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ジェルネイルを辞めた分、軽くなった夏と秋のあいだの夜に

夕暮れを見届けたあと、すこしだけ歩こう、と思って海沿いを進んだ。日が沈むと沖縄の夏は秋にすぐに向かっていく。東京よりも涼しい夏の夜なのではないかな、とワンピースの裾はためかせて確かめる。

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月に一度、通い続けているジェルネイルサロンに寄ることを、仕事終わりにさっき決めた。

世界旅行をしていたときに、必ず塗っていた爪の先。なんとなく面倒くさくて、何よりもサロンに通い続ける、ということがあまり性に合っていなくて、しばらく放置していたのだけれど、昨年ふと思い出したように「爪の先に色をのせたい」と、サロンに再び通い詰めるようになった。

最初は、とくに何か強い希望とか、こだわりがあるわけでもなかったから、本当に「なんとなく」だったから、一色、真っ赤な色をラウンドで塗ってもらった。

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きらり、手入れされた指先。

たぶん、少し自信が欲しかったんだと思う。自信じゃないな。心ときめかせてくれる、いわば「自分をアガらせてくれる」何かを、身につけていたかったんだと思う。

波立たない日々に、浮き立つきっかけみたいなものが、欲しくて。

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パソコン仕事が多い私は、いつだって両の手の10個の爪が目に入る。赤がかわいいなら、次は黄色とオレンジ。2色、3色、パステルカラーにラメにネオンに、気がついたら5色すべて別々の色。

すべてシンプルな単色塗りかフレンチ、グラデーションにしていたから、デザインが派手ということはなかったけれど、この数ヶ月、私はとにかく爪の先のカラフルの組み合わせで遊んでいた。

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同時に、ワンピースの色も、髪の色も、なるべく全体に統一感が出るように努力はしたけれど、カラフルで埋め尽くしていった(まあもともとの傾向ではあるのだけれど)。

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そして今日も、爪のカラフルを続けるつもりでサロンに来たのだ。けれど、「もしかしたら、少しジェルネイルをおやすみしたほうがいいかもしれませんね。爪のコンディション的に……」と、ネイルのお姉さんからストップの提案をもらってしまった。

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正直、少し前から気づいていたのだ。

ジェルネイルをオフするときや、ライトを照射する瞬間に、ジェルネイルを繰り返したゆえに、徐々に薄くなってしまった爪が「熱い」と悲鳴を上げつつあることに。

けれど、気が済むまで、カラフル、カラフル、と考えていた私は、続けてしまって、辞め時がわからなくなってしまっていた。そして同時に、「武装」していたカラフルを解くことがすこし怖くなってしまっていたようで。

「武装」。そうそう、そういう感じ。強くときめく、カラフルを爪の先に。そうすることで、明るくいられるんじゃないかなって、明るくいたいなって、沖縄の日差しに負けないくらい、美しく、きらり、爪の先。

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あぁけど、久しぶりに休んでみようか、と思った。決めて、オフしてもらって、約1年ぶりくらいに軽くなったナチュラルの素爪を見て。「あぁ、なんだ、全然だいじょうぶじゃん」と思う。

ジェルネイルをのせていた分だけ、からだ、軽くなる。車に乗ったら、ドラッグストアに寄って、久方ぶりにクリアのマニキュアを買って帰ろう。しばらくは、素爪で生きる。

色を重ねなくても、たぶん前を向いて笑えるようになったんだと思う。

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ずっとずっと、フラットに戻りたかった。なんだか、いろいろな力を借りて、最近それが胸を張ってできるようになってきた、と思う。

回転し続けていた車輪、止まったように。自力で止まれなかったし、あまりにも夢を語りすぎてしまって、どれが本当の自分の声か、自分で聞き分けられなくなってしまっていたの。

ちゃんと歩き出せるな、またワクワクできるな、と沖縄の夜を見つめて笑う。しなやかに軽やかに、シンプルな美しさと素直さを携えて生きていきたい。色の力、また別の場所で出逢おう。

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