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市場メカニズムを紐解くアプローチ

市場を見極めるための指標として代表的なものが、「市場の魅力度」です。魅力度は通常、市場の規模(どれぐらい大きいか?)、成長性(将来性はどうか?)、収益性(どれぐらい儲かりそうか?)の3つで評価します。1つ目と2つ目は各種統計資料やマーケットレポートを当たれば出てきますので、最後の「収益性」について解説します。

市場の収益性をどう評価するか?

収益性(どれぐらい儲かりそうか?)の評価するために、まず「もっとも儲かりやすい市場」とは何かを考えてみましょう。

例えば、その市場に自社しか存在しておらず、競合も参入して来ないため、こちらの「言い値」で顧客に商品を販売できるような市場は理想的です。このような競争がない市場を完全独占市場と呼びます。反対に、多数の企業が同じような製品を作り、絶えず価格競争を行っているような「競争が苛烈で、全然儲からない」市場を完全競争市場と呼びます。

これらは極端なモデルケースで、そのまま当てはまる市場は滅多に存在しません。ただし、すべての市場は程度の差こそあれ、これら両極の間に「どこか」に位置しています。つまり、「収益性」を知るには、儲かりやすい独占市場と儲かりにくい完全競争市場の「どちらに、どれぐらい近いか」を評価すればよいということです。

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例えば、国内の携帯電話市場は、大手3社がほぼすべてのシェアを握っています。このように数社がシェアの大半を占めている場合、寡占市場と呼びます。この市場に参入するためには、政府から認可(電波の割り当て)を受け、莫大な投資を行って携帯電話基地局やサービス提供体制を全国レベルで整備しなければなりません。したがって、新規参入は容易ではなく、高い参入障壁に守られています。その結果、大手携帯事業者3社は営業利益率で20%程度を確保しており、これは東証一部上場企業の平均値である7.1%を大きく上回ります。

一方、飲食市場は携帯電話事業のような高い参入障壁はなく、無数の企業が存在しています。商品やサービスの差異化も容易ではない上に、家庭内調理や中食といった簡単な代替手段もあります。競争が激しく、儲けを出すのは容易ではありません。もちろん、セントラルキッチン等の効率化を進めて高い利益率を上げられている企業も複数存在しますが、ほとんどの企業はそうではありません。

マイケル・ポーターのファイブ・フォース分析

この「市場の儲かりやすさの違い」に1980年代に経営学者として着目したのが、ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター教授です。名前に馴染みがない方も、彼が発案したファイブ・フォース分析やバリューチェーン分析はどこかで耳にされたことがあるかもしれません。

ファイブ・フォース分析とは、市場構造を「企業間の競争度合い」、「売り手の交渉力」、「買い手の交渉力」、「新規参入の脅威」、「代替品の脅威」の5つの要因(フォース)から業界の魅力度を構造的に考察するフレームワークです。どのような評価項目で判断を行うかは業界によって様々ですが、代表的なものを図中に記載していますので、参考にしてください。

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分析する時の注意点

分析にあたって、いくつか留意点があります。まず、恣意的に定義される「対象市場の範囲」によって結果が変わります。例えば、同じ「自動車市場」であっても、先進国と発展途上国、高級車と大衆車、普通自動車とトラック等、様々な切り口があります。そのどれを対象市場と定義するかによって、市場を取り巻く環境の見方は大いに変わります。自社の市場はどこか(競合企業はどこか)をしっかりと考えた上で分析を行わなければ、誤った結論を導いてしまうことになります。

次に、各要因(フォース)はリアルタイムで変化しており、将来的に市場構造が大きく変貌する可能性を考慮に入れなければなりません。つまり、分析して終わりではなく、各要因のどれが変化しやすい(しにくい)のかを見極めた上で、継続的に動向を注視する必要があるのです。

それから、分析しただけで満足せず、自社の視点を加えた実効性のあるものにする必要があります。例えば、携帯電話市場が「儲かりやすい」のは既存プレイヤー側の視点であり、裏を返すと新規参入プレイヤーは高い参入障壁に阻まれ、恩恵を享受できる市場ポジションを獲得するまでに大きな苦労を伴います。ボーダフォンを買収したソフトバンクのようにM&Aで参入する、楽天のように他事業のキャッシュフローを使いながら参入する等、「自分たちは、具体的にどう攻略していくのか」までを考えなければいけません。

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