頭が良すぎて、大学院の推薦制度を取り損ねた話。①

私は、地方の国立大学に入学した。学部は機械系。大学院の進学率は8割を超え、大学院まで勉強するのは当たり前、という風潮が強かった。

しかし、大学院に進学するには、大学受験と同様に大学院受験をする必要があった。学部4年の8月に入学試験があり、多くの大学4年生は夏休みを返上して受験勉強に励む。受験なので、もちろん一定数の不合格者も存在する。

そんな中で、大学院へ入学試験を経ずに入学できる制度があった。それが「大学院推薦制度」である。

これは、学部1年生から3年生までの成績優秀者が大学側との形式的な面接のみで大学院に入学することができる制度で、この成績優秀者の枠に入りさえすれば大学院へはほぼエスカレーター式に進学できると噂されていた。(あくまで噂であるので、興味のある方は各自通っている大学へ問い合わせてみると良いかもしれない。)

この話は、私がこの成績優秀者になるために3年間、考え、努力し、涙した感動必至のストーリーである。是非最後まで読んで頂きたい。

大学に入学して学部時代、勉強に関しては3パターンの人種に分かれていた。

①大学院の推薦を勝ち取ることを見据えて、コツコツと勉強に励む人達。
②サークルや部活、バイトにやや多めに時間を割きつつ、勉強もそこそここ頑張る人達。ただコツコツっていうよりも、1週間前ぐらいから過去問とかを使って一気に仕上げていく。
③単位さえ取れたらいいという精神の元、上限ギリギリまで欠席してテスト1日前の一夜漬けで乗り切る人達。

自分の場合、1年から2年までは②、3年からは①だった。
勉強以外にも色んなことに手を付けたおかげで、1~2年の成績は悲惨だった。3年生からは専門科目が増えてきて、流石にコツコツ勉強しないと(というより疑問点をすぐに解決するようにしないと)ついて行けないと感じて、バイトやサークルの時間を大分減らすようになった。

そうこうしてるうちに、成績がグングン上がるようになった。1~2年の悲惨な成績でもこのペースで行けば、大学院の推薦に必要な成績まで上がるんじゃね?と思えるようになった。

3年後期までの成績で推薦条件は判定され、3年前期を終えた段階の成績は、極めて微妙なラインにいた。後期に履修する必修の4つの専門科目全てで「秀」を取れば推薦条件である GPA70/100 に到達する。しかし全てで秀を取るのは余りにも非現実的なので、必要のない教養科目2つを敢えて履修しその2つで「秀」を取ることにより、専門科目1つが「優」でも 70/100 に到達するようにした。

つまり、難易度が高い専門科目4科目の内1科目で「優」が1つ出たとしても、教養科目2科目の「秀」でリカバリーすることが出来るという、極めて現実的なプランが完成したのである。

目標が決まれば、あとはそこへ向かい努力するのみ。教養科目の講義中、1年生が後ろの席で内職やらスマホをいじりながらダラダラと講義を聞いている半面、自分は前の席で一心不乱にノートを取り続けた。自分が1年生の時にこれくらい真面目に受けていれば、もっと楽を出来ていただろうに。と後悔した。しかしそんな後悔をする暇があるなら、今出来る努力をしよう、そう考えた。

専門科目に関しては、結構頑張った。ただ、1つは「優」を取っても大丈夫、という気の緩みは多少はあったかもしれない。けど今までの大学生活で一番真面目に勉強していた。

そんな生活をしばらく続け、全ての講義のテストが終了した時、

「勝利」

この二文字が頭に浮かんだ。

教養科目は完璧に近かった。テスト開始後30分経ったら退出可能となり、1年生が次々と退出していく中、自分だけはきっちり90分使ってテスト用紙の裏面まで問題に対する回答を綴り続けた。自由記述欄にも、講義で習った内容を自分の専攻で学んだ内容とどう結びつけ、高めていくかを事細かに記した。

専門科目も、1科目以外はほぼ完璧だった。過去問をフル活用し、同じ志を持つ友と励まし合いながら勉強した甲斐があったと感じた。1科目は「優」でも良いので、及第点と考えた。

この戦い、自分が考え抜いた戦略で勝利した。そう確信した。

そして、3年生の春休み、運命の成績開示の日が訪れた。

学内掲示板へログインし、「成績」の欄をタップした。すると、、、、、


総合成績  GPA 69.96/100


「は?」

文字通り、目を疑った。

何回も目をこすった。しかし、数字は変わることはなかった。

「おかしい、GPAは必ず70以上になるように設定していたはず。60代になることなぞ考えられん。しかも、小数点第二位まで表示するシステムだったのこれ、小数第一位までにしろよ。そしたら四捨五入で70.0になるやんけ。2桁も表示させる必要もないやろ。なんでやねん。」

何かの間違いだと思い、成績の詳細欄を確認した。すると、衝撃の事実が判明した。

専門科目・・・・・4科目全て「秀」
教養科目・・・・・2科目全て「優」


策士、策に溺れる


こうして私は、大学院の推薦制度を取り損ねた。

頂いたサポートは、がん患者さんが生きやすくなる社会を構築するために大切に使用させて頂きます。