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「農家の自分ができること。」 はがた農園「お漬物プロジェクト」波片仁志さんインタビュー(2/2)


こちらの記事の続きです。

はがた農園お漬物プロジェクトについてはこちら。


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▼新規就農者がもっと増えたら


ーところで、波片さんは農家としてはゼロからのスタートだったわけですが、この地域で農業を始めるにあたって大変だったことは何ですか?

僕の場合は、ジャングル状態だったこの土地を開墾して始めることになったので、地主さんからは「草を刈ってくれるだけでもありがたい」って歓迎してもらえました。その時に地主さんが地域の農家さんを紹介して回ってくれたので、それがすごく助かりましたね。

地域の農家さんたちと交流を持っておくことは、農業を続けていく上ではたぶんすごく大事なことなんですよね。

新規就農者が定着しないのは、お金よりも、地域の村社会が原因になっているケースが全国的にも多いと聞きます。その地域の文化に溶け込めないと、いざこざの原因になりかねない。水路や土地は隣り合わせなので。

ーなるほど、なかなか厳しい壁ですね。

今は「田舎暮らし」とか「自然派」などの想いがあって農業を始める人が多い傾向ですが、地元の農家さんにとったら農業は「生活の一部」。そんな甘いもんやない、と言いたい気持ちもあるかもしれません。

でもそれだとお互いもったいない。僕自身は、もっと農業する人が増えたらいいのにと思っています。

新規就農者が増えれば、耕作放棄地も減るし、猪や猿の被害も減るかもしれない。ここで採れる野菜が増えれば、わざわざ遠方の野菜を買う必要もない。本当の意味で地産地消が実現できますよね。

そのためには地域の受け入れ体制っていうのは絶対に必要で。それはこれからの課題かなと思います。

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▼クリエイターたちを応援したい


ーということは、今波片さんがやろうとしていることは、農業を始めようと思っている人たちへのいいメッセージになりますね。

そうなるといいなあと思っています。この形がうまくいけば、農業でも漁業でも、もしかしたら応用できる仕事のパッケージになるかもしれない。こんなやり方もあるんだ!って思ってもらえたら嬉しいですよね。

お漬物を販売するにあたっては、カメラマンやデザイナー、ライターなど、地域のクリエイターさんたちを巻き込んでいて。地域で仕事を回して行けたらいいな、というのは、実はこのプロジェクトのもう一つの想いでもあります。

ークリエイターを巻き込もうと思ったのはなぜですか?

はがた農園も、五年目にしてやっと経営が軌道に乗ってきました。そのタイミングで、知り合いのデザイナーさんが、僕の野菜を使って作った手作りのお漬物を、何かのお礼に持ってきてくれたんです。

デザイナーさんだから、包装やパッケージも商品に見立てて自分でデザインしてくれていて、それがもうすごくカッコ良くて。目の前に、自分の商品がある!すごい!って感動しました。

今まで野菜を作ることに命かけていたから、6次産業みたいな、自分の商品を作るなんて全く眼中になかったんですけど、その時初めて「自分の商品を作りたい!」って思えたんですよ。

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(大根の芽に水をやるはがたさん。「農業のひと手間ひと手間が楽しい」。 写真/徳永塁)


僕は、新居浜にクリエイターって呼ばれる人たちがこんなにいるってことを、実は最近知ったんです。農家やっていたら一生出会うことないと思っていた。

でも、彼らと出会って話を聞いていると、十分な技術があるのに、地方ではなかなか思うような収入につながらなかったり、満足に活動できていなかったりするといった話が多かったんです。

ーわかります。地方では仕事に限りがあったり。

でも、いやいや、そんなに考えこまなくても、何かできる方法あるんじゃないか? と。自分が好き勝手にやってやれてきた自負があるから、才能を出し切れていない人を見てもどかしくて。

僕も20代くらいまでは建築デザイナーを目指していたので、クリエイターっていうものに憧れていたからかもしれません。そういう人たちをもっと応援したい、と。

地元にいても彼らが作品を発表できる場があったらいいなと思うし、狭い地域だからこそ、人と人との繋がりで仕事の回しあいみたいなのができたらいいですよね。新居浜がそういう場になったらいいなあというのはすごく思います。

ー活躍する大人が増えると地域の活性化にも繋がりますよね。

今の大人が新居浜で活躍してたら、子どもたちってそれをみて別に都会に出て行かなくてもここでやれるって思ってくれるかもしれない。

それに、いつか子どもたちが成長して、自分が食べてきた給食が、安ければOKの野菜でできていたと知るより、一級品の野菜で、しかも地域の大人たちのチャレンジとか工夫とかで生まれていたって知ることができた方が、絶対面白いですよね。

このプロジェクトで、そういう道すじを作っていきたいなというのは、すごくあります。

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▼いよいよ予約スタート。お漬物プロジェクトのこれから


ー想像以上に、壮大なプロジェクト。その原動力ってどこにあるんでしょうか。

農家として誰かの役に立ちたいっていう思いはずっとあります。

実は僕、漁師の時に二回くらい死にかけてるんですよ。網を投げ込んでいるときにローラーに巻き込まれて、海に引きずり込まれそうになったり。本当に走馬灯が走るような出来事で、それ以降「生きる意味をちゃんと残したい」って思うようになりました。

それまで好き勝手に生きていたから、自分がどのくらい簡単に忘れられるかを、すごく実感したんですよね。

だから今は「生きたい」っていう執着よりも、「どうやって生きるか」っていう執着がすごくある。自分の人生を濃くして生きるにはどうしたらいいかを考えた時、僕がたどり着いた答えは、「人に必要とされること」だった。

ーその一つの形が、このプロジェクトなんですね!


少しずつ、形にして出していけるようになったかなとは思います。このプロジェクトだって、表面だけ見ればどこにでもあるビジネスモデルかもしれないけれど、想いの部分で言えば、やっぱり他にはないのかなって思います。

ーなんだかワクワクしてきます、お漬物プロジェクト。これからの予定を教えてください。

今、パッケージデザインのサンプルが上がってきていて、この間試作品を見せてもらいました。すごくいいのができそうで、お披露目するのが楽しみです。

予約や商品については、これからSNSで発信していくので、そちらをぜひフォローしてもらえたらありがたいです。

たくさん野菜を作って、できるだけたくさん納品できるように考えているけれど、まずは想いを伝えていくことも頑張りたい。

初めてチャレンジなので、どう転ぶかはわからないけど、ダメだったらまた次できることを考えます。よかったら、このプロジェクトを応援いただき、お漬物を買ってもらえたら嬉しいです。

応援、どうぞよろしくお願いします。

ーはがたさん、ありがとうございました!

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<お漬物の予約について>
お漬物は、完全受注販売です。今後の予約受付方法については、はがた農園各SNSをフォローいただいてチェックしていただくか、ダイレクトメッセージにて、お問い合わせください。
<はがた農園>
愛媛県新居浜市の山の麓で、自然の甘みたっぷりの野菜を愛情込めて育てています。主な作物は、にんじん、大根、ホウレンソウなど。農薬をできるだけ減らした持続性の高い農業生産方式を導入し、2020年「えひめのエコファーマー」認定を取得しました。
取材:高田ともみ 撮影:新居浜ENTERTANINER 協力:はがた農園



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