『「砂糖の世界史 」(岩波ジュニア新書) 川北 稔 』を読んで

「砂糖の世界史」(岩波ジュニア新書) 川北稔を、読んだ。(正しくはオーディオブックとして聴いた。)

タイトルこそ、砂糖とかいてあるが、ヨーロッパの繁栄、特に大英帝国と黒人奴隷の歴史であった。砂糖の歴史において黒人の役割は何か。砂糖を精製するには、大きなプランテーションと多くの労働力が必要となり、奴隷として黒人をアフリカから南北アメリカ及びカリブ海の植民地に安価な労働力として使用した。歴史に出てくる三角貿易である。ヨーロッパを出た船が、アフリカで黒人を奴隷として買い、黒人奴隷を連れて南北アメリカやカリブ海の植民地へと向かう。安価な労働力として使い、そこで砂糖を乗せてヨーロッパに持ち帰る。砂糖は、サトウキビから作られるが作物として熱帯、亜熱帯でなければ育たない。ヨーロッパの気候では育たないため熱帯、亜熱帯の植民地を必要とした。多くの黒人奴隷がアフリカ大陸から移ったことにより植民地に何が起きたのかを少し述べていきたい。

世界商品によるモノカルチャー社会となってしまった。特にカリブ海の島では、サトウキビの生産のみが経済を支えてしまう状況になり、他の産業が生まれるような土壌が全く育たなくなってしまった。また、白人による統治が長く続いたことからも、独立を果たしてもハイチのように貧困である国も少なくない。ヨーロッパによる植民地化により今でも、自立できていない状況にあると言える。

原住民の減少や絶滅。黒人奴隷だけでなく、白人の管理者も移住することにより、植民地にはこれまで存在しなかった感染症が原住民に広まった。南アメリカのアステカ王国は天然痘によって多くの死者を出したと言われている。またカリブ海にはすでに絶滅した種族もいる。ヨーロッパが砂糖という世界商品を求めなければこのような結果にはならなかったかもしれない。

こうしたヨーロッパからの奴隷船に乗り、植民地へ渡った黒人が基本的な人権を得るのに何世紀もかかった。そして今日のBlackLivesMatterに続く始まりである。ルネッサンスを得て、科学的な強さ(拳銃など)によって、世界を圧倒したのは、確かである。そして植民地とした国で統治者と奴隷の関係が始まった。どんなに平等を訴えても、それが実現できない中でのこの騒動である。新型コロナウイルスによる失業なども相まって、世界的にどう落ち着きを見せるのか分からない。その暴動には数世紀も昔の奴隷貿易と砂糖のプランテーションがあることをこの本は知らせてくれる。

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