私の「行きつけのお店」
銀座に大好きな小料理屋があります。
名前は「しらたまや」
泰明小学校の近くに構える、日本酒と旬の食材を使った料理が楽しめる、小さな小さなお店です。
始めてお店に行ったのは3年前の9月
Twitterで「歌舞伎が大好きな方が、脱サラして、銀座に小料理屋を開こうとしてる」という話を見て、しばらく追いかけていたら、素敵なお店が出来て、料理も美味しそう…!
当時(大学3年生)、周りに歌舞伎トークができる友人が少なく、「歌舞伎オタクの交流」に憧れを抱いてた私は、歌舞伎ファンが観劇後に集ってる様を見て、「ここだ!!!」とビビッときました
でも20歳になったばかりの私には、日本酒は未知の世界
しかもお酒はほとんど飲めない
(一線を超えると色々迷惑をかけるため、逆に「安全に酒を楽しめる」タイプ)
またコースのみで大学生の財布には、ちょっと厳しい
総合して、"敷居が高い"
でも行ってみたい
結局、怖さより好奇心が打ち勝ち、数少ない歌舞伎好きの友人を誘い、LINEで予約を入れ、逃げられないようにした上で、お店へ
歌舞伎のグッズが飾られた棚
木目が美しい机
可愛らしい椅子
始めて来たのに、なぜか落ち着ける空間
緊張気味の若い女子2人に、女将さんはとても優しく、気付けば歌舞伎の演目や好きな役者の話で大盛り上がり
あまりの盛り上がりに、たまたま隣に座っていたご年配の男性の方が「こういう若い子が歌舞伎が好きだなんて、嬉しいねえ」と、目を細めながら笑っていました。
初めて飲む日本酒はすごく繊細で、これまで口にしてきた飲料の中で、1番奥深い味がしました。
最初にお猪口を選ぶのですが、どのお猪口も美術品のように美しく、迷ってしまうくらい。選んだお猪口にお酒を注ぐと、お猪口がより輝いて見えます。
お酒とお猪口、2つ合わさることで完成されるんだなぁ…
そしてお酒へ。口に入れる直前から、喉を通る最後まで、少しも気を緩めてはいけない。そんな男っぽい緊張感と、女性らしい細やかさが同居する、不思議な感覚。
我ながら「大人への階段を上ったな」と、鼻口が膨らみました笑
お料理もどれも優しい味付けで、ホッとする1品。一人暮らししていた友人は、あまりの安心感に帰り際に「定期的に来ます!」と宣言しました。
初体験でお店のファンになってしまった私は、これ以降、年に数回お店に行くようになりました。
「行きつけ」と言うには程遠い頻度ですが、それでも毎回行く度に、「ただいまー!」と言いたくなるような暖かい空間が待っています。
日本酒の味はここで覚えたと言っても過言ではありません。というか、ここ以外で飲んだことない…笑
このお店には、いろんな人が来ます
遠征で東京に来た人、歌舞伎はほとんど観たことない人、映像きっかけで歌舞伎を観るように人etc…
出身地も年齢も歌舞伎との付き合い方も、バラバラな人たちが一堂に会して、それぞれの歌舞伎愛をフランクに語ります。
時間を忘れて、美味しい料理とお酒をいただきながら、好きなもので語り合える、陽だまりのような空間
そりゃあ猫も安心して寝ます、置物でも
毎回帰る時は名残惜しさでいっぱいです
そして今
お店はテイクアウトを中心に営業を行っています
昨日半年ぶりにお店を訪れました
以前と変わらない空間。むしろ歌舞伎関連の品々が増えていました。
でも客のいない席にはビニールカーテンが敷かれ、目の前にはビニール容器に包まれた料理たち。
お店の雰囲気は何一つ変わってないのに、物寂しい気持ちになりました。所狭しと並んだ歌舞伎の品々も息を潜めているかのよう。
お店を出てから、大好きな眠り猫の置物を見てなかったことに気づきました。
テイクアウトしたお弁当は、東急プラザの屋上庭園でいただきました
あんかけに包まれた冬瓜は優しい味
満願寺唐辛子と舞茸は食感が楽しく
甘めに味付けされたえび豆に箸が止まらず
ししゃもは薫製の香りが鼻を通り抜け
主役のスペアリブの山椒煮はその柔らかさに驚き
大好きなとうもろこしご飯は1粒1粒を噛みしめるように
最初に行った時と変わらない味
でも眼下には忙しなく車が行き交う交差点
目の前には日本酒ではなくペットボトルのお茶
周りに人はおらず、黙々と1人で食べる
ネットでは「オシャレな空間!」と評される場所だけど、今の私にとっては、ただ「お弁当を食べるための空間」に過ぎず
いつもは一品ずつ計2時間かけて味わうところ、癖で三角食べをしてしまい、20分程度で完食
下を向いてばかりいちゃいけないと思うも、空はどんよりとした雲が腰を据え、生ぬるい風が頬をなでていく。
やっぱりあの空間があってこその楽しさだったと再確認しました。
美味しい日本酒を飲みながら、歌舞伎トークで花を咲かせられる世の中に早くなってほしいです。
それまではテイクアウトで楽しみます!
女将さん!全国の歌舞伎ファンの皆様!またお店でお会いしましょう!
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