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製造業のDX活用法セミナーレポート 〜前編〜

この記事は、2024年8月1日(木)に株式会社スカイディスク(登壇者 CSO 後藤健太郎)とトモラク株式会社(登壇者 代表取締役 田中大介)が共催したウェブセミナー「多品種少量化の時代を生き抜く中堅・中小企業のDX活用法」をトモラク株式会社が書き起こしたものです。
セミナーの一部の内容を要約・編集しております。予めご了承ください。


1. トモラクとは

初めまして。トモラクの田中と申します。
最初に弊社の紹介をさせて頂きますと、トモラクは中堅・中小の製造業様へ『PLM』や『図面文書管理』のクラウドシステムを提供している会社です。
お取引先としては、一品一様や多品種少量でものづくりをされている組立製造業が多く、設計部門にシステムを提供しています。

どんな課題を解決するサービスを提供しているのか?

残業などの労働環境を改善したい、ベテランの定年が近づきノウハウなどを継承したい、採用が難しく設計部門の生産性を上げたい、といった声をよく伺います。

そこで、DXの最初の一手として、図面や関連資料の検索(利活用)や共有に便利な『Tomoraku DMS』を提案しています。

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この内容でまずは十分というお客様もいらっしゃいますし、部材価格の高騰、納期の不安定化、含有物質などの規制強化といった背景から『構成部品管理をしっかりしたい』といったお客様もいます。その場合は、品番管理やBOM管理をできる『Tomoraku PLM』も提供しています。

『Tomoraku PLM』によって、部品が生産終了した時に影響範囲の特定をしやすくなり、部品の価格改定があった時に製品原価がいくらになるのか計算しやすくなり、含有物質や規格/規制の情報管理がしやすくなります。またお客様からリピート受注をした時に構成部品とその図面文書をすぐに把握できるのもメリットです。

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2. 今になってなぜDXが必要に?

最近、DXのお問い合わせが増えていると感じます。実際にお客様の話を伺うと社長直轄のDX推進室が設置されるなど、今までと風向きが変わってきたように思います。背景として製造業を取り巻く環境にどんな変化が起きているのかが気になり、いくつかの調査データを資料にまとめてみました。

人手不足はもっと加速する

こちらのグラフは製造業の就労人口を表しています。
青い棒グラフは34歳以下、オレンジの棒グラフは65歳以上の人口です。
改めて数字を見ると衝撃的ですが、34歳以下の働き手は20年前比で30%も減少しています。その労働力不足を補ってきた65歳以上の働き手も5年前から減少し始めています。てっきり定年退職後の就労人口は増え続けているものだと思っていましたが、すでに減少局面に入っています。

これから先の見通しについても触れたいと思います。
2010年頃から日本全体の出生数は一段と落ち込んでいます(2010年の出生数は約107万人⇨2023年は約73万人で30%強減少)。ですから、この世代が社会人になり始める2030年頃からは製造業への入職者は減ることが確実です。
折れ線グラフを見ても、製造業への入職希望者は減っているので人口減以上に入職者が減少すると推測できます。

さらに、2035年頃には出生数が200万人を超えていた第2次ベビーブームの世代が定年を迎えますので、2030年頃を境に今とは比較にならないペースで人手が減っていくことが予想されます。

(スカイディスク CSO 後藤)このあたりは、その通りだなと思います。一方で別の統計を見ると、製造業って生産金額がそんなに変わってないのですよね。つまり、ここまで働き手が減少する中で、それを補う生産性向上をしてきたのだと思います。
しかし、ここから更に働き手が20%や30%減っていくとしたら、生産性向上も更に20%や30%改善しないといけないということになります。それをどう実現するのか。本当に事業環境が変わってきたなと私も肌身で感じます。

そうですよね。私も数多くのお客様と会う中でやっぱり働いている方達の改善力、業務遂行力は高いと感じていて、皆さんが細かいところの工夫を積み重ねて、なんとか効率を上げてきたのだと感じています。最近では、昔みたいに深夜や休日・祝日まで働くことができないように労働規制も強まっているわけですから。

ただ、ここから更に何段階も改善しないといけないわけですから、DXへの注目が集まっているのかもしれません。

3. DXの取り組み方

後藤さんはDXがうまくいくためには何が必要だと考えていますか。

(スカイディスク CSO 後藤)そうですね。私はDXを始めるときの最初の一手は『可視化』が重要だと考えています。可視化ができて初めて改善対象がわかり、効率化を図ることができるということですね。
これまでの現場の改善というのは、稼働状況や工程の分数を確認して、時間がかかっている工程にカメラを設置して改善ポイントを見つけて、誰でも効率的にできる手順に変えて、というようなことをやってきたと思うのですけれど、考え方は近いと思っています。
DXを通じて、可視化⇨分析⇨手順の改善、という支援をするということだと思います。図面管理や部品表の管理においても共通するものがあるのではないでしょうか。

一人一人の改善から組織としての改善へ

おっしゃる通りですね。これはお客様自身も認識されていて、よく「ノウハウはベテラン設計者の脳みそにあって、あの人がいなくなったら回らない」とおっしゃいます。つまりこれまでの改善活動は、一人一人の業務の改善に依存しすぎてきたのではと考えています。ここからは、組織としての可視化・改善をする局面に入ってきたのではと。

後藤さんがおっしゃる通り、設計の領域では図面や部品表などがまだ紙に印刷されて保管されていたり、スキャンしてPDFにはしたがファイルサーバーの中に入っていてベテラン設計者や設計した本人以外には利活用可能になっていないという状況が多いかと考えています。設計のノウハウが組織として使えるようになれば、設計効率が上がり、設計コストが下がり、もっと言えば設計リードタイムが短くなります。最近では、お客様からの納期要求が厳しかったり、製品の開発スピードを早くしたいという声が強まっていると思いますので。

また、過去の設計資産を踏み台にできるということは、設計品質も上げやすいですよね。設計品質が上がれば、後々の設計変更を減らせたり、手戻りや仕損も減らせる可能性が出てくると思います。

特に多品種少量や一品一様のお客様の場合は品種が多いので1プロジェクトに使える時間がどうしても限られてきます。設計品質を上げる時間が限られていますし、そうなると購買や製造で手戻りが起きがちです。

設計部門のDX投資よりも、購買・在庫管理のDX投資を重視するお客様もいて、そこはお金に直結するので重要性はよくわかるのですが、やはり設計段階の改善インパクトが大きいのではと考えています。

結果をもたらす原因を考える

(スカイディスク CSO 後藤)そうですね。結局は、その結果をもたらす「原因」が何かという話だと思います。在庫が余ってますっていう話があった時に、在庫を管理したいというのはわからないことでもないのですが、その「原因」ってなんでしたっけ?と考えると、設計変更などで使わない部品が出たとか、不測の事態に備えて安全在庫を持っておきたかったということもありえると思います。
つまり、結果をもたらした原因は「想定通り作れていない(だから安全在庫をたくさん抱えておきたいなど)」ということですよね。このように課題があるときに、どこからアプローチすると一番効率的に課題を解消できるのかは大事だと思います。

後編へ続く