社会課題の現場から教育を担っていく

「これからの時代は、AIも出てきて、これまで人間がしてきた仕事がなくなってしまうのかもしれません。そんな中で、みんなには、好きなものを見つけて、好きなものに熱中して、好きなものを掘り下げて、自分にしかできないことができるようになる。そんな子たちに育って欲しいと思っています。わたしたちはその手伝いをしていきます」

4月初旬、息子の幼稚園の入園式で園長先生から冒頭のスピーチが語られて、ぼくは心底驚いたというか、嬉しかった。園長先生が話した内容が、息子・謙人の子育ての唯一(?)の方針とぴたりと一致していたからで、こんな園長先生がいてくれたら、安心だなぁと思った。

(入園式で妻と息子と)

実は今年は、日本の教育が大きく変わる一年目だ。2020年度に小学校、2021年度に中学校、2022年度に高校の学習指導要領の改訂が全面実施されるのに先立ち、2018年度、つまり今年度から幼稚園の指導要領の改訂が全面実施されている。

教育は社会の鏡なわけで、社会の変化に合わせて、教育も変わる。

産業人材論に寄せた話では、各人が、縦割りの組織内で、組織から与えられたノルマに取り組めばよかった「大量生産大量消費」の時代はすでに終わりつつあり、そういった組織が生み出す価値は、急速に低下している。

多様な顧客インサイトや社会課題に対応して価値を発揮するには、とにかく主体性が大切で、テーマに没頭し、課題を見つけて、それを楽しみながら解いていく。そんな人間が求められているし、それに対応できるような教育が同じく求められているんだと思う。

中高生向け「スタディツアー」プログラム

そして、リディラバには教育旅行事業部というのがあって、「社会課題」というテーマをモデルケースとして、ぼくたちがこれからの時代に必要だと思う、教育プログラムを提供している。

社会課題をテーマにした「スタディツアー」で現場を訪れて、当事者・関係者から話を聞いたうえで、班に分かれてワークショップを開催。現場で見聞きした現状を整理したうえで、どのような状態を望むのかそれぞれが理想状態を設定し、理想状態と現状の乖離としての課題を定義・設定し、解決策を考える。上記一連のプロセスを中高生向けに教育旅行や修学旅行の中で提供していて、5月22日、23日の二日間、都内の高校一年生約130名が参加するプログラムが湯河原で行われた。

(高校一年生が会場に勢ぞろい)

ぼくは教育旅行に参加するのは初めてで、社会課題の現場を知ることは有意義だし、ワークショップで議論する経験も有意義だし、つまりプログラムはこれからの時代の教育にとって有意義だと思うけど、正直「う~~ん」となっていた。自分が高校生だったころを思い返してみた時に、そんな堅苦しいプログラムが旅行に組み込まれていたら、「いやだなぁ」と思ったから。いくら有意義でも、高校生の旅行という、わが身を振り返っても最高に楽しかった行事に、それを組み込まなくてもよくない?! という感じがあって、今回スタッフとしてプログラムに初参加するにあたっては、高校生たちがシラけたらどうしようと、正直、結構な不安を抱えていた。

いざ「漁業ツアー」へ

当日は朝9時に湯河原に到着。生徒たちと合流して、自分は「漁業」をテーマとするスタディツアーに参加した。ちなみにほかのツアーテーマは、「石材」「農業」「地域活性化」「伝統産業」。それぞれのツアーで、地域の事業者の方の現場を訪れ、現場見学をするとともに、事業者の方からレクチャーを受けた。
漁業でいえば、網代を舞台に、漁師の方、漁業組合の方、地域の干物店の店主から現状や課題についての話を聞いた。

(上:網代の港にて 下:漁師の方からのお話)

その後、ホテルに戻ったのが3時過ぎで、5時から班に分かれてワークショップ。それぞれが学んだテーマの現状整理から始まり、理想状態の設定、課題の設定、解決策の策定までを行った。

(ワークショップ中の様子)

そして、翌日はプレゼン大会。2時間かけてプレゼンを各チームで練り上げた後、まずはテーマごとに部屋に分かれてピッチコンテスト。各テーマには5つほど班があり、そこでの優勝チームを決めた後、全生徒がひとつの会場に集い、全テーマの1位が全体優勝を目指して、プレゼンを行った。

全体優勝、発表の瞬間!

そして、いよいよ訪れたプログラムのクライマックス。

全体優勝、発表の瞬間。

(写真右上のチームが優勝。全員が立ち上がりガッツポーズ。映像から切り出しているので画像が悪い。。)

正直、驚いた。こんな場面を見られるとは思ってもみなかった。

生徒たちと一緒にホテルを出発する時は、生徒たちはやっぱりどこか気乗りしない様子だったのに、現場を見る中でぽつぽつと質問が出始めて、漁師の方からの話ではすごく的確な質問をして、ワークショップでは議論が白熱し、プレゼン大会に至ってはこの盛り上がり。社会課題をテーマにしたプログラムは堅苦しくて盛り上がらないのでは? という懸念は、杞憂に終わった。

プログラムの最後、学校の責任者の先生は「言語」の話をした。

この世界には現在、約7,000の言語があります。この言語には方言も含んでいるのだけれども、今世紀末には実に約半数、3,500もの言語が消滅するといわれています。言語とは生活であり、言語の数とは生活の多様性、つまり人間の多様性そのものです。今回、君たちが現場で見聞きしたのは、君たちが知らなかったであろう言語であり、生活です。3年間をかけて、世界の多様性を考えていきましょう。

先生はそんな話をして、一連のプログラムは終了した。

今回初めて教育旅行に参加して、手前味噌だけれども、自分たちがやっている事業の価値をしっかりと認識することができた。
社会課題の現場での「スタディツアー」とワークショップ、プレゼンテーションという一連のプログラムを通して、生徒たちに、「テーマ」目線で事象を考える面白さだとか、課題設定をする面白さだとか、合意形成をする面白さだとか、面白さの「種」を届けられたのではないかと思った。

けど、これはあくまで「種」だと思う。一回プログラムに参加したからといって、すぐに大々的な変化があるわけではないだろうし、自分が没頭するテーマ起点で課題設定・解決ができる人に、一足飛びになれるわけでもないだろう。「種」を育んでいくには、時間がかかるし、もっともっとたくさんの良質な機会が必要だ。

先生の「言語」の話も素晴らしかったけど、この高校は、その点でもすごいなと思った。
1年生から3年生までの3年間で、「種」を育む機会を、一連のプロセスとして設計しているのだ。話を聞くと、高校3年間を通したプログラム設計を始めたのは、3年前だそうだ。
自分が高校のころからは考えられない教育プログラムだ。
学校も、変わりつつある。

仲間を探しています

今回の湯河原でのスタディツアーは、気付きが多い、貴重な二日間になった。
社会は変わっていくし、教育も変わっていく。
リディラバは社会課題の現場から、これからの教育の一端を担っていく。

一緒に楽しいことしたい人、ちょっと話を聞いてみたい人、いつでもランチ行きましょう。お酒飲みましょう。

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