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編集者気質

「ちょっと涼しくなったせいで、最近、虫が元気になったよね。昨日、家ででっかいクモが出てきたから、たおしちゃった」

エレベーターで乗り合わせた同僚が言った。そうか、だからか。夏の間は毎日、帰宅すると、アパートの中庭から蚊が2、3匹、私についてきてしまう。部屋に入ってすぐに彼らを捕まえるのが私の日課になってきたのだが、昨日はすばしっこくてなかなか大変だったのだ。

いつもより機敏だとは思っていたが、気温と蚊の動きの関連性についてなんて、考えていなかった。世の中のものを見て、関連性を探したり、共通点を見出したりするクセが、編集者にはあるらしい。半年前、出版社に入ってからそのことを知った。私の仕事は編集者ではなくて、編集者になりたいなどと思ったこともない。

どちらかというと、編集者の人たちが何かをひらめいて喜んでいたり、思考の遊びをしている姿を、もの珍しく見ている。私には何が楽しいのかよく分からない話もあるし、彼らの会話が空中戦にしか見えなかったりする。

世の中を観察しようと試みても、いつの間にか内省してしまって、目の前のものに焦点を置くことができない。いつも連想ゲームと空想ばかりしている。その点で、やはり私は編集者気質ではないんだろうなぁ、と思う。ではライター気質なのかというとそれも違う気がする。ライターにら編集者に必要なものが同じように必要らしい。

無理に当てはめることもないのだけれど、私に何か元来的にぴったりな職業はあるのだろうか?

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