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【夏と云ふもの…】世人を連れ去りて

昔、医者と話してて言われた。
人がよく亡くなるのは晩夏だと。

遠縁の「おじ」が今朝、死んだそうだ。
95歳で、母と同郷だった。

遠い昔に聞いた話では、うちの(母方の)婆さんの従姉妹が、その家に嫁に行ったそうだ。だから遠縁。母は私と同じく耳が悪かったが、手に職を付けようという意向で、当時東京で洋裁屋をしていた「おじさん」に弟子入りした。丁稚みたいなものだ。

「おじさん」は小さい頃、私のことをよく可愛がってくれた。父も母も中卒の時代だったから、その「おじさん」は父を説得して私を大学まで行かせてくれた。色々お世話になった。時代に適応しつづけてた人だった。

けれど、大人になるにつれ「おじさん」のおかしな所が見えてきた。父の話、母の話をまとめてみても。
父からは結婚のことから家を建てるとき、父方祖母が亡くなったときなどに、介入された。
母からは20年働いても、月5万しか貰えなかった。母の親が死んでも、教えてくれなかった。

「おじさん」には2人、息子がいる。
どちらも母が、何かと育てることになった。
経緯はわからないけど、「おじさん」は息子たちにこう云った。
「お前たちはあの人に育てられたんだから、何があったら助けるんだぞ!」

結局、「おじさん」に私が最後に会ったのはもう何年前か。
父が保険会社に預けていた遺産の扱いをめぐり、大喧嘩になった。
「気持ちは有難くても、うちのことに介入しないでください!」
そう私が言ったのが、物別れになった。

今の私の心情は…何とも言えない。ただ、人が亡くなった、長生きだった。

それだけである。

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