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学校で民主主義をどのように学べるのか?

今私は国際バカロレアの認定校であるサニーサイドインターナショナルスクールで小学5/6年生の担任をしており、概念型探究をどのように実践しているのかをまとめていけたらと思います。

今回のテーマは「民主主義」です。「そもそも学校とは何のためにあるのか?」を考えてみると、様々な考え方があると思います。今回は「民主主義」をテーマにまとめていくので、私が軸においている苫野一徳さんの考え方を最初に紹介します。学校教育の使命と方向性~哲学の視点から~【後編】の中で、苫野一徳さんは学校教育の最上位目的について次のように述べています。

これからの学校教育において変えていくべきことの3点はいずれも、「自由の相互承認」の感度を高め、民主主義を学ぶ場とすることが最上位目的です。学校にかかわる当事者同士で対話を重ね、「学校は民主主義を学ぶところだ。自由に生き、自由の相互承認ができるようになるために学ぶ場所だ」と、皆が納得することが最大の推進力です。「そもそも学校は何のためにあるのか」を常に問い合うことを中心にした、対話の文化を学校の中につくりたいのです。その文化や仕組みをつくることができれば、おのずと前述の3点のことが実践され始め、見違えるように学校が変わっていきます。

参考:学校教育の使命と方向性~哲学の視点から~【後編】(リンク

・ エッセンシャルアグリーメントをつくる

私の学校でも、民主主義の感度を高めていくために、様々なアプローチをしています。まずは、身近なところで言うと、学年の初めには、クラスで学級目標ではなく、エッセンシャルアグリーメントを決めます。これは、守らなければいけないもの(義務)ではなく、クラスの中で大切にしたい行動や考え方を示したものです。教員の役割は、学年の発達段階にもよりますが、子どもたち自身が自分たちで決めていけるように、必要に応じてファシリテートすることです。そして、アグリーメントをクラスで決定するときは、一人一人の合意をとることを大切にしています。

詳細はこちらのnoteにまとめています。

・ UoI 「政治」のユニット(第4学年)

子どもたちの制作した選挙ポスター

この学校のカリキュラムでは小学4年生で「政治」をトピックに学習を行います。政治というものがどういうものなのか、何も分からないまま「政治とは何のためにあるのか?」「政治と私たちの暮らしはどのように繋がっているのか?」について税金、選挙、市議会、国会、内閣等の事実的知識をおさえながら、学習を進めていきました。最終的には、子どもたちに模擬市議会議員になってもらい、町の人にインタビューを行い、自分たちでマニフェストを制作し、校内や保護者コミュニティで選挙活動を実施しました。被選挙権の年齢も自分たちで決定する等、政治についての理解を深めていきました。

・ UoI 「差別/偏見」のユニット(第5/6学年)

子どもたちの制作物

5/6年生の最初のユニットでは「差別や偏見」をトピックに学習をしていきました。「差別や偏見」と聞くと、道徳的な要素も含まれているのですが、ユニットの中では事実的知識として世の中に起きている様々な差別や偏見の事例をリサーチすることで「差別や偏見がなぜ起きるのか?」「差別や偏見とコミュニケーションはどのように繋がっているのか?」について理解を深めていきました。ユニットを通して、身の回りに起きている偏見や価値観や考え方の違いによって起きるミスコミュニケーションの事例にどのように向き合っていくのかを考えていくための共通言語をつくることができました。

・ 専門家とのコラボ授業「差別について考える」(第5/6学年)

出前授業の様子

この専門家とのコラボ授業では、「人権」をテーマに、事例としては男女間にある差別や偏見がもたらしている影響を政治家の男女比の割合を事例として考える授業を行なってもらいました。
今の日本の社会でも政治家の男女比は、男性の割合が高く、女性の割合が低くなっている現状があります。この現状に対して、「なぜ性別に関係なく被選挙権、選挙権が平等に与えられているのにも関わらず、政治家の男女比にここまで差が起きてしまうのか?」「この問題を解決するためにどのようなアイデアがあるのか?」「解決策の1つとして、もし男女の枠をそもそも平等にすることについてどのように考えるのか?」これらの問いについて、ディスカッションを挟みながら考えていきました。子どもたちは、最初は男女の枠を平等にすることにポジティブな反応でしたが、ネガティブな側面についても事例を元に考えていきました。
最終的には、社会で起きていることと身の回りで起きていることを繋げることを考えていたので、学校内の「共有スペースであるグラウンドの使い方」をトピックに考えていきました。5/6年生の中では「今は、4年生との問題は解決したので、うまく4,5,6年生で使えている。」という考えが共有されました。そこで、「1,2,3年生の実際の声はどうなんだろう?」「実際に1 ,2,3年生の声を聞いたことがある人っているかな?」と呟き「これって、自分たちの思い込みだけで今の状況が生まれているとすると、先ほどの問題と共通することがあるんじゃないかな?」「じゃあ、どのようにすると1-6年生までが気持ちよくグラウンドを使えるんだろう?」この問いについて考えていきました。人権問題の難しさは、無意識な行動の結果差別や偏見が生まれてしまっているところにあります。この現状に対して、子どもたちが、学校内で学んだことを活かして、アクションを起こせる機会をつくっていけるのかが重要だと思いました。

・ 今後の展望「生徒会の発足」

これは、今後取り組んでいきたいと思っていることです。私たちの学校では、子どもたちが学校の文化をつくっていくことを大切にしているので、新入生が入ると、高学年の子どもたちが新入生のサポートを行います。そして、下学年の子どもたちは上級生をみて、状況の中で学んでいきます。今の学校にも、上級生が下級生をサポートする機会は日常の中にあるのですが、組織として学校の文化やシステムをつくっていく機会がない現状です。「そもそも生徒会は何のためにあるのか?」という根っこの部分を大切にしながら形骸化しない子どもたちが自治する仕組みをつくっていけたらと考えています。学校で学んだことをアクションにする機会をつくることで、教科で学んだ知識やスキル、考え方を活用して、教科の枠を超えて、日常生活や社会の中で転移(アクション)できるところまでデザインできるといいなと思います。

今回のnoteでは「民主主義」についてまとめてみました。公立であっても、私立であっても、オルタナティブな学び場であっても、民主主義を学べる貴重な機会になります。大人が全てを決めるのではなく、少しづつ余白をつくり、子どもたちも学校づくりに意見が出せる対話の文化を学校の中で醸成できる機会をつくることに子どもたちとチャレンジできたらと思いました。

いつも読んでいただきありがとうございます。

moimoi!

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