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『最高の体調』 不安への対処法を進化論から知る

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『最高の体調』は、よくある啓発本や健康本の類とは違う良書だ。進化論をベースとしたテクニックやアイデアを紹介している。

人間の様々な感情というものは全て進化の過程で生き残るためにできていった機能であるということ。しかし生活様式の急激な変化にすぐに対応できるほど、遺伝子はすぐには変化していかないため、豊かになったはずの現代でも様々な精神・健康的な問題が生じているという話だ。

この感情はこんな理由で生じるのか

と知ることでスピリチュアルな自己啓発に頼らずとも自分のメンタルをコントロールできる。

その中で特に「不安への対処法」がとても興味深かったから解説していこう。これは音楽家にも有用な説だ。

不安という感情の機能

現代人の一番の悩みは「常に将来に対するぼんやりとした不安」があるということだろう。そもそも「不安」という感情は何のためにできてなぜ重大な悩みとなっているのだろうか。

不安という感情は、狩猟採集時代に「その場での危険を感じ取り生き残る」ために発達した機能。そこの茂みに猛獣が潜んでいないか、襲われる心配はないか、という一時的なものだ。

しかし農耕が始まってから人類は「来年作物が取れるか」という状況になったことにより「未来」という概念が生まれた。

その時に感じる未来への不安はその場で危険を感じた時と同じものとして身体は反応する。しかし未来への不安に対する処理能力というものはまだ人間には備わっていないのだ。

人が脅威を感じると偏桃体からストレス物質やアドレナリンが分泌されるが、未来への不安の場合はそれが常に出続けてしまうということになる。

それが「ぼんやりした不安」の正体であると筆者は語っている。

アドレナリンやコルチゾールは戦闘する時に一気に緊張を高め、心拍数と集中力をあげて危機が去ったらそれらの値を下げて落ち着くという仕組みになっている。

仕事を先送りしたりすると、脳がパニックを起こしずっとコルチゾールを分泌し続けてしまい身体がストレスホルモン中毒状態になってしまうということだ。なるべく面倒なことはすぐに片づけることが大切だ。

短期的に終わる急性のストレスをさばくのは得意だが、現代の慢性的なストレスに立ち向かうようにはできていないということ。

このことを知るだけでも人前でスピーチやプレゼンをしたり演奏をするときに役立つ。

緊張と興奮は同じ

そもそも「緊張」と「興奮」の感覚は、どちらも人体の反応という点では変わらない。それは脳の解釈次第だけの問題。

猛獣に襲われそうな時と

美味しそうな獲物を見つけた時

両方すぐに行動を起こさなければいけないという点で同じだからその2つの感情には別々の機能が備わっているわけではないということだ。

ということは「緊張」というものは自分の考え次第でコントロールすることが可能ということだ。

緊張にはリアプレイザルが有効と言われている。
人前に出る時、戦闘状態と身体が錯覚してしまい大量のアドレナリンがでる。その身体の反応に恐怖を感じてしまうと(トラウマなどから)能力を発揮できなくなってしまう。

しかしそれを「興奮する、楽しくなってきた」と自分に言い聞かせるだけでストレスから変換できる。緊張を無理やり鎮めようとする必要はないということだ。その身体の作用が自分をだめにする原因ではないということを知ることが重要。

逆にポジティブな方向に変えることができれば平常時より高いパフォーマンスをすることができる。

「私たちは自分の感情をコントロールし、意図的に影響を与えることができる。自分のストレスをいかに言葉や思考に変換するかで、どんな感情も再構築できるのだ。」

人がネガティブになりやすい理由

「ネガティブな思考は絶対にいけない」とどの本にも書いてあるが、やはり人は悲観的にものを考えやすい。

「自分はネガティブな人間だ…」とさらに悲観してしまうかもしれないが、人間はそもそもネガティブな感情を持ちやすいようにできている。

「この食べ物には毒があるかもしれない」「ここの茂みには猛獣が潜んでいるかもしれない」など最悪の事態を想定して危機回避をするために備わっている機能。だから悲観することはない。そういう仕組みなのだ。

だがそれはやはり短期的なことのための作用だから、現代のように持続的になってしまうと不都合が生じてくる。

大人数とのコミニュケーションが苦手

現代は普通に生活していてもSNS上でも接する人数というのはとても多い。しかしFacebookに1000人友達がいても実際に頻繁に連絡を取る人数は少ないだろう。クラスやコミニティの中でも3~5人くらいのグループになるはずだ。

多くの人と人間関係を持つのが苦手でも「自分は社交性がない」と悲観する必要はない。人間は元々大人数と仲良くなる仕組みにはなっていないのだ。

狩猟採集の時代は農業をしないから大人数の社会というものは存在しなく、狩りを少数の仲間+家族という小さなコミニュティが基本だった。だから友達が少ないほうが生き物としては普通で、その方がストレスは少なと言える。

目標と価値観を持つことの違いを知る

不安についてしることで『目標』と『価値観をもつこと』の違いを知ることが大切だと著者は述べている。

目標は達成したらそこで終わってしまい、成功と失敗という複数の未来が想定されることで不安が生じる。
価値にもとづく行為は時間の心理的距離を〝いまここ〟に収束させ、未来への不安を消し去る。

自分で例えるならば、「なぜ音楽をするのか」という根本的なことの意味を考えることになる。

例えば「オーケストラに入る、オーディションに受かる」という目標を立てていた場合、叶ってもそこで終わらない。しかし結局その後にもたくさんの選択肢が生まれてくるわけだ。「もっと大きいオーケストラに入る」はいったら今度は「首席になる」など目標を軸に動いていると、叶ったとしてもさらに新たな目標が必要になり常に不安が生じていく。

それが叶わなかったときのストレスや不安も大きなものになる。

しかしそれを

「人を喜ばせるために音楽をする」

「音楽を通して社会とのつながりをもつ」

といった価値観として考えていればそのような不安が生じることはないわけだ。価値観を持って生きていれば、「音楽で稼いだお金だけで飯を食う」といったことに固執せず自分を苦しめずに生きていけるだろう。

『最高の体調』by 鈴木祐

今解説したのはこの本の中のほんの一部分で、それ以外にも健康や精神に関する様々な考察が記されている。kindle Unlimitedの読み放題にも入っているから登録していない人でも30日間お試しで無料で読むことができるからおすすめだ。

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