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ともみの部屋 #2

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伊佐知美の、世界一周の旅とエッセイ。2016年10月〜
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2018年1月の記事一覧

空っぽになった手で、新しい何かを掴もう【オーストラリア→ニュージーランド】

空っぽになった手で、新しい何かを掴もう【オーストラリア→ニュージーランド】

離陸する瞬間、隣に座る韓国人の女の子が「うわぁ」と息を飲むのが伝わってくる。時は夕暮れ、黄昏時。速度を上げて飛び立つ飛行機、向かうはニュージーランド、クライストチャーチ。

窓の外の空気は乾いていて、終日晴れていたその日のからりとした雰囲気をまだ残していて、それでいてふわりと肌にやさしい感触がした。

チケットを見せてと笑ったCAが、今度は飲み物はいかが、と私の席にやってくる。

飛行機の下広がる

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「移動することの価値を、もっと上げたい」と4年前の私は言った。

「移動することの価値を、もっと上げたい」と4年前の私は言った。

「沈殿するのを待つしかないのだ」。口癖のように、唱えていた時期があった。口の中で、音を出さずに、笑いながら、泣きながら、けれどそれを出来る限り見せまいと。出すのが恥ずかしいとか、悔しいとか、見られたくないとか見栄とか、たしかそういうことではなくて。

「諦観」。そう私は、大人になって、あんなに嫌いだった「諦めること」を知ってしまった。ような気がした。

追いかけておいかけて手に入らなかった憧れより

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「ずっと」なんてないのだから、という最高の希望 【日本・東京】

「ずっと」なんてないのだから、という最高の希望 【日本・東京】

流れ落ちることばを拾い集められるのは、旅先でだけなのかもしれない、と私は気づく。いえ日常の中にも言葉はあふれる。けれど私はどうしても、どうしてもこの街では、走り去るたくさんの車両の気配に、吹きすさぶ悲しいコンクリートの音色に、私の心の機微を、委ねることができない。

たくさんの大切なものがある街だと知った。「これからの人生どうやって生きよう」と考えたとき、東京というこの土地なくしては、しばらくは語

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