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家とは違うオレンジでテロテロのお店ナポリタンを自宅でも貪りたい!ので!元板前が全力でレシピを考察した!!!

僕の居た和食の世界では特に顕著ですが、料理の世界は職人さんの勘や経験を重視する風潮が強い業界なんですよね。

もちろん勘も経験も大事ですよ、プロですもの。
でもね、ちょっと偏り過ぎてると思う元板前のともちーでございます。

料理って言葉は『おしはかる』『ことわり』と書くように、科学です。
当然技術や慣れが必要なこともありますが、9割は理屈で成り立つはずのものなんです。

という訳で今回の本題、皆さん、ナポリタンはお好きですか?

実はナポリタンってイタリア発祥じゃなくて和製洋食なんですよね。
これは元板前の出番に違いない。

実はイタリアにもナポリタンに似たナポレターナというトマトソースを絡めたパスタがあるんですが、僕らの知ってるオレンジソースの甘くて美味しいアレとは別物だったりします。気になる人は調べてみてね。

しかしこのナポリタン、困ったことにお店で食べる味と自分で作った味があまりにも違う。なぜか違う。
そんな悩みを抱えている人も多いことでしょう。
これは元板前の出番に違いない。

でも自分で作ったナポリタンって、なぜかお店と違くなるんですよね。わかる。
自分で作ると『やあ、ケチャップだよ!』って感じなんだけど、お店のナポリタンってとてもトロトロでオレンジな油が絡みついてて、何とも言えないあま味とうま味が…

あれを自宅で再現出来たら最高ですよね、人目を気にせず貪れたら最&高ですよね。

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という訳で、ご家庭にある調理器具だけで喫茶店で食べるナポリタンを作る方法と、科学的に何が大事なのかを解説させて頂こうかと思います。
みんなも自宅でこんなこと、やっちゃおうぜ。

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オイシイヨ?

▼他の料理noteもよろしくネ

●誰でも出来るお店のナポリタンの材料一覧

・絶対必要な食材
パスタ麺 圧倒的太麺正義、少なくとも1.7mm以上、個人的には2mm以上の極太
ケチャップ こいつが無ければ始まらない
油 無難に行くならサラダ油、オススメはオリーブ×バター、詳しくは後述

個人的には上記の材料のみで、正しい調理手順を踏んだ具無しナポリタンを一度でいいから食べてみて欲しい。
きっと君の中のナポリタンがひっくり返る。

・あったら嬉しい定番具材
ソーセージ 皆大好きイノシン酸、ベーコンやハムでもOK
マッシュルーム 生でも缶でもOK、縁の下の力持ちグアニル酸(とメインのグルタミン酸ナトリウム)
玉ねぎ 皆大好き野菜の甘味、あと硫化アリル
ピーマン 苦味が苦手という人も是非一度試してほしい、ピラジンの威力は甚大

・お好みでトッピングしちゃえよYOU
卵 ぷるぷるの白身で包んだトロトロのオレンジソース、至高
チーズ 食道楽界の沼of沼

●ナポ初心者はここから、具無しナポリタン

あくまでナポ初心者に実体験してもらう為のお試しメニューなので、詳しい解説は省きます。詳細は後半で。


まずは何より先に麺を茹でます。

・ざるに上げてお湯を切る
・流水(または氷水)で揉み洗い
・水気を絞って、少量の油を和える

以上の手順を踏んで理想は1日放置プレイ。
時間がない時でも一番最初に茹でで出来るだけ時間を稼ぎましょう、太麺は茹でるのにも時間がかかる。


ケチャップをフライパンで炒めます、親の仇かってくらい炒めます。
目安としてはこしあんみたいになるまでひたすら炒めます。

焦がさないように注意しましょう、コツはしっかりテフロン加工されたフライパンとゴムベラ。


こしあん状態になったケチャップを油で伸ばして、滑らかになればお店で食べるオレンジソースになります。
茹でておいた麺をフライパンにシューッ! 超エキサイティンな素ポリタンの完成です!

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個人的には目玉焼きトッピングがジャスティス、動物性たんぱく質との相性は異常。

『家のナポリタンが何かお店のナポリタンと違う…』
という人はぜひ1度この素ナポリタンを食べてみて欲しい、今までとの違いがはっきりとわかります。
みんなが想像してる5倍くらいはうま味が特濃で、脳汁ドバドバ物ですよ。

ちなみにこのナポリタン、僕の友達のイタリア人に食べさせてみたことがあるのですが、食べる前は

(全く、これだから日本のにわかパスタは…)

みたいな生暖かい目をされていたんですが、食べた途端に

『なんだこれ、クソうめえ!何でこんな!!』

って逆ギレされた事があります。やっ↑たぜ↓
本場のパスタ食ってきた奴が逆ギレする美味さ、たぶんアフリカで日本より美味しいみそ汁出されたような感じなんでしょうね。知らんけど。

●本気で作るベーシックナポリタン


まずは何より先に麺を茹でます。
何故ならナポリタン用の麺は茹で上げただけじゃ完成しないからです。

茹でたての麺は歯ごたえがあって美味しいけど(詳しく知りたい人はアルデンテでググろう)、ナポリタンに必要なのは歯ごたえじゃなくてモチモチ食感。
茹でたての歯ごたえの正体は麺の表面と芯の水分量の差なので、これを満遍なく水気を持った状態にする為に冷蔵庫で放置プレイします。

ただし、茹で上げたまま保管しているとひと固まりになってしまうので
・ざるに上げてお湯を切る
・流水(または氷水)で揉み洗い
・水気を絞って、少量の油を和える
という手順を踏みましょう。

ひと手間に感じるかも知れませんが、まとめて茹でて小分けに冷蔵保存すると日持ちもするのでトータルだと省エネになります。

『俺はナポリタンにも歯ごたえが欲しいんや!』

という人も、騙されたと思って1回試して欲しい。
あ…これ、お店の奴だ…ってなります。

ナポリタンだけじゃなくて、カルボナーラを作る時も同じ工程をやってあげると食感が割と日本人好みのモチモチカルボナーラになりますよ。閑話休題。


ナポリタンに欠かせないオレンジソースの元を作りましょう。
ケチャップを炒めていきます。コツはテフロン加工のしっかりしたフライパンとゴムベラ、焦がさないようにだけ注意しましょう。
この処理をするだけで一気にお店ナポリタンに近づくけど、焦がしてしまうとどこに出しても恥ずかしくない残念賞な味になってしまうので本当に注意しましょう。

『ケチャップがこしあんみたいになる…?』

って人が多いと思うので、ちょっと画像を用意しました。

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今回用意したケチャップは1リットル。

慣れてきたらケチャップ数本をまとめて炒めておいて、小分けに冷蔵・冷凍保存しておくとナポリタンに限らず色んな料理に転用できるので個人的におすすめです。

個人的によくやるレシピは
・チキンライス
・オムライス
・ミートソース
・カレー
・炒め物(中華のイメージ)
・酒の肴
などなど、幅広く使ってます。

ただし冷凍保存しようと思って量を増やせば増やすほど時間がかかるし、油を使ってしまうと冷凍した時に油が分離して固まってしまうので大量作成の時は油が使えません。
これが地味に面倒くさい。

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根気強く炒め続けていくと、水分が飛んで色が濃くなって、だんだんこしあん状態に近づいてきます。


オレンジソースの素が出来上がったら、使う分だけを残して油で引き延ばしていきます。
保存する分は器に移して粗熱が取れるまで放置してから、ジップロックなどに詰め込んで冷凍庫にGO

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こしあんケチャップを油で引き延ばしているの図。

一気に油を大量に入れてしまうと、こしあんがカラッと揚がってしまうので最初は少量ずつ、ある程度ケチャップと油が馴染むまでは我慢です。
ある程度ケチャップと油が馴染んだら油を継ぎ足してソースの濃さを決めつつ、具材を投入して炒めていきます。

Tips.
因みにお店のナポリタンと、ご家庭のナポリタンの違いで大きいのは主に2点。
ひとつがケチャップの下処理、そしてもうひとつが油の量です。
基本的に一般人の思ってる2~3倍の油を使ってると思っていい。僕も初めて喫茶店でアルバイトした時は油の量にドン引きしたもんです。

具材の下ごしらえは
ソーセージ 斜めに切って表面積を増やす
マッシュルーム 薄くスライス、スライス缶で買ってくると非常に楽
玉ねぎ 串切りorスライス、食感のお好みに合わせて
ピーマン 5ミリ程度にカット、半円状にすると見栄え良し

まずはソーセージ、玉ねぎを投入。
ソーセージにジャンキーな焼き目が付いて、玉ねぎが半透明になって、オレンジ色のソースと絡まり合うまでじっくり加熱します。
※ピーマンはまだ入れません、要注意。

マッシュルームは小さいこともあって、ソーセージ&玉ねぎと一緒に炒めていると火が通り過ぎてしまいます。ある程度タイミングを計って投入してあげてください。

ピーマンは麺の直前くらいにぶち込みます。
なぜならピーマンを入れる理由は彩りも大切だけど、何よりピラジンという食欲増進効果のめちゃくちゃ高い成分が目的なんですが、こいつが亜音速で気化してしまいます

ピーマンは麺の直前です。直前です。


1食分だけ作る場合でオレンジソースの素がストックされてないなら、最初にケチャップと少量の油を混ぜて炒めてしまいましょう。
その場合は適時油を差しながら炒めて上げるとヘラにくっつかないし、焦がし防止にもなるので難易度も面倒くささもグッと下がります。

ただし火力が強すぎると油とケチャップの水分でバチバチ跳ねるし、何よりケチャップがカラッと揚がってしまうのでそこだけ注意。

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画像くらいに煮詰まって&油と馴染んで来たら、具材を投入しつつ油を継ぎ足して濃さを調整していきます。それ以外の流れは一緒です。

本場イタリアンのパスタでは麺を炒めてしまうのはタブーですが、これは和製洋食のナポリタンです。知ったこっちゃないのでしっかり全体を絡めていきましょう。

絡めていくにつれて洋食屋さんや喫茶店で見るあのオレンジ色に変わっていきます。
全体に均一にソースが絡まったらお皿に盛りつけて完成です。

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お好みでチーズや目玉焼きをトッピングしても良し、オシャレにパセリを添えてもいいですね。
繰り返しになるけど個人的にはたまごトッピングがジャスティス、動物性たんぱく質との相性は異常。


●料理は科学、詳細解説

料理って言葉は『おしはかる』『ことわり』と書くように、科学です。
当然技術や慣れが必要なこともありますが、9割は理屈で成り立つはずのものなんです。

単純に美味しいレシピを求めているだけならネット上に幾らでもあるし、本屋さんにもレシピ本は無数にあります。
でも僕の書いているレシピはちゃんと美味しい物の作り方とその理由を『理解』してもらうのが目的なので、付いてきてもらえるとおじさんは嬉しい。

そしてナポリタンを作って、食べて、美味しいと感じて、そのうえで僕が知って欲しい、理解して欲しいのは味の相性なんだ。
味というのはそもそも舌にある『味蕾』と呼ばれる組織の中に存在している『味覚細胞』が味を感じ取っています。
この味覚は加齢、ストレス、亜鉛不足など色々な要因で低下するのが分かっていますが、特に甘味と塩味は感じ取れなくなりがちです。

そしてこの味覚、甘い、辛い、酸っぱい、苦いなど色んな味がありますが、それぞれに相性があります。

例えば、スイカにお塩(甘味 × 塩味)
例えば、フルーツカクテル(苦味 × 酸味)
例えば、日本人の求めるうま味成分(グルタミン酸 × イノシン酸)

これらは言ってみれば、相乗効果を生む相性です。
単体でも成立しているけれど、掛け合わさる事で味をより強くする組み合わせです。

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