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イタリア旅行記2019⑥

■7日目:amコロッセオ観光→pm帰国
8日間のツアーも今日が最終日。朝食は軽く済ませ、朝のテルミニ駅を見に行く。

朝のテルミニ駅

ローマの緯度は北海道と同じぐらいだが、11月でもそんなに寒くなく、秋の装いで十分だった。
やはりイタリアの朝は良い。人がいないからだ。

静かな街並み。朝ならでは

イタリア人はみな朝が遅いので歩く人も少なければ車も少ない。動き出す前のひっそりとした街を眺めつつ、太陽を手で覆いながら歩くのも悪くない。活気のある街もそれはそれで良いが、何というか、人が少ない方が独占感があって好きだ。たまにすれ違う危ない系の黒人を警戒しながらテルミニ駅に向かう。昨日さんざん迷子になって苦労させられたが、後から振り返れば良い思い出になるのだろう。
駅中にあるカフェで一息つこうとコーヒーを頼む。
「ウーノカフェ エ ウーノカップチーノ ペルファボーレ」
注文も慣れたものだ。レシートをもらってサーバで受け取ろうとすると、出てきたのはテイクアウトのカプチーノが2つ。
「注文したのはカフェ(エスプレッソ)とカプチーノだ。それにマグだよ」
「カフェって言ったらカプチーノのことだよ。だからカプチーノ2つで合ってる」
少し口論したが、俺の拙いイタリア語では解決できなかったので諦めた。レジ係が間違えたのか、サーバが間違えたのか、もしかしたら駅中だと作法が違うのか。また俺もカフェ・エスプレッソと正式に言わなかったのもある。というのも、イタリア人が言う「カフェ」とはエスプレッソのことなのでそれに倣っているのだが(フィレンツェではちゃんとエスプレッソが出てきた)、俺がアジア人だから変に気を利かせたのかもしれない。但しカプチーノはエスプレッソより€1(120円)高い。なので店は損しているのだが、あまり細かいことは気にしないのがイタリアの流儀だ。この大雑把さにも、だんだん慣れてきた。
 
カプチーノを飲みながら散歩を続けていたが、寒かったのでテイクアウトで丁度良かった。テルミニ駅周辺の店は少し開いていたが、アメリカンなファストフード店がほとんど。客層も黒人ばかりだったので彼ら用なのかなと思った。少し寄り難い。駅前の大通りから小路に入ると朝8:30でも空いているカフェがいくつかあった。パニーノが置いてあったのでここで朝食にすれば良かったと少し後悔した。何も律儀にホテルで朝食を食べる必要はないのだ。次に海外旅行するときは気ままに朝の散策をして、適当な店に入ってモーニングをしよう。その方が絶対に楽しい。
 
8:45 am、ホテルに戻るとツアー仲間がロビーに集合していた。カプチーノ片手に帰ってきた俺らを見て「どこ行ってきたんだ?」と言いたげな視線が刺さる。それを受けて、俺は少し優越感に浸っていた。朝のテルミニは良かったぞ、と。人の少ない早朝の街並みは良かったぞ、と。誰も知らないひっそりとしたイタリアが、まるで自分だけのものになった気がしていた。
 
ツアー最終日はコロッセオ観光。名所なだけあって観光客はたくさんいたが、感想は特になかった。

コロッセオ外観
コロッセオ中身。中心は結構修復中で機材とかいっぱい

比較するものではないが、ミラノのドゥオモの方が衝撃的だったし、ヴェネチアの街並みの方が感情を揺さぶられた。剣闘士の話や歴史的価値など、人より知識や情報は持っていたと思うが、結局のところ想像していた通りで、サプライズや発見が少なかったからあまり印象に残っていないのだと思う。また東京ドームみたいな大きさと造りなので、目が慣れていたのもあるかもしれない。むしろ隣にあるフォロ・ロマーノ遺跡の方が気になった。ボードゲーマーならニヤリとできるはずだ。

右の高台がフォロ・ロマーノ

11:00 am、コロッセオをひとしきり歩いて、最後の観光が終了。特に未練が残ることもなく、やりたいことをやりきれた、満足感のある旅にできたと思う。欲を言えばナポリやシチリア島にも行きたかったが、それはまた次のお楽しみに。今回のミラノ~ヴェネチア~フィレンツェ~ローマの7日間もかなり弾丸ツアーだったので、次回はツアーはやめて自分たちのペースでゆったり楽しみたいものだ。
 
バスでフィウミチーノ空港へ向かう途中、ガイドさんの締めの言葉がとても綺麗で、今でもよく思い出す。
「あなた達は旅をする前とした後で、必ず違う自分になっています。それに気づくのが旅の一番の醍醐味でもあります。今までイタリアのニュースなんか聞き流していたかもしれない。でも今後はそれが身近なものに変わって興味を持つようになります。ローマ教皇が日本に来るとか、ヴェネチアの水害とか、移民問題とか。今まで【海外のニュース】と思っていたことが、まるで日本のニュースのように感じるようになります。日本のパスタ屋さんに行ったらイタリア語に反応するかもしれない。チーズとかハムを食べたらローマを思い出すかもしれない。そうやって必ず違う自分になっていますので、その変わった自分を楽しんでください。旅はあなた方の人間性に大きなチェンジを与えてくれます。これは旅でしか経験できないことです。とても貴重な経験ですよ」
 
全くその通りだった。
イタリア旅行が決まるまでは何の関心もなかったし、自分が行くとも思っていなかった。知識としてヴェネチアとかオペラとか靴の形をしてるとか、その程度。イタリア語なんか喋れないし、イギリスかアメリカの方が良かったなとも思っていた。
だがひとたび参考書を買ってみるとイタリア語は案外簡単で面白いなと思ったり、観光には興味ないとか斜に構えておきながらドゥオモを見たら「やばい!でかい!」と感動したり、ユートピアだと思っていたら想像以上に移民だらけで治安が悪かったりと、いかに自分が「こんなものだろう」と勝手に決めつけていたかが、よくわかった。ピッツァやパスタも大してうまくない、イタリア人はやる気ないし適当だし、路上駐車もしまくりで景観最悪と、思い描いていたイタリアとは全く違っていたが、それでも新鮮な刺激が沢山あって面白さの方が多かった。良い意味で俺の固定観念を壊してくれた。何事も経験してみないとわからないものだ。
それと、今までは英語圏にしか興味なかったが、ドイツやフランスにも行ってみたいと考えが変わり始めた。もちろんドイツ語もフランス語も喋れないけど、ちょっと勉強すればイタリア語みたいに喋れるようになると思う。180度考え方が変わってしまった。このチェンジだけでも、正直すごく驚いている。
 
あとガイドさんにも恵まれた。最初からおせっかいなぐらい気を回してくれたし、おっちょこちょいで俺らのルームサービスをひっくり返されたりしたけど、それでも笑って良いよと流せるぐらい良いキャラをしてたし色々サポートもしてくれた。フィレンツェだけ現地ガイドに変わったのだが、その人はかなりクセが強く、観光自体もその人の良くない印象に引っ張られてしまった感がある。ガイドさんの良し悪しで旅の良い悪いが決まってしまうのはとても残念だ。
総じて今回は天気、健康、ガイドさんにも恵まれ、良い旅にできたと思う。
 
12:00 pm、空港着。列の誘導とか手続きがものすごく手際が悪いが、もう慣れた。これがイタリアだ。「今日中にチェックインできればいいよ」と軽口を言えるぐらいにはイタリアを理解できてきた。
手荷物検査で俺のバッグが弾かれた(水が入っていた)。その処理を待っていると、職員は目の前を通過しているのに誰もチェックしようとしない。忙しいわけでもなく、バッグは確実に目に入っているのだが、誰も何もやらない。耐えかねて身近な職員に「あれチェックしてくれ」と言ったら、すぐにやってくれた。こういうものなのだ。彼らもやりたくないわけではなく、言われないとやらないのがイタリアの「普通」なのだ。日本だと考えられないが、だからと言って否定するのではなく、「彼らはこういう文化なのだろう」と受け入れる=理解する、のが大切なのかなと感じた。これは日本人同士でも言えることだ。改めて自戒とする。
 
保安検査場を抜けた先はイタリアではない扱いになるので、お土産用のハムやチーズが普通に売っていた(肉製品はお土産不可)。フィウミチーノ空港は羽田の1と2が合体したぐらいの広さなので散策するだけでも大分疲れた。途中Venchiがあったので、ジェラートの食べ納め。

Venchiのカカオ80%ジェラート

ヴェネチアでは高級チョコ専門店とは知らずマスカルポーネを頼んでしまったので、本命のカカオ80%のジェラートを注文。飛び上がるほどではなかったが、そこそこ良い味だった。お土産にピスタチオのチョコバーを購入。これはかなり好評だった。
 
その後は13時間のフライトを経て帰国。8日間のイタリアツアーが無事終了した。初めての海外旅行、初めてのイタリア語や英語でのコミュニケーションと、初めてづくしだったがその全部が良い刺激だったし、学ぶことも衝撃を受けることも感動することも沢山あった。ヴェネチアは綺麗だったし、オペラ座にも行けたし、地下鉄の怖さも体験した。移民問題や治安悪化などの社会問題も肌で感じることができた。観光や他の国に対する考え方も180度変わった。今思い返してみても、とても大きなチェンジだったと思う。
「旅をする前と後では、必ず違う自分になっています。その変わった自分を楽しんで下さい」
本当にその言葉の通り、変わった自分を楽しめているし、少し気恥ずかしさも感じている。良い言葉を残してくれたものだ。とても良い出会いと発見と経験の旅になった。またこんな体験をしたいから、次の旅が楽しみでいる。次はドイツにでも行ってみようか。 終

おまけ:番外編→ イタリア旅行記2019 番外編|tomo_1851 (note.com)

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