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1「チャックまに出会った日」 (04)

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■コグマ その2「異変」

 相変らずコグマたち三人一家は毎日楽しく過ごしていました。お父さんのお陰でコグマの身体はしっかりした体型になりつつありました。お母さんのお陰でコグマは相当な物知りになっていたんです。狩りについてはちょっとだけ遅れていましたけど、それはナイショです。

 ところがその三人の生活は、ある時を境に徐々に変わっていきました。

 一つの兆候は、遠ーくに見えた一本の巨大な赤い線でした。それに一番に気づいたのはコグマでした。
「おかあさん、おかあさん、あれはなに?」
「さぁ…どうも自然のものじゃなさそうだね」
よおーく見ると、それは鉄の棒が組み合わさったものでした。そう、大きなクレーンだったんです。この自然いっぱいの気持ちのいい丘にも、いよいよ人間の開発の手が伸びてきたのです。

 それ以来、徐々に近くで取れる食べ物が少なくなっていきました。
 狩り上手のお父さんと言えども、食べ物に出会える回数が減ってしまってはたくさん獲ってくるのは無理でした。いつしかお母さんも一緒に狩りに出かけるようになり、それでも前みたいに食べきれないほど持って帰ってくることはなくなってしまいました。

「お母さん、こまったねぇ。コグマはこれからますます身体が大きくなって、食べ物がたくさん必要になっていくのに」
「本当ね、お父さん。今までよりも少し遠くまで出かけていかないといけないかもしれませんね」
「こんなに気持ちのいい丘は他にはなかなかない。できれば引っ越しはしたくないものなぁ」

 仕方なく二人は、丘から少しずつ遠くの猟場まで出かけていくようになりました。そしてそれはつまり、おじいちゃんを殺した人間たちが住んでいる場所に少しづつ近づいていくということだったんです。

05につづく

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