キャズムを超えて働きアリを支えよう

社内でのシステム利用率を計測している情シスも多いと思います。メール、出張精算システム、勤怠管理システムのように、全社員が使うべきシステムは、わざわざ利用率を測定する必要がないのですが、自社で作った新しい便利機能を持つシステムや、チャットツールのようにそもそも機能的に今あるシステムとも一部重なるような新しいツールなど、必ずしも全社員が使わなくてもいいけれど、使った方が生産性が上がるようなツールの利用率についての妥当性のガイドラインのようなものは、特に世の中にありません。

そこで私が提唱するシステム利用率のガイドラインは16%です。そのよりどころはキャズム理論です。キャズム理論とは何かについての説明は下記リンクをご参照ください。

キャズム理論では、アーリーアダプターからアーリーマジョリティへの移行に「深く大きな溝」があり、この溝を越えると急激に利用が広まっていくとされています。この溝が普及率16%なのです。新しいテクノロジーを社内に普及する際に、このモノサシを使うようにしています。具体的に言えば、16%の普及率を越えるまでは、一生懸命に社内に普及・啓蒙活動を行う。16%を越えたらそのサービスは放っておいても広まっていくので、ほぼ放置して良いのです。超大企業で人も余っていて、導入推進やユーザーへの啓蒙活動を専門で行うような贅沢な体制が取れる場合は、この記事を読む必要はありません。多くの企業は、一人で企画から導入推進までやらなければならないと思います。社内への普及・啓蒙活動は実は非常に手間ひまがかかります。やる気のある人に対しての普及・啓蒙活動は、人さまの役に立っている、と仕事の価値が実感しやすいのですが、そもそもやる気のない人たちを集めて、半分以上の人が内職か寝ているような雰囲気で講師をする部下は不憫でなりません。

熱い思いを持った16%の人と共感のうねりを作ったら、「はい次!」です。

次に何をやるかと言えば、次のイノベーションの種を育てて、その普及率を16%まで伸ばしていくのです。16%越えてからは、高い関心を持ってくれる人を中心にサポートしていくイメージです。こちらから押しかけて行くのではなく、呼ばれて行く感じです。もしくは各拠点ごとに説明会を行って、興味のある人のみ来てもらう感じです。

16%越えには別の意味もあります。ざっくり2割まで利用率が高まれば、既にその時点で全体としても大きな効果が見込めると考えます。

2-6-2の法則、ニッパチの法則、パレートの法則、働きアリの法則などいろいろ呼び方はありますが、トップ2割を押さえたら先ずは勝利だと考えます。

新しいテクノロジーに飛びつく上位16%のイノベーター、アーリーアダプターと、パレートの法則の上位20%には、個人的な感覚なのですが、相関関係があると確信しています。(どなたか研究者の方に実証して欲しい理論です)

斬新なテクノロジーほど普及に時間がかかります。そして普及には工数がかかるのです。キャズム理論のラガードまで普及・啓蒙活動していると、その間イノベーターを待たせる事になります。これは企業におけるイノベイションの停滞です。次のテクノロジーをイノベーターに提供する事に私は重点を置きます。また情シススタッフのモチベーションの点でもプラスになります。ゼロから16%まで持ち上げる時はやる気のみなぎった人との伴走で高揚感がありますが、80%を100%に上げる為にはやる気のない人に頭を下げてお願いして回る様な辛さが伴います。投入リソースから得られるリターンという経済合理性の面からも、私はキャズム越えを目標とするスタイルを提唱しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?