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古い懐中時計

昨日、祖母の家に行ってきた。最近、家の中の荷物を整理しているそうだ。行くたびに、服やアクセサリーのお古を渡される。デザイン的に今身につけるのは抵抗があるものもあり、丁重にお断りすることもある。

昨日は懐中時計を渡された。製造年は定かではないが、もうずいぶんと前のもののようだ。50年、とまでは行かなくとも、なかなか年季が入っている。時計屋さんで電池を入れてもらわないと動かないと思っていたが、上部についている突起を回したら秒針が動き出した。ゼンマイ式だったのだ。

とても華奢で小さな秒針なのに、驚くほど真面目にしっかりと動いている。耳もとに当てると、忙しなく針金を爪で弾くような高い音がした。音としては可愛らしいのだけれど、その正確さには可愛げがなかった。電池式よりも実はこういうものの方が長持ちするのだろうか。私が歳をとって死んでからも、この時計はずっと動き続ける。そんな気がした。

ずっとタンスの中で眠っていたけれど、この時計はこの先、私が見ることのできない世界を見るのかもしれない。何年後、誰の手に渡ってどこへ行くのか。古いものの方が、私よりもよっぽど未来がある感じがする。

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