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ゲームセンターでのbeatmania IIDXのライブ配信の音響について(その2:ゲーミングマイク編)

[Attention!!]
 
この記事は、ゲームセンターでのbeatmania IIDXのライブ配信の音響について(その1:序論)を受けたものになっています。
 そのため、その1を読んでいないという人は上記リンクから一読するのをお勧めします。


この記事の流れ

メインはマイクの設置方法や音量調整の目安などを説明する部分になっていますが、そこの理解を深める目的で予備知識の項を記述しています。

予備知識は配信に限定されない音響関係の汎用的な説明かつ、かなり長めのもの(約3,000字)になっているので、その辺りの話に明るい方やOBS周りの設定方法だけがわかれば良いという方については読み飛ばしていただいても差し支えありません。

なお、Youtube上の動画やライブ配信の音響と密接な関係にあるラウドネス・ノーマライゼーションについては記述を避けますのでご容赦ください。
(本当は突っ込んだ話をしたいけど、自分自身の知識が固まりきってない+他の人がもっと詳しく説明しているからやりません)

前書き

早速ですがクイズです。
以下の2つの動画は同じマイクかつ同じゲイン設定でマイクの高さだけを変えて録画を行いましたが、マイクの位置が高いのはどちらの動画でしょうか?
(Youtubeの一定音量機能が使える場合はオフにした上でご覧ください)


【ネタバレ回避代わりの使用機材紹介コーナー】
 マイク:FIFINE AmpliGame A8
 卓上スタンド:KIKUTANI AD-11


……ぶっちゃけ、録った本人がブラインドで判定してもほぼ確実に分からないレベルの差しか出ていませんが、マイクの位置が高いのはパターンBの動画です。

各動画の右下に表示しているOBSの音量ミキサーに注目すると、曲の前後で曲名をコールしている時の声のピークに違いが出ています。
パターンAとパターンBではマイクの高さが約11cmしか変わっていませんが、それだけでもマイクに入力されている声のピークが2~3dB上がっています。
(両方の動画でなるべく同じ距離かつ同じ声量で喋るようにはしましたが、一言一句まで同じ内容を喋ってるわけではないので簡易的な対照実験ということで許して☆)

また、ゲーム音と店内環境音についてはそれぞれの動画でほとんど差が出ていないのがわかるかと思われます。
打鍵音についてもマイクの集音部からやや外れるようなセッティングにしているので、パターンBの方が若干小さいかなという程度の差になっています。

上記の内容を整理すると、高さが多少変わったところでゲーム音・打鍵音・店内環境音に大きな影響が出ないのであれば、マイクはなるべく口元に近づけられる方が声を通しやすくなるし全体的な音量調整の幅も広がると言えます。


【おまけ:マイクのセッティングの画像】

パターンAのセッティング
パターンBのセッティング

予備知識①:ゲーミングマイクについて

HyperXやRazerなどの製品でよく知られているゲーミングマイクですが、音ゲー配信に限らず使用している人が多いようなので、配信用マイクと言えばゲーミングマイクという認識が一般的なのではないでしょうか。

ただ、以下に記載しているゲーミングマイクの長所と短所を考慮すると、ゲームセンターでの音ゲー配信にはあまり適していないとも言えます。
(ゲーム音のライン録りができない場合は、すべての音を集音させるためにゲーミングマイクを使わざるを得ないという側面もありますが……)

 長所
  ・コンデンサー駆動+単一指向性で綺麗に音が録れる
  ・パソコンにUSB接続するだけで使える
  ・集音部の角度調整ができる(製品によっては不可)
  ・本体のツマミでゲイン調整ができる(製品によっては不可) 

 短所
  ・長所の反面で広範囲の余計な音も拾いやすい
  ・感度が高いのでオンマイクで使うと音割れしやすい
  ・マイクの高さを調整できるものが限りなく少ない

後述の予備知識③にかかってくる部分になりますが、音ゲー配信をするのにあたっては上記の短所のうち「高さの調整ができない」のが致命的です。
理由としては、オフマイクで使用する前提のゲーミングマイクであっても、筐体のコンパネに置いただけの低い位置で声を適切に集音させるのは至難の業であるからです。

予備知識②:音量ミキサーのピークメーター

一番強調したい音のピークは赤色のエリアまで持ち上げる
副次的な音のピークは黄色のエリアで制御する
これを守るだけでも全体の音量を稼ぎつつ比較的メリハリの効いた音響になります

OBSの音量ミキサーには、選択しているシーンに組み込まれている音声ソースがどのくらいの音量になっているかを示すピークメーター(レベルメーター)が常時表示されています。
(もし音量ミキサーが表示されていない場合は、OBSの画面上部メニューのドックから呼び出してください)

基本的にはピークメーターが赤色に近づくほど音量が大きくなるという認識で大丈夫ですが、メーター全体が赤色に変わっている(0dBを超えて入力されている)状態は音割れが発生していることを示しているので、その際はゲインを下げたりマイクを離したりして音割れを回避してください。

なお、以下のようなケースではメーター全体が赤色に変わっていなくても音割れが発生しているので、音量調整は必ず音声モニタリングとメーターチェックの合わせ技で行うようにしましょう。

  • マイク本体のインプットゲインが高すぎたり、音源からマイクまでの距離が極端に近いことなどによって、OBSに入力される前から音割れが発生している場合(OBS側でボリュームを絞ってメーターが上がらなくなってる時に起こりがちです)

  • OBSの音声フィルタでリミッターを適用して、そのリミッターに設定しているしきい値にメーターが張り付いている場合(厳密には音割れとは異なる状態にはなっていますが、入力されている音声が極端に大きいという点では音割れと同義です)

また、音量の大きさを示す単位は「dB(デシベル)」となっていますが、これは通常使われる単位とは異なり、「10と20で2倍の差を示す単位ではない」ということに注意が必要です。
(元の音量から1dB変わると約1.1倍、3dB変わると約1.4倍、6dB変わると約2倍、10dB変わると約3倍、20dB変わると約10倍の変化量が生じます)


【注釈】
VUメーター(アナログ式の音量測定器)に馴染みのある人の中には「メーターが赤色に入るとマズいんじゃないの?」と思われる人も居るかもしれませんが、OBSのピークメーター上ではむしろ一番強調したい音のピークを赤色に入るくらいまで持ち上げる方が良いです。

理由としては、①0dBを超えなければ少なくともOBS上では音割れしないから②一番強調したい音のピークを-15dB前後にした上で他の音とのバランスを取ると全体的な音量が小さくなりすぎるから、です。
(②に関してはYoutubeの一定音量機能で補正されることもありますが、2024年6月現在ではライブ配信中に適用されない仕様になっているようです)


予備知識③:マイクが拾う音について

基本的にゲームセンターは騒がしい空間なのでノイズは避けて通れません
ノイズと格闘したくないという人は店舗ごと貸し切りましょう(?)

ゲーミングマイクの特性上、極端にインプットゲインを絞らない限りは筐体スピーカーからのゲーム音・打鍵音・配信者の声に加えて、店内環境音(ノイズ)を拾うのが普通です。

上記4種類の音を配信で強調したい順に並べると、配信者の声→ゲーム音+打鍵音→店内環境音になる人が大半かと思われますが、左記の順になるように調整するためには音の種類ごとに以下の特性を把握する必要が生じます。

 配信者の声
  音の大きさ:人によって変わる
  マイクまでの距離:人によって変わるけど打鍵音よりは遠い

 ゲーム音
  音の大きさ:凄く大きい(エフェクターの設定次第で変わるけど)
  マイクまでの距離:少し遠い

 打鍵音
  音の大きさ:大きい
  マイクまでの距離:近い

 店内環境音
  音の大きさ:店によって変わるけど基本的には小さい
  マイクまでの距離:遠い

また、音そのものの特性として、発生源から離れれば離れるほど小さくなっていくというものもあります。

前書きと一部重複するような記述にはなってしまいますが、ゲーム音と店内環境音については音源からマイクまでの距離がかなり離れてしまっているので、マイクの設置方法を多少変えたところで音響は大きく変わらないということが言えます。

その反面、配信者の声と打鍵音については音源からマイクまでの距離が近く、高さの調整ができないゲーミングマイクだと距離がより近くて大きい打鍵音に声がかき消されてしまうのは当たり前だということも言えます。
高さが調整できる卓上スタンドを持っているという場合は話が変わってきますが、そうでない場合が大半だと思われるため、音声フィルタのコンプレッサーなどを駆使して音声の微調整が必要になることが多くなると見込まれます。

予備知識④:OBSの音声フィルタについて

音声フィルタは上から順番にかかっていくのでリミッターは一番下にしましょう
各フィルタ名の隣に表示されている目玉っぽいマークをクリックすると
フィルタの適用の有無が切り替わるのでモニタリングの際に使うと便利です

序論でも記載した通り、OBSの音声フィルタは音響の微調整を行うために適用するものとなっています。
また、基本的には「マイクの設置方法を変えるだけで必要十分な音響になるのなら無理に使う必要はない」ものであることにも注意が必要です。

ただし、上記②で説明した通り、ピークメーターで0dBを超えた音は音割れが発生してしまうので、その音割れをあらかじめ防止するために「リミッター」のフィルタだけはマイクのソースに適用しておくのをお勧めします。

リミッターのフィルタを適用すると「しきい値(閾値)」「リリースタイム」を設定する必要が生じますが、以下の数字を設定しておけば概ね問題ないかと思われます。
 しきい値:-1.00dB
 リリースタイム:50~100ms


【注釈】
リリースタイムは「リミッターが作動した後、しきい値以下の音量に下がった時にリミッターを解除し始めるまでの待ち時間」を調整するパラメーターです。
そのため、リリースタイムを極端に短くしたり長くしたりすると、大きな音から小さな音になる途中で不自然な聞こえ方になる恐れがあることに注意が必要です。



パターン①:ゲーム音のライン録りができない場合

前置きが長くなってしまいましたが、ここからはマイクの設置方法やOBS上での設定方法などを具体的に説明していきます。
なお、マイクの高さを調整出来る場合(A)を先に説明した上で、マイクの高さを調整出来ない場合(B)の相違点を説明していくので、この項に関しては上から順番に読んでいくのをお勧めします。

A-1:マイクを置く場所・マイクの高さ・集音部の角度を決める

プレイスタイルがSPかDPかでマイクを置きやすい場所は若干変わってきますが、基本的にはコインシューターの真上スタートボタンの隣の2ヵ所にしか置けないと思っておいた方が良いです。
(上記の設置場所はライトニングモデルを基準にしています・旧筐体の場合はエフェクターの前に置くのがベター)

どこに置くかは好みの問題になりますが、特にSPの場合は実際のプレイ中の姿勢を考慮した上で置く場所を決める方が声が入りやすくなると思われます。
身体を斜めにする傾向のある人はコインシューターの真上に置いた方が良い時もあるので、筐体上で両方の場合を試してみましょう。

置く場所が決まったら、次はマイクの高さと集音部の角度を調整します。
マイクの高さの調整には限度があるかと思われますが、可能であればマイクが目に入らない程度の高さ+口元から30cm程度の距離に調整するのがベターです。
また、集音部の角度は口元に真っすぐ向くアングル(高さにもよるけど30°~60°くらい)にしましょう。

A-2:OBSで音声モニタリングをしながら音響を調整する

マイクの設置方法と同じくらいにはこの手順が重要になっていると言っても過言ではありません。

2~3回の調整でちょうど良い塩梅まで辿り着くのは難しいですが、音声モニタリングしながら調整すれば滅茶苦茶な音響にはなりにくいので、回数を重ねて精度を高めていく心持ちで頑張りましょう。

なお、音声モニタリングの際は、モニタリング用のイヤホンなどのボリュームを一旦ゼロにした状態でマイクに声などを入れて、音量のピークが目標の辺りまで届いていることを確認してから徐々にボリュームを上げていくのをお勧めします。
上記とは逆に、最大ボリュームから下げていく方法だと突発的な大音量で耳を傷めたりイヤホンなどを破損する恐れがあるので、絶対に行わないようにしましょう。

  1. マイク本体のゲインを50%+OBSの音声ソースのボリュームは下げないままにした上でそれぞれの音の集音状況を個別に確認し、目標の音量に近くなりそうなゲインを探る

    ゲーミングマイクはかなり感度が高いので、マイク本体のゲインを100%の状態から調整しようとするとほぼ確実にすべての音が0dBを超えて音割れを引き起こしてしまいます。
    そのため、まずは50%の状態で声を出したりやゲーム音を鳴らしてみたりしてピークメーターをチェック→目標の音量に近くなりそうなゲインを探る、の手順の方が手早く済むかと思われます。
    (マイク本体でゲイン調整ができない場合はOBS側で調整してください)

    それぞれの音の集音状況の確認方法と音量のピークの目安は以下に記載していますので、まずはこの数字に近くなるように調整してみてください。

    配信者の声
    音量のピークの目安:-5dBを超えないくらい
    確認方法:本当は筐体上にマイクを設置した状態で喋るのが好ましいですが、筐体近辺からだと配信用PCのモニタを確認できないことが多いかと思われますので、マイクを持ち上げて口元との距離を意識しながらモニタの前で喋って確認する方法をお勧めします。

    ゲーム音
    音量のピークの目安:-15dBを超えるくらい
    確認方法:筐体上にマイクを設置し、モードセレクト画面で普段使うエフェクター設定を適用した状態で確認することをお勧めします。
    なお、エフェクターで音量を絞るような設定にしている人は、OBSの音声フィルタでコンプレッサーを適用した上での調整が必要になる場合があります(コンプレッサーの調整方法に関しては後述)。

    打鍵音
    音量のピークの目安:-10~15dBの間で行ったり来たりするくらい
    確認方法:筐体上にマイクを設置し、普段の力加減で鍵盤を叩いて確認してみてください。
    ただ、声とゲーム音が上記の目安に合っているようであれば打鍵音が極端に大きくなることはほとんどないので、あまり神経質になる必要はないかと思われます。

    店内環境音
    店内環境音についてはなるべく小さくできるのが理想ではありますが、配信を行う店舗によって千差万別になる+自力でどうにかできる要素ではないので、上記の音3種類の調整が完了した後に筐体上にマイクを設置した状態で音量のピークが-25dBを超えていなければ特に対応せずに無視してしまった方が良いです。

    どうしても店内環境音を低減したいという場合はOBSの音声フィルタで「ノイズ抑制」を適用することで対応はできますが、2種類のノイズ抑制それぞれに以下のメリットとデメリットがあるので、必ず音声モニタリングを行った上で適用の是非を判断してください。

    RNNoise】
    メリット:20~30dBレベルの強烈なノイズ除去ができる
    デメリット:高負荷な処理になるのでPCの性能によっては配信にガタつきが生じるなどマイナス方向の影響が出る・メリットの反面で意図しない音消え(不要なノイズ除去)が発生することがある

    Speex】
    メリット:RNNoiseほど負荷が高くない・抑制の効き具合を調整できる
    デメリット:抑制レベルが低いとノイズ除去がかかっているのかどうかがわかりにくい・抑制レベルが高いと元々の音質に対して著しい劣化が生じる

  2. ゲインの当たりがついたら、すべての音のバランスが取れるようにマイクの位置や高さなどを微調整して音響を固める

    音響を固めるのにあたって、最大の不確定要素は配信者の声量です。
    配信用に大きな声を出せるような人も居れば、普段の生活と同じような声しか出せない人も居るので、明確にこうすれば良いという方法を提示することはできません。

    そのため、まずは自身の声の振れ幅を把握した上で、大きな声が出せる人はマイクを少し離してみたり、あまり大きな声が出せない人はマイクをなるべく近づけてみたりという微調整をすることで音響を固めていくのをお勧めします。

    もし上手くバランスが取れないという場合は、とにかく声が一番大きく入るような音響になるように調整しましょう。
    ゲーム音が多少小さくても、声がキッチリと配信に乗っていればリスナーとの交流ができないという最悪の事態は回避できるからです。

  3. それぞれの音の音量差が大きすぎるという場合は、OBSの音声フィルタで「コンプレッサー」を適用して調整する

    上記1で記載したように、エフェクター設定で音を絞っている場合はゲーム音の集音が上手くいかない可能性が出てきます。
    この場合、コンプレッサーのフィルタを適用すると「大きな音(声と打鍵音)を潰した上で、小さな音(ゲーム音)を引き上げる」ことが可能になります。

    コンプレッサーは設定するパラメーターが多いので少し難しそうに見えますが、
     ①設定したスレッショルド(しきい値)を超えた音を
     ②設定した比率でピークを下げて
     ③ピークが下がった分に合わせて出力ゲインを上げる

    という仕組みになっているので、パラメーターを調整する際も上記の順で数字を決めていくのをお勧めします。

    なお、集音状況によってコンプレッサーの設定方法は激変してしまうので、以下に一例を記載しておきます。
    実際に設定する場合の参考にしていただければ幸いです。

    【例:声のピークが-5dBまで届いているけど、ゲーム音のピークが-20dBまでしか届いていないので-15dB辺りまで引き上げたい場合】
     比率:3.00:1~4.00:1
     しきい値:-12dB~-15dB
     アタックタイム:3ms~6ms
     リリースタイム:50ms~80ms
     出力ゲイン:4dB~6dB

Noteの仕様で文章の途中に挿しこめなかったので
申し訳程度にケツに置かれているスクショくん.png

B-1:マイクを置く場所・集音部の角度を決める

基本的にはA-1と同じ手順で大丈夫ですが、高さが調整できない影響でマイクの集音部と鍵盤の距離が極端に近くなってしまうので、集音部はなるべく鍵盤を外しつつ確実に口元に向くような角度にしましょう。

B-2:OBSで音声モニタリングをしながら音響を調整する

こちらもA-2と同じ手順で大丈夫ですが、高さを調整できない影響で声を適切に集音するのに苦労する可能性が高いです。
そのため、以下の2パターンのどちらかを選択して音響を調整することをお勧めします。

  1. プレイ中は一切喋らない+選曲時間などでマイクを持って喋る前提で、打鍵音とゲーム音のバランスを取る方法

    こちらの方法は、コンプレッサーで打鍵音を潰した上でゲーム音とのバランスを取るやり方になります。
    プレイ中は集中して全く喋らなくなるタイプの人や、地声があまり大きくないタイプの人にお勧めです。

    【例:ゲーム音のピークが-15dBまで届いているけど、その影響で打鍵音のピークが-5dBを超えてしまっているので打鍵音を潰したい場合】
     比率:5.00:1~7.00:1
     しきい値:-8dB~-10dB
     アタックタイム:2ms~5ms
     リリースタイム:50ms~80ms
     出力ゲイン:0dB~1dB

  2. プレイ中も喋る前提で、マイクを置いたまますべての音のバランスを取る方法

    こちらの方法もコンプレッサーで打鍵音を潰してバランスを取るやり方ですが、ゲーム音に負けないレベルの声を出せることが前提条件になるので人によっては選択できないことがあります。
    地声が大きくて常に喋るタイプの人にお勧めです。

    【例:声のピークが-15dB、ゲーム音のピークが-20dB、打鍵音のピークが-5dBになっているので、打鍵音を潰して他の音を引き上げたい場合】
     比率:4.00:1~5.00:1
     しきい値:-10dB~-12dB
     アタックタイム:3ms~6ms
     リリースタイム:50ms~80ms
     出力ゲイン:3dB~5dB


パターン②:ゲーム音のライン録りができる場合

パターン①と異なり、この場合はマイクでゲーム音を集音させる必要がなくなるので、マイクの高さを調整できるのであればマイクのゲインを少し絞り気味にして声だけを強調するやり方(C)をお勧めします。

なお、マイクの高さを調整できない場合にライン録りを併用しようとすると、マイクに集音されるゲーム音と二重になって音響が整いにくくなります。
そのため、ライン録りはあえて使わずに上記Bのやり方で音響を調整するのをお勧めします。

C-1:マイクを置く場所・マイクの高さ・集音部の角度を決める

基本的にはA-1と同じ手順で大丈夫ですが、なるべく声だけを集音したいのでマイクと口元の距離は20cm前後まで近づけられるとベターです。

C-2:OBSで音声モニタリングをしながら音響を調整する

こちらもA-2と同じ手順で大丈夫ですが、マイクに声以外の音がなるべく集音されないようにすることと、マイクの音声とライン録りのゲーム音のタイミングを同期オフセットで調整する必要が生じる可能性があることに注意が必要です。

  1. ライン録りのゲーム音を声が埋もれない程度の音量になるように調整する

    基本的には音のピークが-15dB前後になるように音量調整をすれば大丈夫ですが、ゲーム音がOBSに直接入力されるのでマイクに集音する時に比べると音圧が高めに聴こえる傾向があります。

    ゲーム音を鳴らした状態で声が埋もれているように感じるのであれば、ゲーム音のピークを2~3dBほど引き下げてみてください。
    (逆に声が出すぎているように感じるのであれば、ゲーム音を引き上げる)

  2. ゲーム音に変なエコー感や明確な二重感が出ているようであれば、マイク側の同期オフセットを調整する

    マイクのゲインを可能な限り絞ったとしても、ゲーム音を完全に集音しないようにするのはかなり難しいです。
    また、ゲーム画面のキャプチャやライン録りの配線で分配器が組み込まれていると、画面とゲーム音がマイクより遅れてOBSに入力されてしまいます。

    上記の理由により、ゲーム音の音ズレは大なり小なり発生してしまうので、その際はマイクの同期オフセットの数字を30~60ms程度に設定してみましょう。
    その状態でモニタリングして音ズレが無くなっているようであれば大丈夫ですし、まだ音ズレが続いているようであれば同期オフセットの数字を20msずつ増減させて調整してみてください。

最後に

もっとシンプルに短くまとめられると思っていましたが、文章を書いていくうちにアレも書かなきゃコレも書かなきゃっていう状態になってしまい、最終的には10,000文字近い内容になってしまいました。ドウシテコウナッタ……

ただ、序論の繰り返しにはなりますが、ゲーミングマイクの特性を把握した上で、OBSで音声モニタリングしながら音量を調整して、音声フィルタで微調整することさえできれば、必要十分なレベルの音響を作り上げることは可能です。

極端な話、声がキチンと通っていて、自分が聴いて不快でない音響であればどこかの誰かに文句を言われることもまずありませんし、見知らぬリスナーの人が滞在してくれる時間も長くなるかと思われます。

音ゲーと同じく、音響の質を上げるためにはとにかく反復することが重要です。
モニタリングしながら調整する⇒リスナーの意見やアドバイスを取り入れたり、配信のアーカイブで修正点を見つける⇒次の配信でそれをフィードバックする……この繰り返しでクオリティアップを目指しましょう。


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