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「くまのぬいぐるみ」(08)

その夜は雨がシトシト降る音が聞こえる中、くまさんのことを思いながら二人は床につきました。
チャックまはいつも通りな感じで、ベッドに入ってしばらくするとスースー寝息が聞こえてきました。
コグマは、いつもならチャックまより早いくらい寝入りが良い方なのですが、今日はなかなか寝付けませんでした。
「くまさん大丈夫かなぁ、寂しくないかなぁ、寒くないかなぁ…」
コグマはいつも寝ているマットの上で何度か寝返りを打ちながら、聞くともなしに雨音を聞いていました。

しとしとしとしとしとしとしとしと…気付くとコグマは夢を見ていました。

晴れたその日、コグマはいつものお散歩道をくまさんを抱えながらチャックまと一緒に歩いていました。するとくまさんは自分の意志でコグマの腕からスルッとすり抜けると、タタタッと走り始めました。
「あ!くまさんが!」
二人はあわててくまさんの後を追いますが、くまさんの走るスピードはとても早く、全く追いつけません。そのうちくまさんが走る先にはまばゆく光るゲートが見えてきました。
「くまさん!危ないよ!」光の実体が見えないのでコグマが大声でくまさんに呼びかけました。それでもくまさんは構わずその光に向かって一目散に走っていきます。
「くまさーん!くまさーーん!戻っておいでーーー」…

「…くまさん…」
夢から目覚めてみると、もう朝でした。光るゲートだと思ったのは、窓から差す朝の陽の光でした。
「…なんだ、朝日か…うん?朝日!?」
コグマは急にガバっと起きました。「チャックま!晴れた!晴れたよ!!」

ウンウン唸るばかりで起きる気配のない(なにしろまだ朝の6時ぐらいでしたから)チャックまを残してコグマは外に出てみました。
スッキリと晴れた、青空のきれいな朝でした。向こうの方にやや白んだ富士山が、それでもくっきりと見えるくらいに空気が澄んでいます。雨上がり、まだ空気が温まりきらない時間帯ならではの気持ちのいい朝でした。

コグマはそのキラキラした目でいっとき、その美しい風景を見回していましたが、嬉しい気持ちを抑えきれなくなると走り出しました。普段は立ち上がって二本脚で歩いたり走ったりしているコグマでしたが、全力で走る時は手をついて四本脚で走ります。この時のコグマはもう、最初から四本脚でした。

「わぁ〜〜〜い!晴れた晴れた!!!」
コグマは全力で走るだけでは飽き足らず、時々立ち止まっては大きな声で叫びました。

やっと落ち着いてきたコグマがまだまだ軽い足取りで家に帰ってくると、チャックまはまだ寝ていました。コグマは椅子を窓の方へと押していくとそこに乗り、役目を全うしたてるてる坊主たちを一つずつ降ろしてあげました。

「みんな、ありがとう!」
テーブルの上に並べたたくさんのてるてる坊主たちを見ながらお礼を言うと、ペンを持ってきました。

コグマはいの一番に自分がつくったてるてる坊主の目を塗りました。心の中では『お願いを聞いてくれてありがとう』と念じながら。
昨日より少しだけ汚れたてるてる坊主も、目を入れてもらってなんだか笑っているように見えました。

09に続く

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