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正弦定理13

「妹?おまえがか?」
定は、少し小さめの瞳を目一杯広げた。
まさか、あのときの赤ん坊が理なのか?
確かに、眼差しも顔つきも、どことなく正弦に似ている。
何よりも、物の怪に立ち向かった正弦の美しさが、この理にもある。

正弦亭の裏に雑木林がある。
定はそこに理を案内した。
ちょうど人が座るのにちょうどいい岩がある。

「お父上は?いかがされている?」
ずっと気になっていた。この親子の事が。
理は、少し間を置くと「亡くなりました」と言って下を見た。

「いつ?ふたりでどこで暮らしていたのだ?」
亡くなった?あの屈強な人が?
「あの・・・」
理はじっと定をみた。
「私達のことをご存知なのですか?」

聞かれて初めて、思い悩む定。
さて。どこまで話せば良いのだろう?
定はまたもや固まった。
正弦の事となると、どうにも固まってしまうことがある。
大事なのだ。正弦が。
「・・・・あ~うん。・・・正弦様とは、幼馴染で」
理はそれを聞くと前のめりになった。
「ということは、やはり正弦様はわたしの姉なのですね?」
・・・う~~ん。これ以上答えても良いのだろうか?
きっと理も、あの事は聞かされていないだろう。
何しろ、正弦すら覚えていない事。
う~~ん。困った。どうしよう。
定は、非常にわかりやすく、困った顔をして首をかしげた。

いや、そもそも、この子があの赤ん坊だという確証すらないし、そこまで確認もしていないではないか。

定はさらに固まった。

「あの・・・」
理は不思議そうな顔で定の顔を覗き込んだ。

「あ。いや、こうゆうことを軽々しく言ってもいいのかと。そもそも、おまえとも会うのは二度目だしな」

「・・・ああ」
理は納得した顔をした。
「そうですね」


「なにか私の事を証明できるものがあるといいのですが...」

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