遅い者勝ち
「あわてることはない」
この言葉が好きだ。
いままで理解していたはずのものが、どんどん分からなくなる。
知っているつもりだったのに、そもそも知っているとはどういうことかがまるきり分からなくなる。
常識にとらわれない自由な考え方に触発され、一度学んだことを脱ぐ場面はしばしばあることだ。
そんなとき、この言葉を自分に言い聞かせるようにしている。
そして、「よくできなくなったね」と自分で自分を褒める。
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既存の知識や社会通念などが曖昧になり、世界に揺らぎが生じることを恐れているひとは少なくない。
それは、自分を社会の中に固定させ、安定した地位を得たいという情念のあらわれなのかもしれない。
早い者勝ちの椅子取りゲームのようでもある。
だからこそ、誰よりもゆっくり走りたい。
問い続け、長く立ち止まり、そしていちばん最後にたどりつきたい。