【徹底分析侍ジャパン】大谷の前を打つ男近藤の役割とは

 2023年3月22日、侍ジャパンが世界一に輝いた。大会MVPの大谷翔平は、投打に大車輪の活躍であった。本記事では、そんな大谷の前を打つ男、近藤健介の役割について取り上げたい。
 近藤は今大会、全試合で2番を勤めた。従来の2番バッターは、バントやエンドランなどの小技が求められ、自分がアウトになってもランナーを塁に進めるというのが役割である。一方で、昨シーズン近藤が記録した犠打は1つであり、従来の2番バッターとは大きくタイプが異なる。では、なぜ、栗山監督は近藤を2番に据えたのだろうか。筆者は、2番近藤には、2つのメリットがあると考える。
 2番近藤の1つ目のメリットは、大谷、吉田にランナーを置いた状態で回すことができる、ということである。近藤の最大の長所は出塁率の高さであり、今大会の出塁率は脅威の5割である。近藤の出塁率が5割であるということは、2回に1回は後を打つ大谷にランナーを置いた状態で打席が回っているということになる。また、1番を務めたヌートバーも出塁率が4割を超えている。前述のように、従来のような2番バッターであれば、1番のヌートバーが塁に出た後、バントや進塁打などの作戦がとられるケースが多かったかもしれない。しかし、今大会、近藤は犠打0であり、強攻策で1,2塁を作るケースが多く見られた。このように、1,2番共に出塁率が良く、大谷は大会通して非常に警戒されていたため、チームトップの10四球を選んでいる。このことから、主に4,5番を務めた吉田の前に複数ランナーを置いた状態で回すことが出来た。このことが、吉田が大会新記録となる13打点を記録する大きな要因となった。
2つ目のメリットは、下位打線から始まったイニングでも得点しやすいということである。当然であるが、下位打線は上位打線に比べて打率や出塁率が低い選手が並ぶ。そのため、下位打線から始まるイニングは、アウトカウントが進みかつ、ランナーも少ない状態で上位に回っていく。そのため、一般に下位打線から始まるイニングでは得点が期待しづらい。しかし、ヌートバー、近藤と確率の良いバッターが1,2番に並ぶ侍打線では、連打が期待することができ、下位打線から始まるイニングにおいて得点の可能性を高めた。このことは、中野がチーム3位タイの6得点を記録していることが証明している。中野はスタメン出場2試合(韓国戦は途中出場ながら4打席に立っている)で共に8番バッターであった。出場試合が少なく、8番に入った中野がチーム3位タイの得点を記録しているということは、出塁した中野を高確率で1,2番が返しているということである。
 ここまで述べてきたように、2番に近藤が入ったことで、侍ジャパンの得点力は大きく向上した。3月31日にプロ野球が開幕するが、贔屓チームの2番バッターの役割に注目して観戦すると野球がさらに面白くなるかもしれない。
 
 

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