見出し画像

食べることは人に良いか?

食と健康の話題は、生きる上でほとんど不可避である。
そのため、関心が高く、様々な情報が世の中にあふれている。
私たちの世代は将来的に、ただ寿命を長くするだけでなく、いかに健康に長生きするか(健康寿命)が重要になってくる。ベッドの上でチューブに繋がれて何十年も延命される生き方はできれば避けたい。

では、健康な食事とはどのようなものか?
この話題にとても真摯に答えているのが、津川友介著「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」である。
この本の特徴は、とにかく一貫して、「エビデンスに基づく健康的な食事」について述べて点にある。

私が感心したのは、エビデンスの信頼性に関する記述が前半にある点。そして、後半にはインターネットで比較的信頼性の高い情報にたどり着くための方法を述べている点である。
エビデンスについては、エビデンスの強さと弱さ、医学研究におけるランダム化比較試験と観察研究の違い、そして、複数の研究結果をとりまとめた研究手法としてのメタアナリシスについてわかりやすく説明されていた。

さて、本書で述べられている健康的な食事とは何か?
端的にいえば、「魚、野菜、果物、茶色い炭水化物、オリーブオイル、ナッツを中心とした食事であり、赤い肉、白い炭水化物、飽和脂肪酸を避けたもの」ということである。
本書の内容はこれだけといえばこれだけである。残りは、これらの根拠をエビデンスに基づき丁寧に述べている。

ここで注意が必要なのは、健康についてを脳卒中、心筋梗塞、がんといった病気の発症率を低くし、死亡リスクを下げるという観点で評価しているということである。
もちろん、これらが中長期的には精神的な健康に影響するわけだが、食事という行為として精神的に健康かどうかについては述べていない。
そして、エビデンスがないことについては語れないのでその点も誠実でありつつ、物足りないと感じるかもしれない。

本書を読んで、エビデンスに基づく健康的な食事を実践することでおそらく総合的な死亡リスクは下がると考えられる。そして、それは人生の幸福に繋がるとも予想される。
一方で、本書でも触れられているが、子供や高齢者の食事に関するエビデンスは不十分なものもある。一般論としては、上で述べた指針に基づき食事を摂ればよいが、カロリーの摂取目安などは年齢によって当然異なってくる。

リスクを理解した上で、それでも食べたいものを食べるという生き方こそが幸福な人生かもしれないと私は思う。
残念ながら、美味しいものは体に悪い。むしろ、体に悪いからこそ美味しいのかもしれない。
だからこそ、リスクと引き換えに口にする生クリームたっぷりのショートケーキはとても美味しく感じるのだと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?