見出し画像

トランスジェンダー当事者が求めていない“極端な主張”をどうして繰り返すのか?「性自認に基づく入浴」を求めるTRA活動家の問題点

 トランスジェンダー当事者でもある弁護士の中岡しゅん氏は、かつてWANに次のような投稿をされていました。

 まず公衆浴場の問題について、
 「男性器は付いてるけど、女性用浴場に入りたい、入らせろ」
そのように主張しているMTFがどれだけいるのでしょうか?

 いないとは言いません。いやむしろ、確実にいるでしょう。極端な主張をおこなう個人というものは、当該主張の是非はともかく、どのような属性の集団の中にも必ずいるからです。
 しかし重要なポイントは、いるかいないかではなく、実際問題として、それがどれだけの社会的影響力を持っているか、なのです。

 TwitterというSNSの性質上、そのような主張が悪目立ちしている状況があるのかもしれません。また、どんな人であっても公衆浴場を使えるよう、設備の向上や工夫を考えていくことは必要です。
 しかし、少なくとも今の日本では、上記のようなそこまで尖った主張が、何らかの社会的影響力を持ち得るには到底至っていませんし、またMTFトランス及びその支援者の間でも一般的な見解とは思えません。もちろん、公衆浴場で広い風呂に入りたいという気持ちを持つことはその人の自由ですが、未オペの状態でそれを実践すれば、当人自身にとってもトラブルが生じるリスクが高いことは、大抵の当事者は分かっているからです。

 このように、弁護士という法曹関係者からすると、トランスジェンダー当事者であっても「身体性別と異なる風呂に入らせないのは差別だ!」というのは“極端な主張”であるということです。

 そして実際、私は多くのトランスジェンダー当事者がそのような極端な主張をしている訳では無い、ということを知っています。

 従って、中岡氏も言われている通り、ここで問題となるのは「それがどれだけの社会的影響力を持っているか」ということです。

 私が危惧しているのは、大学教授を始めとする社会的地位のある人たちが、このような当事者の大多数から見ても「極端な主張」を拡散しているという事実であり、そして、そのような主張の影響を受けている人が多い、ということです。

 私は彼らの主張は「トランスジェンダー当事者」とは明確に区別されるべきであると考えます。繰り返しますが、多くのトランスジェンダー当事者はそのような「極端な主張」はしていません。

 従って、彼らのことを仮に「TRA」(Trans Rights Activist)と呼ぶことにします。

 ここで「大学教授」と書いたのは、バイネームで言うと例えば岡野八代同志社大学教授です。

 岡野教授は次のように述べています。

女子大学に入学する女性たちはすべて、トイレも更衣室も同じであることが当然でしょうし、部活動などでは、お風呂も一緒だということが前提とされるでしょう。そして、現在その大半の受験生が未成年であることから、ほぼ全ての学生にとって、適合手術を受けることは不可能なのです。

 念の為に言うと、性別によって入学基準を設けることは大学側の裁量によります。東京医科大学の入試不正の件も、最初から男子大学として設置されていれば、少なくとも法律上は問題ありませんでした。

(と言うか、東京医科大学について「男性の外科医が少ないと困る」という擁護論を出している人がいたけど、そんなに男性外科医が必要ならば、カトリックの神学校同様、男子校にすればいい話だろ、と誰もツッコまないのは何故?)

 なので、お茶の水女子大学が「身体性別」ではなく「性自認」による女性の入学を認めるのは、自由です。何の問題もありません。

 問題は「性自認が一緒だから『お風呂も一緒だということが前提とされる』」と平然と宣う、岡野教授の神経です。

 繰り返しますが、こうした主張は決して、多くのトランスジェンダー当事者が求めている者では、ありません。一部の人間による「極端な主張」です。

 そのような「極端な主張」を“前提”とすべし、という大学教授がいる以上、どんどんトランスジェンダー当事者を含むSRGM当事者の思惑から逸れた議論が展開されてしまいます。なので、私はそうしたTRAの主張を批判しているのです。

 また、こうした問題について「そもそも全裸で入浴するのをやめるべき」と言っている人までいます。彼自身は著名人ではありませんので、晒し上げにならないようリンクを貼るのは控えますが、著作権法上の問題があるので画像という形で出典を明記させていただきます。

画像1

 この主張は今の公衆浴場が「ノンバイナリーを排除している」と言っていますが、もしも風呂を身体性別ではなく性自認で「男湯」「女湯」に分けるとすると、却ってノンバイナリーを含むXジェンダー当事者の居場所は無くなってしまいます。

 また、現在身体性別によって入浴が分けられているということは、トランスジェンダー当事者も入浴したければ身体性別による風呂場に入ればよいのです。トランスジェンダー当事者の入浴を阻害する決まりはありません。

(もしも「女性的な容姿or恰好だから男湯に入るな!」とか「男性的な容姿or恰好だから女湯に入るな!」とか言う人がいれば、それこそルッキズムによる差別です。)

 繰り返しますが、もしも風呂を身体性別ではなく性自認で別けろ、ということでしたら、Xジェンダー当事者、特にAジェンダーやノンバイナリーの当事者が排除されてしまうことになります。そのような事態は断固として阻止しなければなりません。

 また、念の為に言うと「Xジェンダーのことも考えると性別で別ける必要もないのでは?全裸でなければ混浴でも問題ないし。」という人がいたとすれば――これもXジェンダー当事者の多くが望んでいない“極端な主張”ですが――風呂が男女で判れているのはトイレが男女で判れているのと同様、必ずしも全裸なのが理由ではない、という指摘をさせていただきます。

 逆に、全裸でも混浴が行われることはあります。

 私は別に混浴の温泉があっても良いとは思いますが、だからと言って身体性別で別けられた公衆浴場が不要だということにはなりません。

 ましてや、混浴禁止条例が適用されているような銭湯で、身体性別と異なる銭湯に入ることを堂々と記すブログがありますが、これは現行の法令に違反する違法行為ですから、大問題です。

 念の為に繰り返しますが、こうした言動は全て、冒頭で中岡弁護士が言っている通り、多くのトランスジェンダー当事者の意向からはかけ離れた「極端な主張」なのです。

 こうした主張がネット上の匿名ユーザーだけで語られている間は、マトモに相手する価値もない主張として扱われていたでしょう。

 しかしながら、岡野教授みたいな社会的地位のある人がこうした主張に賛同することは、多くのSRGM当事者に対する偏見を生みます。

 極めて残念なことに、私たちはTRAの「極端な主張」が多くのSRGM当事者の意見とは違うことを強調しないといけない状況に追い込まれてしまっているのです。

ここまでお読みくださり、本当にありがとうございます。 拙い記事ではありますが、宜しければサポートをよろしくお願いします。 いただいたサポートは「日本SRGM連盟」「日本アニマルライツ連盟」の運営や「生命尊重の社会実現」のための活動費とさせていただきます。