見出し画像

【生きるための学びを!】『クリエイティブな校長になろう』(著:平川 理恵)を読んで

前回、平川 理恵さん(広島県教育委員長)を中心とした広島県の教育改革に関する書籍を紹介しました。

今回は、平川さんが横浜市の公立中学の校長をされた際に書かれた書籍を紹介したいと思います。

20代はリクルート社で営業のエース、30代は留学斡旋会社の社長をされていた平川さんは、40代で横浜市の公立中学の民間の校長に就任されました。

彼女の2校8年間の経験をメインに書かれています。読者の対象は恐らく全国の校長先生に向けた記載ですが、そこには生きるための学びのヒントが溢れていました。

校長になって学校を内側から見てみると、先生も学校も、子どもたちのために、ものすごくいろいろなことをしているということに気付いた

クリエイティブな校長になろう

平川さんからは学校の先生に対するリスペクトを感じます。彼女が先生出身ではないからこそ、現場の人たちを尊重し、先生たちが働きやすいように、とは言え、生徒ファーストという前提を持っています。

先生が生徒のため(前提は「学習」という本分に集中しています)に仕事しやすくするため、校長の役割をいくつか定義しています。

・校長は校内外の「広報部長」にならないといけない
・営業、行政との交渉役にならなければいけない
・無駄なお金が発生していないか管理しなければいけない(経理/監査)
・児童/生徒のために無料で使えるプログラムを探す
・ボトルネックにならない

また社長経験もあり、組織経営という観点では、会社組織とは異なる点も言及されています。会社は「売上」というKGI(キーとなる目標指標)が明確ですが、

学校経営(特に公立は)では、「売上」という尺度がなく、学校マネジメントの要諦は「理念」であり、校長の役割はいかにその理念を浸透させるかに説いています。

彼女が校長の時に出していた理念は「自立貢献」。短く分かりやすい内容に特化させ、これを徹底させていきました。

学校と社会をつなげられない校長は、校長としての資格はない

クリエイティブな校長になろう

学校を卒業した先には社会に入っていくことになります。もちろん学校に在籍しているうちから、起業やボランティアなどもっと社会と繋がっていて良いと感じます。

社会での立ち上がりをスムーズにするために「学校」という存在があると多くの人が考えていると思います。

一方で、現在の学校と社会とのリンクがどれだけできているかと言えば、大いに課題があると感じます。

どうしても公教育(学校教育)の分野は意思決定のスピードが社会の変化についていくのが厳しいです。現場では取り組みは行なっているかも知れませんが、構造的に限界があります。

ただ、そこで諦めるのではなく、学校運営のある程度の決定権を持っている校長先生は当書籍のタイトルにあるようにクリエイティブさや社会との連携などが必須のコンピテンシーだと平川さんは伝えようとしています。

「5ラウンド」

英語学習についても面白い取り組みが紹介されていました。これは1年間に5回教科書を繰り返し、討論方式を取るような英語の授業方式です。

従来の授業方法に比べ、「書く・話す」を重視するスタイルと言えます。

子どもが言葉を習得する際には、言語学的に2つの要素が必要だそうです。①fluency(流暢さ) ②accuracy(正確さ)です。

5ラウンドでは間違ってもいいんだという安心感のもと、どんどん英語の言葉を使うことによって、流暢さが磨かれるとともに、トライアンドエラーで徐々に正確さが高まっていきます。

埼玉県熊谷市で市内全中16校に実施したところ、導入前と導入後では導入後のほうが結果が良かったそうです。

また平川さんは、5ラウンドにより「副次的な要素として、5ラウンドを導入した学年は、他学年に比べクリティカルな物言いができる生徒が多い。」と感じたそうです。私は英会話のトレーニングをカナダ人講師と長期間続けていましたが、よく自分の意見を述べた後に「why?」と聞かれました。

日本語の日常的なコミュニケーションにおいて「why?」「because?」という様な会話のキャッチボールは少ないですが、英語(恐らくそれ以外の欧州系の言語も)のコミュニケーションでは、そうした要素が強いと実感しています。

平川さんのような校長先生や教育委員会のトップが生まれ、日本の教育の改革が進むことを切に願っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?