ポスドク問題はポストが少ないのが問題じゃない(その1)

以前の学会からポスドク問題についてのアンケートが回ってきて色々な取り組みをやろうとしているようでした。

ポスドクをやっていた時からポスドク問題については懐疑的な目で見るようになりました。

まず分野と大学を変えてわかったのは「大して優秀じゃないポスドクはたくさんいる笑」ということ笑、「優秀な奴ほどアカデミアを辞める」というのは本当だということ笑

また、個人的には働く環境も場所が変わって「自由度が高いが激務(給料は低い)」なコンサル型ブラックから「自由度が全くなく仕事レベルが低い(給料も低い)」な日本企業型ブラックに変化したのもつらかった。

流石に全然だめだと研究自体が出来ないので一番下の層はいませんが、上の層はごく一部でした。
上の層の人たちは当たり前ですが割合すぐにパーマネントになるので笑
一残ったポスドクたちは平均的(or 平均以下)な能力でアカデミアを離れる気概もなく辞め時を失っている印象でした。

個人的には「ポスドク問題は自己責任」と思っているのであまり真剣に取りあうべきではないと思っています。とはいっても問題にはなっているので少し調べてみたいと思います。

大学院重点化による変化

大学と大学教員数の推移は以下の感じです。

教員数が増えているとは言え私立大学が大半ですね。

から統計を取ってきてグラフを書いてみました。こちらは分野別学生数です。教員自体もこれに比例するといってもよいでしょう。

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社会科学増なのは経営学とかが増えたんでしょう。工、文は一時期増えて近年は収束しています。保険と医師は微増です。一方で理、農は横ばいです。

また私立大学の数と学生の数が相関していると思うと「人文、社会、工学」がメインに増加しているのはそれらを持った私立が多く作られたと言えそうです。

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一方でこちらが博士課程に進んだ人たち。平成2-7年の大学院重点化のあたりから増加しています。

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ざっくり博士進学率です。医学部の博士進学率やばい笑
わかりにくいので医学部を消しました。

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これを見ると大学院重点化で明らかに進学率が増えていますが、その他と農がすごい笑。そして理学部はコンスタントに高い笑。そのほかの学部も農学部ほどではないにせよ、ちゃんと増えている感じです。

倍率はそこまで高くない

さて、学生の数がざっくり教員数に比例しますので(教員一人当たり学生数が~30人くらい)ポストの競争率は生徒数(/30)/博士数になります。。
実際の生徒数はマチマチなのと一定数就職するのと、これが毎年積分されるので、一概には言えないのですが、流入・流出が一定と見ると全体的には競争率は下がっていて10倍程度となっています。意外とないですね。

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あくまで前提として教員数が生徒に比例すると思っているので、大学として生徒は増やして講師数を増やさないとなると競争率は増えているかもです。

昨今の事情ですと、工学部や社会科学、その他では博士を取らずに社会に出ている実務家を教授にする場合をよく見かけるので博士取得者とは違う競争相手が入ってくる場合もあります。
また流行だったり新設されたりする近辺の研究をしている人は比較的ポストが多いのですが、あまり流行らないところや文学部などのお金が少ないところだったりで、分野ごとにまあ事情は異なっていたりします。ですのでこの競争率はあくまで目安です。

お隣の分野のポスドクや助教人事では世界中から応募が来て100倍以上あるみたいなのですが、うちの業界は応募が20-30倍くらいでした。

それでも一般的な企業と比較してもそこまで難易度は高くはない。

うちの業界は比較的仕事を選んで応募していた印象ですが、そうでないところはなりふり構わず応募するため100倍程度になります。これは上の就活倍率と同じような感じだと思います。

つまり、数字上ではポスドク問題のシビアさが見えてきません。

就活は「数打てばどこかで当たる」ので100倍でもOKなんです。
100回受ければどこか一つは引っかかるので。

一方でポスドクで100倍はそこまで数を打てません。シンプルに人数に対して数が打てないのがポスドク問題の本質の一つです。

一つのポストで100倍だとするとその1/100を当てる幸運が必要です。マックスウェーバーも「職業としての学問」で「ラッキーだった」と言っているようにそもそも昔からアカポスにつくのは難しい。

例えると学部卒の就活生が「宝くじを100枚買ってあたりを狙っている」のに対してポスドクは「宝くじを一枚だけ握りしめて当たるのを待っている人」のようなものです。

これを阿呆と見るか哀れと見るかは人次第です。。。

さて、数字上の「そこまで厳しくない感」が伝わったと思うので次回はさらにポスドク問題のさらに込み入ったところに触れたいと思います。

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