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【100均ガジェット分解】(28)ダイソーの「円筒型 Bluetooth スピーカー」

※本記事は月刊I/O 2021年7月号に掲載された記事をベースに、色々と追記・修正をしたものです。

渋谷駅前のマークシティに2021 年春にオープンしたダイソーの新店舗「 Standard Products」でメタル調の「円筒形 Bluetooth スピーカー」(税別 500 円)をみつけました。 早速購入して分解してみます。

パッケージの外観

パッケージと製品の外観

パッケージの表示

パッケージは透明のプラスチックボックスです。輸入・販売元はリサイクルインクカートリッジ等を扱っている「株式会社ラティーノ エコラ事業部」 (http://www.eco- la.jp/company/)です。
パッケージ裏面のラベルには主な仕様が記載されています。通信仕様は「Bluetooth5.0」、連続再生時間は3~4時間(電池容量:400mAh)、MicroSD及びUSBメモリからの音楽再生に対応しています。ラベルの右下には「技適マー ク」も表示されています。

パッケージ裏面のラベル表示

同梱物と本体の外観

パッケージの内容は「本体」「USBケーブル(充電専用)」「取り扱い説明書(日本語)」です。本体上面のスピーカー部分はメッシュの金属製カバーでおおわれています。本体底面には「技適マーク」が表示されています。

本体の外観と底面の技適マーク

本体上部の外装はシボ加工されたアルミ製で高級感があります。
本体下部には4個の操作ボタン(再生モード・音量+・再生・音量-)、音楽再生用のMicroSDスロットとUSBコネクタ(タイプ A)、充電用のMicroUSBコネクタ、電源スイッチがあります。
MicroUSBコネクタの横にはAUX出力用の3.5Φのオーディオジャックがあります。

本体下部の操作ボタンと AUX 出力ジャック

本体の分解

本体の開封

本体底面のクッションシールをはがすと見える2本のビスを外すことで本体を開封できます。
メイン基板は本体下部に固定している2本のビスを外せば取り出すことができます。

開封した本体。〇がメイン基板固定ビス

メイン基板の表面(部品実装面)にはLiPoバッテリーが両面テープで固定されていますのでこれをはがします。
スピーカーとLiPoバッテリーのリードはメイン基板に直接半田付けされています。

取り出したメイン基板

上面の金属製カバー外すとスピーカーは1個(モノラル)です。

上面の金属製カバーを外した状態

スピーカーの口径は47mm、定格はパッケージラベルの記載表示通りの「3W 4Ω」です。スピーカー後面は樹脂製のエンクロージャーで囲われており、スピーカーとエンクロージャーは接着剤でがっちり固定されていました。
エンクロージャー外周には透明な導光版があり、暗いところで見るとスピーカー周辺がイルミネーション風に色を変えながら光ります。

回路構成

■ LiPo バッテリー

LiPoバッテリーは602040サイズ(6x20x40mm)で”3.7V 400mAh”の表示があります。LiPo本体に保護回路を内蔵しています。

LiPo バッテリー

同等品の2021年5月時点のAliExpressでの販売価格はUS$2.3 程度です。

https://bit.ly/3vhhtaO

■ メイン基板

メイン基板はガラスコンポジット(CEM-3)の両面スルーホール基板です。部品は全て基板表面に実装されています。
型番「WND-03A」と製造日(201104)はシルクで表示されていま す。
基板表面の2個のICはそれぞれ「メインプロセッサ」とオーディオ用「パワーアンプ」です。「メインプロセッサ」の足の部分は 防水のためのシリコンゴムが塗布されています。マイクは円筒形の「コンデンサマイク」です。
「イルミネーションLED」は基板中央に裏返しで実装されています。
電源スイッチの横には充電状態を示す「赤色 LED」があります。
Bluetoothアンテナは基板パターンの「板状逆Fアンテナ」です。アンテナ周辺から距離(実測1mm程度)を取るかたちでパターンが抜 かれています。

メイン基板(表面)

基板裏面には部品はなく、Bluetoothのパターンアンテナの裏面が抜かれている以外は全面GNDパターンです。基板中央には穴が開いていて「LED」の発光面は裏面側を向いてい ます。

メイン基板(裏面)

■ 回路図と動作の概要

基板パターンからメインボードの回路図を書き起こしました。

回路図

スピーカー出力はモノラル(DAC_L)、Line Out(Jack1)もスピーカー出力を分岐してL/Rに同じ信号を出力しています。スピーカー(SK1)はパワーアンプ(IC2)の+OUT(8pin)/- OUT(5pin) による差動駆動で電源電圧VDD(6pin)の変動を受けにくい構成となっています。
キー入力(4 個)及びLine Out(プラグが接続されたらJ_DETがGNDにショート)は抵抗分割された電圧をメインプロセッサ(IC1)のADコンバータ(15pin)で検出しています。

各キーが押されたときのキー信号電圧

メインプロセッサのMUTE信号(14pin)はパワ ーアンプのSD端子(1Pin)に接続され、Line Out接続でパワーアンプをシャットダウン(SD=H)してスピーカーを停止します。

LiPoバッテリーの充電制御は専用ICを使用しておらず、ダイオード(D1)と電流制限抵抗(R13)の構成です。LiPoバッテリー内蔵の保護回路はありますが、あまり好ましくない構成です。充電中(LiPo の両端電圧が低い)はトランジスタQ1がON状態になり赤色LED(LED1)が点灯します。

イルミネーションLED(LED4)はコントローラ内蔵の「Blink Flashタイプ」です。抵抗(R1)を介してVBATに接続され電源スイッチ(PWR_SW)がONの間は自動で色が変わり続けます。

イルミネーション LED のチップの拡大写真

MicroUSBコネクタは充電専用で、D-/IDピンからテスト用の信号(LIN_LR)が入力できる仕様になっています。

主要部品の仕様

次に本製品の主要部品について調べていきます。

● メインプロセッサ AC6928B

メインプロセッサ

"JL"のロゴ及び後半の”-28B4”のマーキン グより中国製のBluetooth搭載製品でよく使われている珠海市杰理科技股份有限公司 (ZhuHai JieLi Technology, http://www.zh- jieli.com/)製のBluetooth内蔵マイクロプロセッサ「AC6928B」です。
データシートは今まで同様にJieLiでは公開していませんが、方案公司(デザインハウス)である「深圳科普豪电子科技有限公司」のサイトで閲覧できます。

https://bit.ly/3yrnjIB

最大160MHz動作のRISC 32-bit CPUを搭載、Bluetooth機能・USB/SDインターフェース・プログラマブルな8個のGPIO端子と5チャンネルの10bit-ADCを内蔵したオールインワンのSoCです。
内部電源(5 系統)を生成するLDO内蔵で、VBAT(12pin)にLiPo バッテリーを接 続すれば、BT 用の24MHzクリスタルと各内蔵LDO用コンデンサだけで動作します。

● オーディオパワーアンプ LTK8002D

オーディオパワーアンプ

「LTK8002D」は深圳联辉科电子技术有限公司(LTKCHIP(ShenZhen) Electronic Technology, http://www.ltkchip.com/)製のシングルチャンネルのAB級オーディオパワーアンプです。データシートは以下から入手できます。

https://bit.ly/3fFeyC3

出力スペックは4Ω負荷・THD(全高調波歪)10%で2.9W出力(typ.)です。
LTK8002Dは LCSC(中国の部品通販サイト)で検索すると2021年5月時点で1個US$0.044(10個以上購入時)で販売されています。

https://bit.ly/3ywqq1U

ちなみに「8002」という型番のオーディオパワーアンプは中国製のスピーカーではよく使われており、複数の会社から互換品が発売さ れています。

Bluetooth プロファイルの確認

今回もAndroid版の”Bluetooth Scanner”と いうアプリを使用しました。

Bluetooth Scanner

本機の電源をいれると”LBS”という名前で検出されるのでペアリングし接続情報を確認 すると、プロファイルは「ヘッドセット」、プロトコルは「Classic(BR/EDR)」、コーデックは標準の「SBC(Sub Band Codec)」と標準 的なヘッドセットとなっています。なお、ベンダーは「不明」となっていました。

Bluetooth 接続情報

まとめ

アルミの外装やイルミネーションLEDなどデザインは今までのダイソーにはあまりなかった「ちょっと高級感」(=コストをかけている風)を出した製品だと感じます。
ただ、内部の基板をみると、メイン基板の電源が細いパターンで長く引き回されている・パターンのコーナー処理が直角のままできちんとできていない、といった部分が目立ちました。個人的には、「製品設計レベルとしてはあまり高くはない」という感想です。
回路構成はNo.12で分解したダイソーの「ポータブルBTスピ ーカー」(月刊I/O 2020年3月号に掲載)に近いのですが、LiPoの充電制御がダイオード+抵抗になっているのは設計的にはアウトだと思います。(ポータブルBTスピーカーは専用ICを使用)
LiPoバッテリーの充電制御は発熱・発火といった製品安全にかかわる部分なので、きちんとした設計をして欲しかったというのが正直な感想です。

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