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自分たちの眼鏡_Physician Scientistの挑戦6

tomo_higo

多職種医療介護連携無料アプリケーション”ざいる”をリリース

Simple is best._Physician Scientistの挑戦4で書いた通り、自分たちが訪問診療の現場で感じていた医療介護連携のニーズを満たすアプリケーション”ざいる”を構想から約1年半となる2022年04月01日にリリースしました。アプリの詳細はプレスリリース記事に譲るとして、今回は個人的な開発のモチベーションと開発過程・今後の展望について記事にしたいと思います。

天才研究者たちから学んだこと

なぜ勉強をするのか?子供たちに示しをつけるため、「将来よりよく生きるため」と表向きは言っているが、実際に自分自身の答えとしては「自分の才能の限界を知るため」だと思っている。己の限界を知ることで、自分自身を俯瞰的に見て自分なりの戦い方を考えることが出来るからだ。正に「彼を知り己を知れば百戦殆からず」である。そして自分の才能の限界を教えてくれるのは、決まって天才の存在だ。中高時代から大学生、博士課程、ポスドク時代に至るまでそのステージ毎に現れる天才によって数々の挫折感を味わされ、現実を嫌というほど突きつけられて来た。が、同時にそれだけの数の天才に出会えた自分を少し誇りに思っている。勉強をしないと天才には出会えない、その目利きが出来ないからだ。

2010年から始まった約10年の研究生活でも数人の天才研究者と出会うことが出来た。講演会を聴いて圧倒されたのが、故笹井芳樹先生、瀬藤光利先生(現浜松医科大学教授・同じ高校の大先輩)の2人。そして留学先のボスDr. Chris Bakal。彼らの共通点は、自分たちの知りたいことを知るために生物学の領域を超えてオリジナルのツールを開発していることだった。眼杯組織発生を知るためのコンピューターシミュレーション(笹井先生)、島津製作所との質量顕微鏡(瀬藤先生)、ハイスループットライトシート顕微鏡(Chris)。いずれもが既存のものでは自分たちの疑問が解決出来ない、「じゃあ作っちゃえ」という発想で作られたものである。天才には限界はないんだな、と素直に感銘を受けた。彼らのすごいところはその開発背景にある物理学や数学まで完璧に理解していることであるが、僕自身そこまでは理解出来なくとも「自分のニーズにマッチするものがなければ自分で作る」というマインドは見習いたいと思っていた。

ざいる開発を通じた世界の広がり

そういった天才たちの姿を見て、世の中にない「ちょうど頃合いの良い」多職種連携アプリを作ってみよう、と思ったのが2020年秋。そこから学生時代の後輩プログラマー(医師免許を持つプログラマーという異色の経歴)のツテを辿り、数社のプログラマーと面談させて頂いた。フロントエンド、バックエンドなど全く意味不明な言葉を耳にしながら、クリニックの院長と、僕たちのイメージを具現化してくれそうなプログラマーと契約(結果はその彼が大当たり!)。そこから要件定義→アプリ開発→β版のリリース、とプログラマーと二人三脚で歩んだ。β版というのはバグの嵐で、100件以上のバグを洗い出さないとまともなアプリをリリース出来ないということも知った。一応使えるものが出来ると、今度はそれを売っていく(無料アプリなので広めて行く)フェーズ。作るフェーズは研究に似たものがあり、自分自身もそれほどストレスを感じなかったが、この売っていくフェーズは何から何まで初めての経験で、これは現在進行形。

その中で、最近は徐々にざいるを通した仲間が増えて行っていることを実感している。一貫してサポートをしてもらっているクリニックの院長は今の売るフェーズでは僕より遥かに戦略的で日々勉強させてもらっている。プログラマー、ホームページ制作担当者、β版の試験実装にお付き合いしてくれたクリニックスタッフ、訪問看護ステーションの皆さん、開発過程で相談に乗ってくれたランニング仲間のSEさんたち。そして最近では大学がざいるの取り組みに興味を示してくれ、multimorbidity(複数の慢性疾患を持つ状態)に対する介入方法の一つとなるか証明しよう、というプロジェクトが始動。またざいるを通して薬剤師・薬局さんを多職種連携の輪に入ってもらう(Amazonか薬局か?Physician scientistの挑戦2)動きも始められそうだ。

「ざいるという眼鏡」越しに地域医療を見る

このように従来研究会やミーティングを通して行われて来た「顔の見える関係作り」が、ざいるという一つのプロジェクトを通じて新しい形で出来つつある。ざいるを自分たちのクリニック周辺で使ってもらうだけであれば現時点でほぼプロジェクトとしては完遂しているが、ざいるプロジェクトはさらにその先を目指したいと思っている。これも上記天才たちからの学びによるところが大きい。彼らは、自分が知りたいことを知るツールを開発する→疑問を解決する→新しいツールで違うものを見る→新しい発見・疑問を生み出す、このサイクルを見事に回している。今僕たちはやっと「自分たちの眼鏡」を入手した段階であり、この眼鏡を通して自分たちが感じている多職種医療介護連携問題を解決するのみならず、今までとは違う地域医療の世界を見てみたい。そこでまた新しい課題を見つけ、それに挑みたい。

既にざいるという新しい眼鏡で見え始めている世界・課題もある。一方で、それらを解決するためにはもっと仲間が必要だなということを痛感しており、プロジェクトに興味を示してくれる方・Joinしてくれる方を広く募集しています。



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