今一番会いたいけれど、きっと会ってはいけないあの人
今、一番会いたい人がいます。
それは私の職場(小児科クリニック)の隣の駅にいらっしゃるタクシーの運転手さんです。
年配の男性、という情報しかありません。
風貌も分かりません。
でも一番会いたい人なのです。
そしてきっと会ってはいけない人なのだとも思うのです。
クリニックに初めて来てくださったお母さんから
「隣の駅のタクシーの運転手さんに勧められて来ました」
という話を聞いたのはもう5年以上前のことでした。
それから数ヶ月に一人程度
「タクシーの運転手さんに聞いて来た」
と言うお母さんたちが来てくださるようになりました。
クリニックは駅から近いビルの中にありタクシー乗り場が目の前なので、隣の駅から来るとなると、タクシーの運転手さんにとってもお母さんたちにとっても便利な場所にあります。
それで何人かの運転手さんが勧めて下さっているのかなぁと思っていました。
でも何となく気になっていて「タクシーの運転手さんから聞いて来ました」と言うお母さんに、どのように勧められたのかを聞いてみました。
「あそこはこの辺りで一番評判がいいんだよ」
「この辺りの子供たちは他の小児科に行っても、最終的にあそこのクリニックに辿り着くんだよ」
と勧めてくださっていると聞いて驚き、嬉しくなりました。
その後も、何人かのお母さんに聞いてみると、勧めてくれている内容が同じだったのて、タクシーの運転手さんが同一人物だということに気付きました。
お一人の運転手さんが、クリニックの評判を聞いて勧めて下さっていることに驚きました。
ありがたいことだなぁと、じんわりと胸が熱くなりました。
その後も何人か、その運転手さんに勧められたと来院して下さっています。
運転手さんに勧めで当院を知って頂き、実際に足を運んで下さり、本当にありがたいことです。
これだけの方が来て下さっているのは、その運転手さんが乗った方たちから「この運転手さんの言うことならば」と信頼されているのでしょう。
お会いしてお礼を言いたいという気持ちと、でももし会ってお礼を言ってしまったら、そこには「これからもお願いします」的な圧が生まれてしまうかもしれず、会ってはいけないとも思うのです。
悶々としてしまいます。
会って直接お礼を言うよりも、お勧めされて来てくださったお母さんたちが「あぁ、あの運転手さんの話を聞いてこのクリニックにきて良かった」と思ってくださることが一番のお礼になるのではないか、と今感じています。
タクシーの運転手さんから渡された暖かな「信頼」というバトンをしっかりと受け止め、来てくださる全ての方に満足していただけるように、日々楽しみながら努力を重ねていきたいです。
#タクシー #運転手さん #小児科 #クリニック
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