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鳥よりも何よりもバイクが多いこの街では【ベトナム・ホーチミン】

温かいお茶が好きなので、コーヒーショップでもためらいなく紅茶を頼んでしまうことがある。ベトナム・ホーチミンの街歩きで、偶然見つけた3階建てのコーヒーショップに入ったときも、そうだった。

「Hot or Cold?」が全然聞き取れなくて、「ん?」と何度か聞き返してしまう。てっきりコンデンスミルク入りがいいのか、そうでないのかを聞かれたのだと思った。

「Non suger」と言ってもらちがあかず、ふたりで困ったように笑い合う。英語が堪能なバリスタが何人かレジにくる。「あったかいのがいいのか冷たいのがいいのかを、聞いてるんだってさ?(笑)」と競うように教えてくれる。

いつもこうだ。「あぁ、あったかいのがいいの」なんて返して、日本では決して起こり得ない数分を過ごす。(ベトナムは、これまで訪れたどの国よりも、英語が聞き取れないし通じないなぁ、と思う瞬間が多い場所。私にとっては)

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ホーチミンの街は、思っていたよりもコンパクトなようだった。2日歩いて、もう私は次の街へ移動することを決めていた。この街の宿泊は、日本にいたときに1週間程度先に予約しておいた。けれどもしかしたら、その期限までこの街にいないかもしれない。

海と、美しい街並みと、きれいな空気が吸いたかった(そしてそれは、残念ながらこの街にはないような気がしていた)。もう一度ホイアンへ戻るか、マレーシアの島へ行くか、愛するタイへ再び飛ぶか。選択肢はそれくらいのものだった。

なんだかいっそ、日本に戻ってしまってもいいような気がした。会いたいひとができてしまうと、旅はなんと難しいものだろう(じゃあ去年の私は何だったんだという話になるけれど)。

3階建てのカフェの窓の外、流れるように数百台のバイクが走ってゆく。車よりもバスよりも歩行者よりも、鳥よりも何よりも、この街にはバイクが多い。

すっきりと晴れた青空を見せる気は、ホーチミンにはないようだった。「雨季は雨季だから」と頑固な乙女。そんな感じの印象を、私はホーチミンに抱いていた。


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