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優しく包み込んでくれるSade『Lovers Rock』

こんにちは。いい音楽を紹介したいtoma.toのレビューコーナー、3作目です。今回は気持ちいい風が吹きはじめる秋の訪れにぴったりな、Sadeの『Lovers Rock』です。

Sade(シャーデー)は80年代から活躍するバンドで、ヴォーカルのヘレン・フォラシャーデー・アデュを中心に、ジャズ、ソウル、レゲエなどいろんな音楽要素をミックスした、難しくいうとアダルトコンテンポラリー、簡単にいうと洗練されたスタイリッシュなサウンドが特徴です。

シャーデーは、寡作ながら作品を発表すれば、瞬く間に世界的なヒットになるアーティストで、ミュージシャンたちからも絶大にリスペクトされている、ミュージシャンズミュージシャンともいえる存在。

落ち着いた静かな空間で、さらっと流しておくと実に気持ちのいい、都会的で洗練された音を聴くと、ほんとうにすごいなと、いつも感動に入り浸って聴き込んでしまいます。

家で片付けしながらこのアルバムを流してると、いつの間にかソファでくつろいでしまってるっていうのが、だいたいいつものパターンです笑。

シャーデーという女性のキャラクター、声も魅力的なんですが、それを支えるバンドの男性陣もめちゃくちゃ演奏うまいんですよね。特にギター、サックス担当のスチュワート・マシューマン。サックス、最高すぎ。あんな風に吹けたらな、と。。。

で、本作『Lovers Rock』なんですが、シャーデーにとっては5枚目の作品で、リリース年は2000年。ミレニアムイヤー。

この頃って、いろんなアイドルグループやポップアーティストがCDを売りまくってた時期で、とにかくカラフルでギラギラした音楽シーン(表現が大雑把すぎ…)だったのを覚えてます。バックスやマライア、ブリトニー……とにかく音圧がね、ゴリ押しで「あぁ、これからはこれがメインストリームになっていくんだろうなぁ…」という半ばあきらめムードの中で、必死に音楽を聴き続ける自分がいました。なんかほんとに、必死だった気がします。何か音楽に対して、新しい可能性のようなものを見出したかったんでしょうかね。。。

そんな中、シャーデーの新譜がリリースされるというので、やっぱり時代には逆らわず今風の作品をリリースするんだろうなーと思っていたら、このアートワーク!うわ、この人、全然時代に流されてない!と。。。

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ベージュの背景に、シャーデーの横顔、あとはタイトルのみという、いたってシンプルな構成。首筋にかかる光が、やわらかくて全体をソフトに彩ってくれてます。

ちなみに、うちはこのレコードを常に見えるところに飾ってます。観葉植物のグリーンとの相性もバツグンです。

内容もシャーデーならではのアコースティックでソウルフル、ジャジーな音が満載。なんだろう、音って、ここまで削ぎ落として研ぎ澄ますことができるのかと──はじめて聴いたときは衝撃的でした。周りの音楽は妙にさわがしいものが多かった時期なので。。。

Side A
1. By Your Side
2. Flow
3. King of Sorrow
4. Somebody Already Broke My Heart
5. All About Our Love
6. Slave Song
Side B
1. The Sweetest Gift
2. Every Word
3. Immigrant
4. Lovers Rock
5. It's Only Love That Gets You Through

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中でも「By Your Side」「All About Our Love」は癒されます。アコースティックサウンドがね。

意外と1番好きなのは、タイトルトラックの「Lovers Rock」かな。ゆったりしたリズムに乗せてサラサラっと歌い紡いでいく感じ。代表曲には含まれるような曲ではないようですが、何度でも繰り返し聴いてしまう、一種の中毒性がある名曲だと、思います。ここから最後の「It's Only Love That Gets You Through」への流れでノックアウト……。

2000年以降、シャーデーの音楽はレゲエの要素が一層色濃く現れてるように感じます。あのなんとも言えない浮遊感は、そうした部分から感じるのかも。まるでゆりかごを手で揺らすような──。

実際、この頃の彼女は結婚や出産などプライベートも充実してたときなので、そうした面もかなりサウンド面に影響を与えてます。

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シンプルに表現する、というのは難しいことだと思うのですが、いつの時代もそれをやってのける人がいます。でも、それには想像もつかないほどの葛藤とか乗り越えるべき問題というのがあって、時間をかけて削ぎ落としていくという、途方もない作業を要するものなんだと思います。

削って、削りきって、最後にできるカタチ。

シャーデーの音楽を一言でいえば、そんな感じですかね。

時代に流されない、ではなく、自分のありのままを受け入れて、自分を見失わない──うーん、簡単に言うけどねっていう。でも、そうありたいもの。

息苦しさを感じることの多い時代に生きる中、ちょっとした安らぎを感じたい人には、ぜひおすすめな1枚ですよ。​


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