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箱夢の話集 第四集

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#yaya

【SS】退屈な女

真夜中、見知らぬ女が訪れる。 「助けて。退屈のあまり死にそうなの」 なるほど、そんな顔を…

Tome館長
2週間前
14

【SS】空耳

クルマは高速道路を走っていた。 「えっ、なに?」 返事がなかった。 「なんだよ?」 やはり…

Tome館長
2週間前
10

【SS】無理心中

「いっそ、私を殺して」 「それなら、一緒に死のう」 若い男女が心中することになった。 理…

Tome館長
4週間前
16

【SS】秘密の集会

こんな夜遅く、秘密の集会があるという。 参加せねばなるまい。 会場は近所の住宅。 顔見知…

Tome館長
1か月前
12

【SS】犀の角

未開の土地に小さな部族があった。 貧しい部族ではあったが 唯一、古くから伝わる宝があった…

Tome館長
1か月前
10

【SS】真っ暗闇

はかどらぬ仕事に疲れ果てた。 もう深夜だった。 少し寒かった。 「そろそろ寝よう」 立ち上…

Tome館長
2か月前
14

【怪談】金縛り

山の斜面をひとり歩いていた。 家族の待つ家に帰るためだった。 岩がむき出しの不安定な足場が続く。 土砂崩れの跡かもしれない、と思った。 滑って転ばぬように注意が必要だった。 帰り道をまちがえたような気がしてきた。 いくら歩いても家が見つからないのだ。 ふと、これは夢ではないかと思った。 じつにくだらない思いつきだった。 そんな冗談みたいなこと、あるはずがない。 なにしろ、こんなにリアルなのだから。 記憶だってクリアだ。 夢のはずがない。 それでも、戯れに意識を集

【SS】混浴

ひなびた温泉である。 見上げれば凍るような満天の星空。 冬の夜の露天風呂というやつだ。 …

Tome館長
3か月前
18

【SS】おねだり

やんなっちゃうよ、まったく。 彼女、耳たぶ噛みながら囁くんだぜ。 「欲しいの。その目玉く…

Tome館長
3か月前
13

【エッセイ】言わぬが花

「言うも花、言わぬも花。  同じ花なら、言うてまえ」 というわけで  皆さん勝手に喋ったり…

Tome館長
4か月前
19

【独白】大猫の町

ああ、大変! 小猫に餌をやったら大猫になっちゃった。 家の塀を壊して大猫は町に飛び出した…

Tome館長
4か月前
12

【SS】薄暗い部屋

夕暮れの薄暗い畳の部屋で 自殺したはずの作家に組み敷かれている。 異常な性格であるという…

Tome館長
5か月前
12

【童話】歌姫

古き良き音楽の都。 ここで歌姫は美しい産声をあげた。 父は骨董品の蓄音機。 母は由緒あるパ…

Tome館長
5か月前
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【SS】イルカの曲芸

イルカなのだが、海イルカではなかった。 川イルカでもなくて、陸イルカ。 海を泳ぐのが、海イルカ。 川を泳ぐのが、川イルカ。 そして陸を歩くのが、陸イルカなのだ。 スラリと二本脚で立っている。 正面から見れば人と区別できない。 ただし、背中に大きな背ビレがある。 肌は白いのに、なぜか背ビレだけは黒い。 「あたし、これから、曲芸します」 人のように喋ることさえできる。 この陸イルカは雌だ。 正面から見ると、少女と区別できない。 ただし、髪を含めて体毛がない。 帽子