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新しい道を歩く【日本・青森 十和田】

新緑揺れる、青森県十和田市の湖と渓谷。風吹けばゆらり、ふわり、サワサワと音を立てて流れてゆく水と、私たちの時間。

まるであれはなかったかのように、砂のように。消えゆく。

軸をなくしてしまったようだと、平衡感覚が時空を超えてゆく幻想が見える。帰国してからもうすぐ2ヶ月が経とうとしている。

身の回りを浮遊している諸々に追いつけなくて、ただただ沈殿を待っていた私は、「長かったな」とつぶやく。

目の前の景色、色をなくしてしまってから、けれどそれでもあなたのことは変わらずずっと好きだった。

沈殿を待つ間、2本の足を地に着かせて自分と心を潤わせることを考える。

3年前に目指していた「場所を問わずに働く」「書くことで身を立てたい」が土台となって、経済基盤を持てたことを、取り急ぎ褒めてあげようと思っていた。

「最近は何を考えて過ごしていたの?」と問われてとっさに、ばかみたいに笑顔で答える。

けれど三日月浮かぶ頃もう一度窓の外眺めて考えてみたら、「落ち着いて暮らしたいなと思っていたよ」と、もう一度伏し目がちに答えたい衝動に駆られた。あんなのは、きっとうそ。

「参戦」の2文字がもう一度目の前に現れる。

基盤を手に入れた私は、もう一度積み重ねるべく、歩き出すための準備をする。その色は、水色か、みどり色か。

ことばの流暢さも、拠点となる家も、一緒に暮らすひとも、そこでつくっていきたいことも(それはあるかも)、私はまだ何ひとつ持っていない。

けれど沈殿しそうな地、見つめながら、きっとこれから私もう一度跳ぶ、とあたたかく夢を見る。


いつも遊びにきてくださって、ありがとうございます。サポート、とても励まされます。