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現役教師が『3年A組』を見た感想

Stay homeなGW。キャンプの計画も旅行の計画も吹っ飛びました。仕方ないので、子供と遊んだり、本を読んだり、料理をしたり、普段なかなかできないことをしていたら、結構充実した5日間でした。

普段なかなかできないことと言えば、映画も結構見ましたが、自分的に一番のヒットだったのはドラマ『3年A組~今から皆さんは、人質です~』でした。

大学生のころまでは結構ドラマを見ていた気がします。ただ、社会人になってからは面白いと思えるドラマがあまりなかったことや、単純に時間がなかったのでほとんど見なくなりました。ここ10年できちんと最後まで見たのは『モテキ』『おっさんずラブ』くらいかな。この2つはラブコメディですが、ドストライクでした。*おっさんずラブの続編(CA編)はイマイチでした。

さて、『3年A組』です。去年1月ごろにやっていて、話題になっていたのは知っていましたが、内容もよく知りませんでしたし、特に見たいとは思いませんでした。今回GW中に見たい映画はほとんど見てしまったので、AMAZON PRIMEでドラマを探していたら、『3年A組』がトップに出てきたので見てみた次第です。(ちなみにAMAZONでは視聴できず、Huluと1か月無料の視聴契約をしました)

で、結論から言うとドハマリしました。どーせイケメンとアイドルを見たさに視聴率を稼ぐ若者向けのナンパドラマかなと思っていたら、おっさん教師のハートを鷲掴みにされました。タイトルからもわかる通り完全に「3年B組金八先生」のオマージュであり、この上なく熱い教育ドラマでした。

第一話で、ザコキャラ担任のブッキーこと柊一颯(ひいらぎいぶき:菅田将暉)が、突然生徒たちを教室で監禁し、学校を爆破、さらには自分のクラスの生徒を一人刺殺します。ここまでだとサイコパス教師の狂気を描いた『悪の教典』のような展開ですが、二話目からだいぶ様相が変わっていきます。生徒たちを監禁したのは、自殺をした一人の生徒の死の真相を突き詰めるためであり、そして監禁している間に行う「俺の授業」を通して、生徒たちに生きていくうえで大切なことを教えることが目的でした。毎回生徒たちには「課題」が出され、彼らはそれを指定の時間までに解決しなくてはいけません。そして、回ごとに主人公になるキャラが変わりますが、彼らは皆自分たちの悩みや苦しみと葛藤して生きています。その生徒たちが柊先生に『説教』されるという、まさに教育ドラマの王道ともいうべきパターン展開を見せます。柊先生の説教には以下のような名言が含まれます。

「過去の自分が今の自分を作る!」

「変わるんだ! 悪意にまみれたナイフで、汚れなき弱者を傷つけないように変わるんだよ!」

「それが痛みだ! その痛みを一生忘れんなよ」

「お前が抱いた悩みや苦しみを誰かにぶつけたか? 仲間に、クラスメートに、教師に。『誰か助けてくれ』って、お前はすがったか?」

「恥を繰り返して強くなるんだ。恥もかかずに強くなれると思うな!」

「お前の不用意な発言で、身に覚えのない汚名を着せられ、本人が! 家族が! 友人が! 傷つけられたかもしれないんだ。お前は取り返しのつかないことをやろうとしたんだ」

「お前たちはもう感情に任せて過ちを犯せる歳じゃないんだよ。それが許される歳じゃないんだよ!」

熱いっす。菅田将暉の演技力にぐいぐい惹きつけられていきます。金八先生を見ていたときの熱い想いがよみがえってきました。そして自分が教員人生の中で経験した本気で生徒と向き合った数々のシーンが回帰され、目頭が熱くなることも何度かありました。結果として10話を3日間というハイペースで鑑賞してしまいました。

現代の子供たちにはこういう熱血教師ドラマはあまりウケないんじゃないかと思っていました。気になってYahooのレビューサイトを見ていたら、やはり若者からの否定的な意見もたくさん見受けられました。一方で、こんな時代だからこそ柊先生のような熱く、生徒の将来を真剣に考え、本気で向き合ってくれる先生が子供たちに求められているというようにも思いました(結果高視聴率につながったのだと思います)。『不易と流行』とよく言いますが、教師の役割もいつになっても変わらない本質的なものがあると感じました(不易)。「先を生きる」者として、子供たちが進む道に光を照らし、道を誤ったら正しい道に戻してあげる、または新しい道を創ってあげる、それはいつの時代も変わらぬ教師の責任なんだなぁと痛感しました。忘れかけていた教師としての『熱さ』を思い出させてくれるドラマでした。