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社会人1年生からの本の読み方

文化庁の「国語に関する世論調査」によると、「月に一冊も本を読まない人」は、47.3%、「月に1,2冊の人」は37.6%です。週1冊読めば上位15%に入る計算ですが、みなさんどうでしょうか?

特に社会人になると業務関連の本やビジネス本、自己啓発本のようにカロリーの高い本を読むこともありますが、せっかく読んだ本。1年後もしっかり覚えていますか?あるいは10年後は?今回は、20代から得た知識をその場限りのフロー資産にするのではなく、40年使えるストック型の資産にするための読書術として私が実践している方法についてまとめてみましたので、特にこれから社会人を迎える方は是非参考にしていただければと思います。

NoマーカーYes付箋

受験勉強の時などよく引いていたマーカー。たまに中古本なんかを買ったりするとめちゃくちゃ引いている本と出会うんですが、マーカーを引いた数だけこの人は本を読まなかったんだなと感じます。マーカーは目の引いた単語についてのインパクトが強調されるだけで、暗記対策としてはありなんですが、暗記テストは社会人にはありません。

単語を覚える以上にその中身や、文脈、背景がどうなっているのかを理解するというのがなにより重要です。マーカーを引いてしまうとそこが削ぎ落とされて要約された言葉だけしか残らず、結局単語は知っているがロジックが分からない、ただ活字を読んだだけという状況になってしまいます。

そこで付箋です。使い方はマーカーと同じ。気になる言葉、勉強になった言葉のあるページに付箋を貼ります。ただし言葉には貼らないこと。そして、はじめの付箋チェックから数日経ってからまたそこを読み返して自分なりに要約してみるということです。

マーカーだと自然と視線が誘導され、そこだけしか認識に残りませんが、付箋だとどこにそのキーワードがあるか分からないので、その周辺をもう一度読み直さなければなりません。これがいいんです。初めはインパクトのある言葉に衝動的にメモをとりたくなるものですが、1,2日経つ事によってその言葉の本当の意味が自然と自分自身の考え方とブレンドされ、新鮮な形でさらに脳にインプットされます。

このとき、より深く刺さる言葉や文脈こそが本当にあなたに必要な栄養素です。たいがいが、「あーなんか当たり前の考え方だなー。」とか「この言葉は実はもう持っていたなー。」というところで落ち着きます。

必要な言葉を必要な数だけとるためには、しっかり自分を無意識化で整理しておくことです。そのためにマーカーよりも付箋で言葉のインパクトをぼかすことで本質にたどり着けるようになります。

作者を否定しよう

作者という本における神的な存在をあえて否定してみるという読書術です。若干バチあたりな読み方ですが、知識を血肉にするのに一番最適なのは「ロジカルな批判と否定」です。ロジカルというのがポイントです。感情的に否定するのではなく、自己の経験や、第三者が出す数字、見解を調べてロジックのほころびを見いだせないかトライしてみるということです。
「ふんふん、なるほどな。」ではなく、「なんだろう…嘘つくのやめてもらっていいですか?」から読書を始めてみると景色がガラッと変わります。

相手の主張のほころびやロジックの破綻を探し、いじわるにも「それって証拠あるんですかね?」なんていいながら反論を考えてみてください。
「それあなたの感想ですよね?」みたいな感じで煽ってみてください。相手の粗を探して探して、攻めてやろうと本と読む。すると、不思議と相手の主張や背景がすんなり入ってきます。相手を打ち負かそうとすると、誰よりも相手を理解しないとできないのです。

作者の非常に練られた素敵な言葉をそのまま自分の中に持っていくと咀嚼されないまま、人の受け売り状態で脳にインプットされてしまいます。これでは作者の劣化コピーです。大切なのはその言葉の意味を自分なりに解釈をして自分の経験と知識を紐付け、新しい解釈を付加してよりよい情報源として世の中に戻してあげることなのです。そのためにも作者と自分の間での対談をシミュレーションし、知識の壁打ちを、言葉のラリーをしてみてください。

目次はプレゼンの王様

目次はたくさんの示唆をくれます。優れた本は本編の前に目次を読むことでおおよその話の内容が入ってきて、全体像をすぐに理解できます。全体像を把握した状態で本編に入ると、まるで復習するかのように内容が恐ろしいほど入ってきます。もう一つは読書後の目次です。社会人が切っても切れない能力は「読解力」と「プレゼン力」です。本編前に目次を読むのは読解力を、読書後の目次はプレゼン力を養ってくれます。本は長編のプレゼンテーションです。

イントロは世界観をハッキリと認識させてくれたのか、その上で本書が伝えたいミッションは何だったのか、本書の優位性や特異点は、読者の悩みに答えるソリューションの提示が幾重にもなされ、最後は気持ちいい読後感をもって、送り出してくれたか。目次を見てみるとそうした作者あるいは編集者の意図がよく読み取れ、またこれ自身が学びを与えてくれます。あるいは、目次を俯瞰して見ると、この章の後には、この章を入れた方が流れがスムーズだったのにとか、この流れは印象が薄いから重ねておこうといった、プレゼン練習にもなります。優れた本は目次が素晴らしい。新しい視点で本を見ると印象は変わるものです。是非なめ回すように目次を見てみてください

写経をするなメモをとれ

とにもかくにも意味のないこと。それが写経です。本に書いてあることをそのまま写してしまうことです。当然練り上げられた言葉なのでそのまま写経しても結構です。でもそれはただ黒板に書いたものを写しただけで自分の経験値となっていません。そのまま写す場合は必ず自分の所見を書き添えるようにしましょう。

先ほどの作者を否定せよ!との関連ですが、作者から得た知識に自分の経験を上乗せして新しい知識に変えること、次に自分が作者となって、その言葉を推敲して理解してもらえるようにリメイクする。この「作文力」がメモを付記することで培われます。

大学教授には大学教授の、フリーターにはフリーターの、その人にしか語れないことや言葉のトーンがあります。声のトーンは伝えたい人に伝わるように自然と調整されるもので、それは文章でも変わりません。その言葉が誰かの共感を呼びまた新しい知識を生み出すようになります。そのためにも自分をきちんと咀嚼して自分の言葉で語れるようにする、それがメモです。

私は、よくメモをとる時に該当の文章を要約しつつ、自分の意見を加えて、 Google スプレッドシートにまとめています。いつでも得た知識を引き出せる状態にしておくためです。いつでもスマホで見れたり、会社のパソコン、自宅のパソコンで見れるようにしておくことが、大切です。もちろん読書に限ったことではないです。クリエイティブな発想はむしろリラックスタイムに訪れるもの。トイレやお風呂で浮かんだクリエイティブをメモしておくにも非常に重用しています。

とにかく、ふとした瞬間にストックした知識をすぐに引き出し、編集し、書き加えられる環境を構築しておくことが非常に大事で、まさにクラウド系サービスがマッチしています。私はブランディングとかマーケティング、業務で関連する地域活性化、関係人口みたいなワード毎にタブを作って一連の知識として整理をしています。そうすることで大きな概念から小さなテクニックまでありとあらゆる知識と個人の見識が専門タブにたまっていくのです。大切なのは自分の意見も含めて情報を一元化すること。それがいつでも引き出せるという環境を作っておくことが社会人の読書のコアだと思います。

参考を参考で終わらせない

本の最後に参考文献って掲載がありませんか。
あれは非常に大切な情報源になります。知識の深掘りするためには、分からない単語とか曖昧な文脈の単語への理解をしっかりしておかないと、本に書かれている知識の半分の意味も理解していないことになります。

すべてを見よ!というものではありませんが、自分の中で深掘りをしたい知識であったりこのジャンルを突き詰めて自分のストロングポイントにしていきたいな、という時は参考文献を読んでさらに具体的で専門的な知識をつけることで、作者の言いたいことの前後関係が把握できるので、一冊の本から数珠繋ぎで本を読んでみてはいかがでしょうか。

あとがき


学生の頃は暗記をするだけでよかった読書が社会人になると一気に様変わりしてしまいます。学生は「適切な回答」を得るために読書をしますが、社会人は「適切な問題」を得るために読書をします。

そのためには、自分が作者となって物事を先導していくという覚悟が必要でその基礎工事が読書にあると私は思います。月に1冊でもいいです。大切なのは量より質。そのためには実践的読書は不可欠です。するする読める時もあれば、1つの文脈が理解できず1ページの理解に2,3日要してしまうこともあるでしょう。必ず後者があなたの力になってくれます。それが社会人的読書の正しい在り方です。

読書は脳の筋トレです。正しいフォームで適切な回数を継続的に実施することで、最大限の効果を発揮します。スマートな思考は脳の筋トレから!ぜひ社会人の読書ライフを楽しんでみてください。パワー