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ともみの部屋 #2

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伊佐知美の、世界一周の旅とエッセイ。2016年10月〜
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2017年4月の記事一覧

ふわり音楽が流れた瞬間、あのとき

ふわり音楽が流れた瞬間、あのとき

ふわり、音楽が流れ出した瞬間に、あの頃あの街で、あの道で出会ったものだ、と記憶も視界もどこかへ飛んでゆく。

世界を歩いていても変わらないものはヒットチャートの順位だと、ある程度の先進国を旅していると、感じる。

H&Mのディスプレイはいつだって、どの国だって変わらなくて、日本で買ったユニクロの薄いUVカットのパーカーは、ゴールドコーストでなくしてしまったあと、ブリスベンで同じものが買えて、なんだ

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魔法と呪文が街に溶け込んだ、おとぎの国【モロッコ・マラケシュ→フェズ】

魔法と呪文が街に溶け込んだ、おとぎの国【モロッコ・マラケシュ→フェズ】

モロッコ・マラケシュという街は、混沌と喧騒と渇いた愛にあふれた不思議な磁場であった、と離れゆく電車の中で、ようやっとこの数日の経験をことばにできる。

もちろん毎日文章は書いていたのだ。けれど混沌と喧騒の中にあって、刺激ばかりで身を守ることにも必死で、綴ればそこには私の内部と心情ばかり。街を形容するには、もう少し沈殿が必要なのかもしれないと思って、あえて無理矢理に完成させようとはしていなかった。

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いつだって選ばなかった未来は美しい。雲の上の『La La Land』

いつだって選ばなかった未来は美しい。雲の上の『La La Land』

※一応映画の個人的な感想を書いているので、まだ観ていない人は気をつけてください。

公開された直後に日本で観て、アブダビに向かうフライトの間にもう一度観て、そして今日、イタリアからアブダビに戻るフライトで、三度目の『La La Land』 を”して”しまう。

タップシューズに履き替えて、夜になりかけの丘の上で、私だって踊りだしてしまえたらどんなに楽かと思わせるその映画は、夢見がちな少女のままおば

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誰かと一緒に生きる旅と世界は、きっともっと綺麗だろう【イタリア・ローマ→日本】

誰かと一緒に生きる旅と世界は、きっともっと綺麗だろう【イタリア・ローマ→日本】

美しくて、美しくて、うつくしい。心の底から震えるような、光きらめく世界を毎日のように見てきた。

空の色が移り変わっていくのが好きだった。太陽の光を受けて様々に表情を変える雲、その日の感情を反射するかのように色濃い夕焼けを映す波、やっと今夜も私たちの出番がきた、と少しずつ存在感を強めていく月と星。

雲の上から眺めるヨーロッパの山脈や、オセアニアの渇いた大地、インド洋の輝きに、移動するたびに変わっ

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坂道の向こう、シャボン玉と音楽と波の音【スペイン・シッチェス】

坂道の向こう、シャボン玉と音楽と波の音【スペイン・シッチェス】

海へ向かう坂道をくだる途中、石畳の上転ばないようにと、ふと足元を見つめた時に目に入ってくるオレンジと、ターコイズ。

オレンジは、新調したばかりのスペイン生まれのエスパドリーユの革の色。ターコイズは、これまた同じくスペイン育ちのコスメブランドのマニキュアの鮮やかさ。足先で光るその色合い、シッチェスのホストのピーターの家の趣味にそっくりで、なぜこんな場所でトータルコーディネートを、とちょっとだけ笑う

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好きに生きたらいいのでは。愛する人と、美しく【スペイン・シッチェス】

好きに生きたらいいのでは。愛する人と、美しく【スペイン・シッチェス】

カメラを持っていないときのほうが、街がよく見えるな、と思って、私はスペイン・バルセロナの凱旋門の近くを歩いていた。

家から徒歩1分でこの景色。朝起きたら青い空と程よい光、午後に近付いていくに連れ、春から夏に近付いていくような。気持ちのよい5月が延々続いていくような、それでいて四季があって、朝と夜はまだ冷えて。

バルセロナの夕暮れの木漏れ日の美しさを、どうして私は誰とも分かち合えないんだろう?と

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