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信者が“増えて”いる天照皇大神宮教

 『平成24年版宗教年鑑』によると、我が国の宗教の信者数の合計は約1億9689万人とほぼ2億人でした。
 ところが最新版の『令和4年版宗教年鑑』では、我が国の宗教の信者数の合計は約1億7956万人と、大幅に減っています。それでも人口よりも遥かに多い数ですが。
 実は、我が国の宗教の信者数の合計が人口を上回るのは「当たり前」のことです。
 というのも、よく日本人は「無宗教」であると言われていますが、多くの日本人は無宗教であると言いながら生まれた瞬間から神社神道の氏子と伝統仏教の檀家になっているので、その時点で複数の宗教を信仰していることになるからです。
 むしろ最近2億人を割り込んでいる方が、異常なのです。
 典型的な日本人の信仰として「初詣は神社、葬儀は仏教」と言われていましたが、我が国の都市部ではそうした信仰は失われているらしく、神社神道も伝統仏教もどちらも信じない人が急増しているようです。
 そういう人たちはキリスト教や新興宗教を信仰しているのか、と言うとそうでもないからこそ、信者数の減少がみられるのでしょう。そういう意味では我が国では確かに「無宗教」の割合が増えつつありますが、ただ、それはあくまでも都市部に限定された現象であると言えそうです。
 神道でも仏教でもキリスト教でもない「諸教」に分類された宗教も平成24年(西暦2012年、皇暦2672年)から令和4年(西暦2022年、皇暦2682年)の十年間に多くの教団の信者が減っています。
 天理教やPL教団と言った有名教団の信者も減っていますが、生長の家や世界救世教の信者数の減少も目立ちます。但し、これは本当に信者数が減っているというよりも、生長の家の場合は反自民色を鮮明にしたことに伴う日本会議系セクトによる引き抜き工作が、世界救世教の場合は明主様の一家と教団執行部の間で溝が生じていることが、それぞれ主要な原因であると思われます。
 また、総じて言えることはこうした諸教の信者減少率は高齢化が原因であると推察される程度の規模に留まっているという事です。
 少子高齢化により信者数が減るのは仕方名の無いことですが、私が注目したいのはそのような中で信者を増やしている教団があることです。
 天照皇大神宮教は47万9707人から49万807人にまで信者数を増やしています。
 もっと包括宗教団体の数は減少しているので、やはり宗教界全体への「向かい風」は天照皇大神宮教にも及んでいるのでしょうが、それでも信者数の増加は注目すべきことでしょう。
 天照皇大神宮教が無視できないのは、政治への影響力が極めて大きい宗教団体だという事です。
 山口県では天照皇大神宮教の代表役員が公安委員長になったこともあります。言うまでもなく山口県は安倍家の地盤ですが、天照皇大神宮教が安倍家の票田であることはよく知られていたことです。
 さらに平成25年(西暦2013年、皇暦2673年)以降は天照皇大神宮教の教祖一家から北村経夫氏が「国政進出」し、安倍派の参議院議員として活躍しています。
 念の為に言うと、天照皇大神宮教自体は保守派の健全な宗教団体であると、私は認識しています(その教義には賛同できませんが)。ただ、北村議員は天照皇大神宮教だけでなく家庭連合(旧統一教会)系の国際勝共連合の支援も受けておきながら、上位当選は出来ていなかった事実があります。
 同じ宗教系の候補者でも神社本庁の支援を受けた有村治子議員よりも少ない得票数であり、天照皇大神宮教はあまり政治に熱心ではない宗教であるとは言えそうです。
 もっとも天照皇大神宮教よりも遥かに信者数の多い立正佼成会の組織内候補である大島九州男先生の得票数よりも多いので、政治家としては「天照皇大神宮教票」は無視できません。最近信者が増えているとなれば猶更です。
 ちなみに、あくまでも「政治家目線」で言うと、生長の家から支援を受けるのと天照皇大神宮教から支援を受けるのとでは、絶対に後者の方が「有り難い」です。
 というのも、生長の家は最初から国家を変えることを目的としている宗教団体で、政治に関しては熱心な信者程意見を持っています。そのため、生長の家信者から応援されたからと言って、それが常に続くとは限りません。
 象徴的な例が岸信介元総理です。彼はかつて生長の家から熱心に応援を受けていましたが、ある日岸信介が谷口雅春先生に面と向かってその主張が「現実的ではない」と言ったため、翌年から生長の家は岸信介が主宰する自主憲法制定国民会議に動員を一切しなくなりました。
 そして岸信介の孫の安倍晋三元首相の時に生長の家が公式に「反自民・反公明」の声明を出したのは周知の事実です。
 それに対して、天照皇大神宮教は一貫して岸家・安倍家を応援しています。岸家や安倍家の政治家にとっては天照皇大神宮教の方が「有り難い」存在でしょう。
 天照皇大神宮教は天皇の神性を否定している宗教ですが、にも拘らず天皇崇敬の他の宗教と協調できるわけですから、その柔軟さが教勢を維持し政治にも影響力を保持できている秘訣と言えます。
 天照皇大神宮教の教祖は天皇批判を繰り返しながら「今の天皇はやめさせた方がいいんですか」という質問に「やめさせんでもいいよ。おいきょちゃいいよ。」と述べるなど、現実の政治には無関心な態度でした。それが却って政治家からすると関係を深めやすい存在であると言えます。
 なまじ勤皇心のある宗教だと、「神社本庁は天皇陛下に対して不敬である!」と言って金毘羅宮が離脱したような騒ぎが起きます。
 今後の天照皇大神宮教ですが、「神祇不拝」を教義とする浄土真宗やキリスト教がむしろ日本の上流階級に食い込んでいったのと同じような存在となるでしょう。
 もしも日本で今後、明治維新や敗戦に匹敵する政治的な大混乱が起きた場合、却って信者が激増する可能性もあります。注目するべき宗教団体です。

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