想以上に増やすことができなかった。
両者にどのような違いがあったのか配信者に対して与える収益を軸に比較していく。

繰り返しになるが、前提としてTwitch配信者の収益源は、

①広告収入
②インセンティブ(視聴者数に応じて)
③有料サブスクリプション(チャンネル支援金的な)
④Twitch Bits(投げ銭)

Mixerの収益源は、

①広告収入
②有料サブスクリプション(チャンネル支援金的な)

(というのを再認識しておいてもらえればよりわかりやすいと思います。)

【有料サブスクリプション】
Twitch:

Twitchにパートナー認定されたチャンネルは有料サブスクリプション(視聴者からのチャンネル支援金)を得ることができる。この有料サブスクリプションは3段階の料金設定に分かれており、動画の視聴者数の規模に合わせて$4.99, $9.99, $24.99と段階的にもらえる金額が分割されている。
初期は$4.99から始まるのだが、チャンネルが成長するごとにその額は上がっていくため、配信者のモチベーションの要因になっている。

Mixer:
Mixerの場合も同様に、パートナー認定されたチャンネルに有料サブスクリプションという方法で収入源を与えているものの、額は$4.99のみで視聴者が多く付いてもその額は上がらない。たくさん稼ぎたい配信者からするとすぐに天井が見えてしまい物足りないと感じていたのであろう。

【インセンティブ制度の有無】

Twitchでは視聴数に応じてインセンティブで収益が入る。
一方でMixerにはインセンティブ制度が無い。

【投げ銭制度】
Twitchは投げ銭をする際に、Twitch Bitsと呼ばれるアイテムを購入して投げ銭することができる。Twitch Bitsは一括で好きなだけ投げ銭をすることができる。
一方でMixerは投げ銭(Mixer Embers)を購入することができるがMixer Embersは複数個投げることができないため、視聴者は投げ銭をする際に1回1回処理しなければならない。

大量の投げ銭を期待できるのはTwitchであるため、Mixerの配信者にとっては少し痛い点であろう。

これらの点もあって、ゲームの実力がある&稼ぎたい配信者達はこぞってTwitchで配信を開始する。

他にも様々な要因はあるであろうが、上記3つの要因が成長率を留めた主な要因になっているのでは無いだろうか。

■感想

学びとしては世界トップクラスの戦いは、技術力だけで差別化することは難しいのではないかということでした。マイクロソフトのMixerがリリース当時に、他のプラットフォームと比較にならないくらいの低遅延を実現しても、数年後にはAmazonのTwitchが他の方法で同レベルの遅延に追いつきました。

ここから、より素晴らしい技術で時代を先取りした時こそ、他社に技術で追いつかれる前に爆速でユーザーを獲得するマーケティング施策とより良いUXを提供することが大切であると学べました。

ご愛読ありがとうございました!

備考ですが、会社のHPがバージョンアップしました!たまに遊びに来てください!











この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
今日も1日頑張りましょー!
5
ここで海外マーケしてます。https://majisuke.com/