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海外MBAの比較(1年制対2年制)

海外MBAプログラムについて、1年制と2年制(フルタイム)を幅広な観点から比較してみます。

その中間にあたる期間のプログラムやオンラインプログラムやミッドキャリア向けプログラムもあるぞ、とか細かい指摘は色々あるかと思います。

また、会社派遣の方でプログラム期間の縛りがありそもそも選択の余地がない方もいると思いますが、一旦、この2つの単純な比較で話をしていきます。

個人的には、米国MBAか欧州MBAか(アジアMBAか)以上に、1年制か2年制かの違いは大きいと感じます。

なお、IESE(イエセ)の場合、19ヶ月プログラムと15ヶ月プログラムがあり、サマーインターンシップの有無が差分で、学費は相違ありません。

業界の慣例として19ヶ月プログラムは2年制プログラムとしてみなされ、15ヶ月プログラムは一定程度1年制プログラムの性格を有しています。

そんなことも踏まえつつ、なるべく中立的に考察してみます。


キャリア形成

そもそも大胆なキャリアチェンジを狙う人ほどサマーインターンシップの重要性が増します。

しかし、1年制プログラムだとサマーインターンシップができず、2年制プログラムだとできるというのは必ずしも正しくなく、1年制でもそれが実現可能なようなプログラム設計となっているものもあります。

但し、サマーインターンシップ終了後の内省期間にはそれなりに大きな差が出ます。

サマーインターンシップを行った企業からフルタイム採用の内定を貰ってもその企業に入社しない方の率、つまりその後もフルタイム一本で応募できる企業に応募する方の率はそれなりに高いです。

好例として、過去に、戦略コンサルティング3社でサマーインターンシップをやって、結果、複数のフルタイムオファーをそこから得たものの、もっと手触り感のある仕事をしたいという思いへの気付きから戦略コンサルティングが肌に合わないと確信したIESEの卒業生がいました。

この方は、2年目にじっくり時間をかけて様々な選択肢を検証し、結果として外資系消費財会社に入社しました。

1年制のプログラムではここまでの慎重な検証はできないので、やはりサマーインターンシップができたとしても、1年制と2年制のプログラムではキャリアの文脈でそれなりに差分があるでしょう。

この点は、私自身のプログラム選択基準に言及した以下の記事でも指摘しています。

1年目は働く会社についての考え方について頭が固く、2年目は頭が柔らかくなる、というのは当時の自分自身を含めて、毎年見てきているところです。

他方、海外MBA期間がキャリアのブランクになることが自明な方にとっては、1年制の方が望ましいかもしれません。

自明な方というのは、例えば、社費ではなく私費で海外MBAを目指すものの、卒業後は確実に元の会社へ戻る見込みで、但し、その会社では海外MBAの経験を殆ど評価されず、単純なブランク期間としてみなされかねない方です。

また、卒業後のキャリアについて、入学時点でおおよそ揺るぎようのない確信がある方も、1年制の方が適切かもしれません。

以下の記事で卒業時37歳で外資系コンサルティングファームに卒業後入社する方の事例を記載しました。

キャリアブランクの重みが年齢によって規定されるというのは一定程度は思い込みが入っていると思いますので、安易に年齢で1年制プログラムか2年制プログラムかを判断することはお勧めしません。

但し、海外就職を真剣に狙う場合など、一部例外はあります。

なお、投資銀行のみはサマーインターンシップの経験なしにMBAフルタイム入社は原則不可です。

また、海外経験が少ないけれど海外フルタイム就職を実現したい方はサマーインターンシップで海外経験を積む重要性が非常に高いものと見込まれます。


英語能力


一般的に、英語能力に自信がない人は2年制プログラムの方が望ましいのではないかと個人的には思っています。

1年制プログラムに行って英語が伸びきらないままあっという間に留学期間が終わってしまうと、英語能力で切り取って見た際に、帰国後には「使えない海外MBA生」になりかねません

一般的に、日本人の場合、大学の学部4年間を海外で丸々過ごした人と最大1年の留学で済ませている人の間には相応の英語力の差があることも、その裏付けとなるでしょう。

但し、日本でずっと過ごしていてもこれらの人より英語が流暢な方もおり、特に後者との比較なら多数です。

したがって日本人の場合、やはり英語能力に自信がない人ほど2年制プログラムを選択すべきではないでしょうか。

但し、この法則にもいくつか例外は考えられると思っています。

まず、卒業後の仕事で、留学中と同等かそれを上回る英語使用環境に置かれるケースです。

これは実務を通じて英語力をつけることが十分可能なので、海外MBAの期間を長くする理由づけが減少するというものです。

海外MBA不要論にも繋がり得る理屈ですね。

但し、こういった環境に落ち着く日本人がそうそう多くないのも別の現実です。

次に、留学中の英語環境が「ぬるま湯」である場合です。

留学していて英語が大して伸びないのであれば、闇雲に期間を延ばしても仕方がないかもしれません。

IESEのように、英語圏でないながらキャンパス内での英語での発信を求められる度合いが他校より俄然高い学校もあるので、英語圏かどうかで一概に言えるものではありません。

授業形態(成績評価方法を含む)・コミュニティの雰囲気・日本人の人数など様々な変数によって決まってくるものですが、合計値を見た際に、学校による差はそれなりにあると見受けられますので、個別に可能な範囲で確認すべきでしょう。


英語以外の言語能力

フランス語やスペイン語といった欧州の大陸言語を念頭に置いています。

これらの大陸言語と英語の近似性ゆえに習得は英語に比べて遥かに早いとしても、日本人の場合、予め基盤がある方でない限り、多忙な海外MBA生活の中、1年間で大陸言語をビジネスレベルに引き上げることはほぼ不可能と思われます。

実際、私も1年目の折り返し地点あたりに受けていた某スペイン大手企業のインターンシップ向け選考にて、スペイン語力を主たる理由に落選したほろ苦い経験をしています。

ただ、スペイン語力が格段に向上していた2年目卒業時であれば結果が変わっていた可能性は十分あります。

スペインの企業が全部スペイン語を要求するわけではなく、肌感覚では70%くらいですが、この企業はそれを一定程度期待していました。

2年制のプログラムでも、大陸言語をビジネスレベルに引き上げるには、同言語習得の優先順位を相当上げる必要があります。

1年制なら当然なおさらですが、少なくとも私は1年制のプログラムでその目標を達成した方にお目にかかったことはありません。


留学費用

1年制プログラムを提供するうちごく一部の学校は2年制プログラムを提供する学校の学費を上回りかねないあるいは上回る学費となっていますが、基本的には1年制プログラムの方が安上がりです。

日本人に特化した形で、リターン(卒業後の年収)を学校ごとに分析したデータは存在しないと思いますので、その点についての1年制と2年制の比較は控えます。

したがって、投資対効果の議論はできかねますが、少なくとも費用面での制約が大きい方は1年制プログラムを考慮する価値はあるでしょう。

但し、学校ごとに提供され得る返済不要の奨学金の受給によって判断が変わり得るという程度の金銭的事情の方であれば、2年制プログラムをそれだけで全て切るのはやや早計かもしれません。

人生の夏休み

身も蓋もないことを言えば、何だかんだ海外MBAには人生の夏休み色が伴います。

これまでの記事で明示していなかったかもしれませんが、私もその点は当然考慮に入れつつ海外MBAを目指しています。

1年目が非常に忙しいIESEですら、最低限の稼働だけで見れば2年目はだいぶ忙しさが減りますし、旅行を含めたキャンパス外の活動量が2年目にはどの学校でも通常1年目より増えます。

IESEより忙しくない1年制プログラムの学校も多数あると認識していますが、それでも1年の差分は大きく、時間はあっという間に過ぎ去ります。

他人から見たら意味を見出しにくい人生の夏休み期間あるいは卒業後に向けた充電期間を自分がどれだけ追求したいか、という点も、プログラム期間の検討にあたり、十分考慮すべきでしょう。

誤解を恐れずに言えば、遊び心の大小とも言えるでしょうか。


パートナー・家族の事情

子どもの有無はさておき、また、結婚しているか否かに関わらず、パートナーが留学期間中日本に留まっており、年間最大2回、各1週間弱程度の短期の訪問以外見込めないという方の場合、1年制プログラムの方が良いかもしれません。

時差があっても愛の力で乗り越えるといった美談ももちろん多数ありますが、あくまで生存バイアスであることをご承知頂くべきですし、その逆に当たるストーリーも当然一定数存在しています。

子どもがいないにしても結婚していた方が関係が継続する可能性は高いでしょうが、それでも破綻する時は破綻します。

また、個人的に父親と離れていた期間が長い経験を踏まえると、特に子どもと離れている期間が長いというのは、留学に限らず駐在等でもそうですが、必ずしもお勧めできるものではありません。

但し、家族全員が留学に帯同するというのがその家族にとっての最大幸福とは限らず色んなケースがあると思いますので、この点は個別に検討されるべきでしょう。


新型コロナウィルスの影響

新型コロナウィルスの影響の捉え方は、人によって分かれるところでしょう。

予測困難な就職事情の推移はさておき、留学終了時点が後ろ倒しになればなるほど新型コロナウィルスの海外MBA留学への影響は薄れていくでしょう。

つまり、例えば直近のタイミングを想定するならば、1年制プログラムを2021年9月から開始する方が、留学期間中、最も新型コロナウィルスの影響を受けやすいでしょう。

したがって、社交イベントや国境を超えた移動を伴う学校のイベントや授業を含めた全てを完璧に近い形で体験したい方は、当然2年制の方が相対的に望ましいということになるでしょう。

但し、ワクチンが流通したとしても新型コロナウィルスの(収束ではなく)終息には相応の時間がかかることが予想し、その進行速度が低速なものと考えるならばどうでしょうか。

どうせ完璧でない経験となるのなら他の目的(キャリアや学び自体)を優先してさっさと1年制の短いプログラムで海外MBAを卒業してしまおう、という発想に至るかもしれません。

本項目で記した内容は、2022年9月入学となれば、それなりに変化が生じているかもしれません。

というか、そんな変化が生じているくらいに終息していて欲しいものです。



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