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読書「新聞記者」

新聞記者
著者 望月衣塑子

当時の菅官房長官への質問で
印象に残っていた女性記者の本です。

本書は彼女の人生と追っている報道の
両面が書かれ、小説を読んでいるようにも
感じました。
とてもストレートに感情や思いが伝わって
きて読みやすく、
また報道や当時の政治状況などを
記者の目から見るというとても興味深い
内容になっていました。

記者という職業は本当にタフでなければ
できないなと感じました。
著者もストレスからの腹部の激痛という
想像するだけでも辛そうな病を抱えながらも
プレッシャーの強い仕事に精力的に
励んでいっています。

彼女の親が他界したことにも
触れられていますがそこは読むのが
辛かったです。

著者自身どんどん有名になっていく
中で、同じ記者である彼女の夫が
SNSの好意的な方からの指摘は
受けた方が良いとアドバイスするのですが
続けて

「ただし、お前は見るな。気持ちが病んでしまうだろうから。
俺がチェックして、何かあれば連絡するから」
新聞記者
第4章自分にできることはなにか

といったとあります。
めっちゃカッコいいですよね。

本書にはカッコいい仕事をする人達が
たくさん書かれています。
気骨のある記者、会見で彼女を見て
助けてあげないとと駆けつけてくれるように
なった記者などなど。

バッシングする人が多ければ
それだけ強烈な見方もついてくるの
でしょう。

考え方や思想は人によってそれぞれですが
この著者の存在は、明らかに
今の政治への無関心な世の中に
良い影響を与えていると思いました。
記者という仕事へ憧れる人も増えたのではと
思います。

実際東京新聞には大きな反響があり
新規購読者も増えたとあります。

本人がはじめにで
正義のヒーローや反権力記者のレッテルを
はられるのも実際の自分とは距離があると
触れていますが、
著者を持ち上げるような感覚で人々が見ると
この方の仕事や思いを理解できないでしょう。

こういう考えを持った一人の記者がいて
さて自分はどう考えるか?と政治に
関心を向けていくことこそが
とても大切なのではと感じるのです。

残念ながらマスコミが政治家を叩いたり
政治家から見るとフェアと思えない報道を
してきている事実もあると思うのです。
では問題はマスコミにあるのか?と言うと
私は政治家もマスコミも問題あるだろうが
一番問題ありなのは無関心な国民ではと
思います。

本書で著者がキャスターに言われた
言葉が印象に残っていると書いてます。
安保法案の審議中、メディアはその法案の
中身をきちんと議論すべきだったが、SEALDsを

「今時の若者らしくてシンボリックだと祭り上げる一方で、彼らが非難を浴びたときに守るわけでもない。臆病なメディアが他人を使って報道している面もある、表立って責任を取りたくないのだ、と」
新聞記者
第4章自分にできることはなにか

SEALDsを扱うのは良いと思うし、
今の若い世代の人達は本当に勇気をもって
声を上げたり活動をしたりと、
その考えに同意するかは別として
素晴らしい活動を続けていて尊敬出来ます。

しかし、この話が本当だとするならば
そうしたメディアによってより
政治への無関心が進んでいるかもしれません。

自分は責任は取りたくない。
自分がやってもどうせ世の中変わらない。
こういうのは考え方と言えるものではなく
思考停止とも言える無責任感ではと
思うのです。
また報道番組というのはある程度の
信ぴょう性のある内容を扱っているはずだと
思っていましたが、安易にネットの声等と
匿名で書かれ本当に信頼できる声かどうかも
分からないようなものを、いかにもこれが世間の声の
ように扱っていることも増え最近は報道番組
それ自体の質が疑問に思えます。

著者があとがきでガンジーの以下の
言葉を紹介しています。

あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである。
新聞記者
あとがき

ちなみにこの方のことはドラマなどにも
なっているそうですが(ネットフリックスで
赤木さんに関するドラマらしいです)
未見のため詳しくは分かりません。

赤木さんの奥さんが裁判が終わったことで
記者会見を開いているのを見ましたが
本当に可哀そうで、一体なぜこんな事件が?
といまだにもやもやします。
この問題については追及を続けて欲しいです。
自殺した方への対応の仕方は
国が命に対してどう考えているかを示すでしょう。
悲しい事にこの国は自殺の多い国ですが
政治家にとって一人の政治家の自殺とは
簡単に忘れられていくものなのでしょうか。
そう受け止められても仕方のないような現状が
あるように思えます。

この著者のような気骨ある記者がどんどん増えて、
ますます記者という仕事が良い意味で注目されて
いけばと思いました。

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