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同じ所を擦りむいた

まだ子供の頃 、1番お気に入りだったおもちゃがあった。お人形のももちゃん。どこへ行くにも一緒だった。
子供のこころなんて移り気なもので、実際のところは、新しいおもちゃが登場すると、その座を奪われそうになったりしたことも一度や二度じゃないけれど。
それでも気づくといつも抱えてるのは1番お気に入りのそれだったりした。

目新しい魅力あるものに一瞬は心惹かれるけれど、結局ずっと一緒がいいのは ももちゃん なのだ。

だから、彼が彼女を選んだのは、あたりまえ、なのだと思う。
至極当たり前。わたしは「目新しい」というだけだったのだ。
笑っちゃうけれど今なら、すこしは分かる。

人生という、限られた時間の中で、大切なものにさえ優先順位をつけて選ばなくては、掌から溢れちゃうことも、人間には腕は二本しかないことも、わたし達は知っている。
もうそれは分かってる。どうこうするつもりもないけれど。

でも。
じゃあ、そこに収まりきらなかったものや、選ばれなかったものは、何処へ行くのだろう。掌から溢れてしまったものは?
そもそも何処かへ行けるのだろうか。
ふわふわ漂って、だいすきな海の近くにでも飛んで行けるのだろうか。

会話が少しずつズレて噛み合わないまま萎んで行くように、人生のタイミングも合わないまま進んで行ったら。わたしはどうなるんだろう。どうなって、しまうのだろう。

あぁ今回も少しだけ遅かったね、一等賞はあの子だよ、とか
あの時こうだったら、とか
結局いつもこのパターンだよな上手くいかないななんでだろう。
なんて、ラジオから流れてきた大好きな歌に涙腺を刺激されて 1人で運転中考えたりして。

だから雨の日は、よくない。

失敗からしか学べないと言うけれど、同じキズばかり作ってしまうわたしは一体。

トラウマのようにチラつく記憶は、
あんな思いは絶対嫌だ。まだ戻れる、これはダメって知ってるでしょう?と、必死に頭の中で警鐘を鳴らす。

それなのに、宇宙から見た日本という国にいるすごく小さいわたしが考えるほどの小さな小さな 起こり得ない "もしも" に引きずられそうになる。

壁が壊れるのはほんの一瞬で、そうなったらもう守る術は知らないのに。
なのにいつだって頭と心が一致しない。

ため息をつきそうになるのをぐっと堪えて、窓の外を見つめる。
ガラス越しのぼやけた視界は、きっと雨のせい。
負けたくないなぁ、強くなりたいなぁ、と思うだけなら簡単なのだ。

誰もが泣かない世界なんてないよ。
知ってるよそんなこと。

みんなみんな誤魔化して嘘ついて平気だよ大丈夫だよって言い聞かして何かに縋ってそうやって生きてるはず。
まだ頑張れる こんなこと慣れっこだよ もっと強くならなきゃって。
きっときっと次は って痛いほど純粋な未来を想像して。

雨がやんだら、すこし歩こう。うずくまって塞ぎ込んでしまいたいけれど、それでもわたしは光の射すほうへ行きたいのだ。

読んで頂いてありがとうございます。サポートして頂いた費用は、次の旅への資金にさせていただきます。広い世界の泣けるほど美しい景色や、あふれ出ることばを伝えたい。