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エアライン業界でOAインストラクターをやってたときのお話

2022年の秋まで日系航空会社グループでOA教育を担当していた。

派遣(無期雇用型)だったけれど、わたしのインストラクター人生でいちばん伸び伸びと仕事をさせてもらった7年半であった。
わたしは日本一しあわせなインストラクターだと思っていたもの。
あんなにもチョー楽しくて、一生懸命になれて、
毎日熱意をもって働いてた日々はとっても素晴らしい日々だった。

わたしがそのエアラインで働くようになって間もなく気づいたのは、
この業界のITスキルの問題。
だいぶん不足している印象をもった。
正しくはグループ会社・部署によってスキルの差が非常に大きい、いや、これはあまりにも大きすぎるぞって感じた。

航空会社は現場で働く人が多い。
現場とは、乗員さん、CAさん、グランドスタッフさん、グランドハンドリングの人、整備さん、機内食の工場で働いている人・・・etcだ。
そういう業種の人たちはがっつりパソコンを使う仕事というのがほぼないから、パソコンやIT系には慣れていないということなんだろうと推測した。
パソコンを常時駆使する仕事をしている人たちとは必要なスキルが違うということ。

わたしはそれまで様々な企業や官庁などで研修を経験してきたが、業種や職種がこれほど幅広い組織は初めてであり、ITの知識レベルもこれほど差が大きいのも初めてだった。これはこの業界特有で、きっと他の航空会社でも言えることなんだろうと思った。

が、それを「業界独特のものだから、ITスキル低くても仕方ないよ」ってのは違う。ボリュームは少なくともパソコンを使うシーンはあるし、現場ではタブレットで専用アプリを使うことが多いし、基本的なITスキルがないと皆んなが困るのである。
また航空業界も他の業界と同じように配属換えや出向がある。今までパソコンを使ってなかった人たちがデスク業務などに配置換えされるってことがあるのだ。
わたしが一番衝撃だったのは、とても有能なCAさんがデスク業務に配属転換され、パソコンがどうしても使えなくって自信をなくして退職されたという話を聞いたときだ。それも一人二人の話ではなかった。

パソコンごときが(言葉悪いけど)ITごときが(ほんと言葉悪いけど)
それまで頑張ってきた人たちの自信を失わせるなんてなんてことだと思った。実際そういう人たちにちゃんと知識をつけてもらうための教育施策が全然足りていなかった。定期的に初心者向けの研修はやっているといっても参加できる人数は限られていて、ほとんどの人は受講ができない。
多くの組織でありがちな「いちおうやってます」な教育しか施されていなかった。
そこで、わたしが全部変えたる!と、めちゃくちゃ熱いスイッチが入ったのである。派遣なのに。

そして「できる人たち向け」の研修よりも「初心者向け」研修をどんどん増やした。オンライン研修ではなく、つまづいたいた人をなる早でサポートできるよう対面研修にこだわった。『パソコンが嫌いで嫌いで仕方ない』って人たちほどウェルカムです!ってアピールした。研修の機会も少なかったのを毎月やるようにした。それまでのカリキュラムも教材も全部作り変えて、エアライングループの研修としてすべてを構築しなおした。
そして研修に行くことを躊躇している人にはホームページや自習用教材を公開して、ひとりで好きなときに勉強できるようにもした。

そうやって次々と着手していったが、もちろんひとりでやってたわけではない。会社のいろんな人たちに応援してもらった。自由にものを言いすぎて上司や同僚を悩ませてしまうことも多々あったはずだが、いろんな人に賛同してもらって協力してもらって、ひとつずつ実現することができた。

そういえば「派遣さんはそこまでやらなくていい」なんて一回も言われなかった。アイデアも意見もいつも真摯に聞いてくれた。伸び伸びとお仕事させてくださった会社やチームメンバーには今でも感謝の気持ちでいっぱいである。

そして、わたしが出来得るものは派遣されていたこの7年半で全部やり切ることができた。

今こうやっていろいろ思い出しながらも、あーめっちゃ楽しかったなあ、ありがたかったなあ、インストラクターでよかったなーとほんとに思う。もともと飛行機や空港が大好きだったので航空業界で働けるなんて夢のような経験だったし、その大好きな業界で働いている人たちのためにいろんなことができて本当楽しかった。
気が付いたらもうあと4年半で還暦やがな、と思うけど、ほんと年齢とか考える暇もないくらい充実た毎日だった。

そしてその経験やCAさん達はじめたくさんの人との出会いがわたしの次の目標を作らせてくれて、今に至っている。

エアライングループという大きな組織だからこそできたことはたくさんあるが、逆に大きな組織だからこそできなかったこともある。
わたしが次にやろうとしているのは「どうしてもできなかったこと」だ。

最後に伝えたい。
ありがとう。航空業界。
ありがとう。出会ったみなさん。
わたしが最後に所属した組織がみなさんのところで、本当によかった。
みなさんのおかげで、まだまだわたしは飛びます。飛びます。
(繰り返してみた)


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