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【100均ガジェット分解】(61)「充電式COBライト」

本記事は月刊I/O 2024年4月号に掲載された記事をベースに、内容を追記・修正をして再構成したものです。

ダイソーでめちゃくちゃ明るいと話題になっている「充電式COBライト」を入手しました。今回はこれを分解してみます。


パッケージと製品の外観

■ パッケージの表示

「充電式COBライト」はLEDランプのコーナーにありました。店舗によってはアウトドア商品のコーナーにあるようです。本体価格は300円(税別)です。

パッケージの外観

製品の供給元はホームセンターの電材工具でもよく見かける「株式会社 オーム電機 (https://www.ohm-electric.co.jp/)」で中国製、型番は「LH-CT25A5」です。

パッケージ側面の表示

パッケージに記載の製品仕様によると、内蔵電源はリチウムポリマー(LiPo)バッテリー(3.7V 200mA)、定格入力(充電電流)はDC5V 0.7A(最大)、充電時間 約1.2時間、連続使用時間についての記載はありません。
充電ケーブルは付属していませんので別途準備が必要です。

商品仕様(パッケージ背面)

本体の外観

本体はコンパクトで掌にすっぽり収まるサイズです。本体上部はカラビナ形状になっていて、背面にはマグネットが付いています。カバンにぶら下げたり、金属製の壁面に貼り付けたりして簡単に使うことができます。
本体のカラビナ形状の部分はプラスチック製で、あまり強度はありませんので注意が必要です。

本体の外観

本体の開封

屋外での使用(IPX3 防雨形)も配慮しているので、外装ケースは接着剤で固定されています。開封するのに、本体側面の隙間を超音波カッターで切り込みをいれ、マイナスドライバを差し込んでこじ開けます。
前面のLEDの内側にはLiPoバッテリーに発熱が伝わりにくいように厚めのスポンジが貼られています。

開封した本体

LiPoバッテリーは両面基板で貼り付けられています。テープを剥がしてLiPoバッテリーを取り外すと、その下にメインボードがあります。

LiPoバッテリーを取り外した状態

内部構成

COB LEDモジュール

COB LEDは放熱のためにアルミ基板上に実装され、表面を透明な樹脂でコーティングされたモジュールになっています。実装されているLEDの数は横6x縦5 = 30個、基板上の表示の「Y33」はLEDのタイプ、「30」はLEDの数を指しているようです。

COB LEDモジュール

LiPoバッテリー

LiPoバッテリーは表面には全く表示がありません。実寸サイズは502030(W30xH20xD5mm)、このサイズであれば容量は200mAhのものが多いので、製品仕様どおりだと思われます。このサイズでは珍しく保護回路を内蔵していないタイプ(セルのタブに直接リード線を溶着)です。

LiPoバッテリー

メインボード

メインボードはガラスコンポジット(CEM3)の片面基板です。部品は全て面実装部品、主な部品はコントローラーIC、バッテリーマネジメントIC、NPNトランジスタ、プッシュスイッチ、Type-Cコネクタです。Type-Cコネクタは6ピンの充電専用のものを使用しています。充電状態表示のLEDは2個実装されていて充電中は赤、充電が完了すると緑が点灯します。
COB LEDモジュールは「L+・L-」のランドに、LiPoバッテリーは「B+・B-」のランドにそれぞれ接続されます。
各部品の回路番号とプリント基板の型番「YF-ZP-Y8D4D57」はシルクではなく、レジストを抜いて表示されています。

メインボード

回路図

プリント基板のパターンから回路図を作成しました。

回路図

Type-CコネクタのVBUS(5V)から入力された電源は、バッテリーマネジメントIC(U2)の”IN”端子に接続されていて、”BAT”端子に接続されたLiPoバッテリーの充電制御を行います。LiPoバッテリーの充電電流は”ISET”端子に接続された抵抗R2で決定します。充電状態表示のLEDはバッテリーマネジメントIC(U2)が制御しています。
コントローラーIC(U1)の電源はLiPoバッテリーの両端電圧から抵抗R3を経由して印加されます。COB LEDモジュールの+側もLiPoバッテリーの+側に直結しています。
プッシュスイッチS1が押されたのをコントローラーIC(U1)の2番ピンで検出して、3番ピンでNPNトランジスタ(Q1)のベースをONしてCOB LEDを点灯させるという非常にシンプルな動作になっています。
Type-CコネクタのCC1・CC2端子にはプルダウン抵抗がついていないため、Type-CケーブルでPD対応充電器と接続しても充電ができません(パッケージにもPD非対応の記載あり)
NPNトランジスタQ1のベースとコントローラーICの3番ピンの間に抵抗が入っていませんが、実測ではON時に1V程度になっていますので、3番ピンはオープンコレクタ出力で、コントローラーIC内部でプルアップされているものと思われます。

気になる点として、本製品では保護回路なしのLiPoバッテリーを使用しており、コントローラーICの電源をLiPoバッテリーから直接取っています。この構成では通常動作時にはLiPoバッテリーの電圧管理ができていません。
LiPoバッテリーの代わりに外部DC電源でコントローラーICの動作が停止する電圧を実測してみたところ、2.45Vまで動作していました。コントローラーICは消灯時もLiPoバッテリーの両端に接続されたままなので、放置するとLiPoバッテリーが過放電状態になる可能性があります。

主要部品の仕様

 コントローラーIC: 型番不明(PICピン互換)

コントローラーIC

コントローラーICは表面にはマーキングがありません。パッケージを外すと裏面に「PAS18A」のマーキングがありましたが、検索しても該当品は見つかりませんでした。

コントローラーIC裏面のマーキング

ピン配置はローエンドのガジェットではよく見かけるMicrochip社のPICマイコン(PIC12F***)互換で、筆者は「Generic PIC」と呼んでいます。

バッテリーマネジメントIC: LP4057B6F

バッテリーマネジメントIC

「LPS BMDK1」のマーキングの部品は深圳の微源半导体股份有限公司(Lowpower Semiconductor Co.,Ltd http://www.lowpowersemi.com/ )のリチウムイオンバッテリーチャージャー「LP4057B6F」です。
データシートは以下から入手できます。

http://www.lowpowersemi.com/storage/files/2023-05/dafb1735eb2a675827c0a66aecfb8315.pdf

最大充電電流:600mA、CC/CVモード対応で、LiPo電圧が3.0V以下になるとトリクル充電モードになります。充電電流はISET端子に接続された抵抗で設定できます。

I(bat)=1000/R(iset)

本製品ではR(iser)=2kΩですので、I(bat)=500mAです。バッテリー容量は200mAhですので、かなり大きめ(2.5C)の充電電流となっています。

LP4057B6Fの内部ブロック図(データシートより)

回路動作の確認

COB LEDモジュールの電圧-電流特性

COB LEDモジュールにLiPoバッテリーが直接つながる回路構成になっていることもあり、COB LEDモジュールの順方向電圧-順方向電流特性を測定してみました。
点灯開始電圧(約2.6V)からほぼ比例関係で電圧が上昇しているので、LiPoの充電状態で明るさが変化することがわかりました。

COB LEDの電圧-電流特性

COB LEDモジュールの駆動波形

COB LEDモジュールのL-側の駆動波形を以下に示します。Lの期間がLEDの点灯期間になります。明るさ制御は98HzのPWMで行っていて、ON期間は「強」では約67%、「ブースト」では約99%です。

「強モード」の駆動波形
「ブーストモード」の駆動波形

まとめ

IPX3相当の防水機能に対応していることもあって、LiPoバッテリーを含む電子回路を密閉して使う商品なのですが、LiPoバッテリー周辺の回路設計はコストダウン優先できちんと確認せずに量産化してしまったのでは?と思うような回路構成でした。
中国製造でのOEMだと思うのですが、日本国内でも知名度があるメーカーの製品なので、少し残念です。

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